太陽光発電は導入費用が高いというイメージがすっかり定着してしまいました。確かに車一台分の費用がかかると言われると、及び腰になるのはもっともなこと。ただ、大切なのは実際の数字をもとにした検証。高額な費用負担に見合ったメリットがあるかどうか、具体的な数字を比較検討して、冷静にチェックすることが必要です。そこで今回は、太陽光発電のシステムを新築住宅に導入する際の、実際の費用負担とそのメリットを具体的な数字を挙げながら検証していきます。
●太陽光発電の二大費用を検証
太陽光発電の費用は、導入費用とランニングコストに分けられます。その具体的なシミュレーションを公的機関が発表するデータをもとに検証してみましょう。
『導入費用』
太陽光発電システムの導入費用は、太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの機器類にかかる設備費用と、工事費用に分けられます。2023年12月、資源エネルギー庁発表の「太陽光発電について」では、全国的な調査により1kWhあたりの設備費用が22.7万円、工事費用が7.6万円とされており、設備費と工事費を合わせた2023年の導入費用の目安は、現場での値引きを勘案し1kWhあたり28.8万円と発表しています。この金額は2012年には46.5万円となっていましたから約10年で38%ほども安くなっています。
5kWh太陽光システムの導入費用の比較※
2012年:232万5000円 2023年:144万円
約38%のダウン!金額にして88万5000円も低下!
『ランニングコスト』
資源エネルギー庁発表のデータをもとにメンテナンスや機器寿命を考慮して30年のランニングコストを試算してみましょう。まず定期点検は4〜5年に1回の実施が推奨されており、その費用は1回あたり4.7万円とされています。またパワーコンディショナーは20年に1度交換され、一般的な相場は34.5万円。パネルは25年程度の出力保証がある場合が多く一般的に30年程度の寿命があるとされていますから費用負担なしで計算します。
30年間に必要なランニングコスト
定期点検費用:4.7万円×6回=28.2万円(5年に1度の実施)
パワーコンディショナーの交換費用:34.5万円
合計:62万7000円 年間あたり2万900円
●新築時につけておきたい太陽光発電
住まいの新築時は、何かと物入りなタイミング。太陽光発電の設置は後回しにしようかと考える方も多いと思いますが、太陽光発電を取り付けるベストなタイミングは家の建築時。以下に新築時に太陽光発電を設置する様々なメリットを整理しておきます。
・住宅ローンに設置費用を組み込める
・税制の優遇や補助金を受けられる
・オール電化で光熱費を節約できる
新築時に太陽光発電を設置することで、導入費用を住宅ローンに組み込めます。後で設置すると金利が割安な住宅ローンが利用できなくなり、設置工事費も別途必要になるなど余計な費用が発生します。
また、太陽光発電だけでなく、オール電化設備・エコキュートなどの設置で、住まい全体で光熱費を節約できます。さらに、住宅全体として環境性能に配慮したZEH住宅などにすることで、国の補助金を利用することも可能になります。住宅ローン控除でも、ZEH住宅や省エネ性能をもつ新築住宅では控除の金額が増額されるという優遇制度があります。
●設置費用に差が出るケースに注意
太陽光システムは、パネルの枚数に比例して価格が高くなります。同じ発電容量でも、屋根の形状によってパネルの枚数が変わり割高になる場合があります。また屋根材によっても工事費が変わります。瓦屋根は、スレートやガルバリウム鋼板などの金属屋根と比べて工事の工程が増えるため、高くなるケースが多いようです。ですから信頼できる業者選びが大切になってきます。
●売電収入はいくらになる?
FIT(固定価格買取制度)による電力の買取価格がどんどん下がってきて、太陽光発電の先行きに不安を持つ方も多いと思います。そこで実際の売電収入がどのくらいになるか目安となる数字を30年間の稼働でシミュレーションしてみました。日本の住宅用太陽光発電の平均年間発電量は、容量1kWにつき1303kWh。容量5kWの太陽光発電の場合、年間の発電量は6515kWhになると考えられます。経済産業省のデータでは、発電した電力のうち、売電される割合は平均70%。これらのデータをもとに考えると、年間にして約4560kWhが売電にまわされ、現在の売電価格は10年間固定で1kWあたり16円。11年目以降は売電価格10円で試算。この資産によると30年間の売電収入の総計は1,641,600円になります。
30年間の売電収入(推計値)
売電収入(推計)
年間売電量4560kWh
× 売電価格16円(2023年度の場合)
= 年間売電収入7万2960円
1~10年の売電収入:729600円
10〜30年の
売電価格は10円で計算
年間売電量4560kWh
× 売電価格10円(資源エネルギー庁予測)
= 年間売電収入 4万5600円
11〜30年の売電収入: 912000円
30年間の売電収入の期待値は
1,641,600円
●なぜ売電価格は年々安くなっているの
売電価格が年々安くなっている背景には、太陽光発電設備の低コスト化が進み、導入費用が安くなっていることが挙げられます。
そもそもFITの売電価格は太陽光発電を普及するために高く設定されており、制度的に太陽光発電の設置にかかる初期費用が約10年前後で回収できるように設定されています。ですから設置費用の低下に合わせて、売電価格の設定が低下しているわけです。
2023年度設置の住宅向け(10kW未満)太陽光発電システムにおける売電価格は16円/kWhが10年間保証されますが、今後も減額が予想されています。ただし、最近の材料・人件費の高騰から下げ止まるのではないかという観測もあります。どちらにしても、早く太陽光発電を開始することで、高い売電価格が保証されるというメリットがあることを留意しておいてください。
●トータルな経済的メリットのシミュレーション
太陽光発電の経済的メリットは売電収入だけではありません、電力の自家使用による電気代の削減も期待できます。特に最近は電気代が高騰しており、自家使用による経済的メリットは大きくなっています。前項の30年の売電収入をベースに、ランニングコストと電力の自家消費分のメリットを勘案してトータルなシミュレーションを出してみました。ただし上昇トレンドにある電気料金の長期的な予測は不可能ですので資源エネルギー庁が試算した直近のデータをもとに試算します。
【自家消費電力分の利益(推計)】
年間使用量1955 kWh
× 電力価格27.31円(2025年度推定値)
= 年間削減電力料金5万3391円
30年間で160万1730円
30年間に必要なランニングコスト
定期点検費用:4.7万円×6回=28.2万円(5年に1度の実施)
パワーコンディショナーの交換費用:34.5万円
ランニングコスト合計:62万7000円
この金額と前項で試算した30年間の売電収入1,641,600円を合算すると
( 30年間の売電収入:1,641,600円+30年間の直消費電力の利益:160万1730円 )
−30年間に必要なランニングコスト:62万7000円
30年間の経済的メリット=261万6330円
一年間あたりでは8万7211円も経済的メリットが!
この他に補助金や減税分を考えると、太陽光発電は十分も元が取れる投資だと言えそうです。
●蓄電池もプラスした場合は
蓄電池ユニットを併用する家庭が増加中
最近の電気代の高騰から注目されているのが蓄電池をプラスした太陽光発電システム。夜間太陽光発電ができないときも蓄電池に貯めた電力を使い、電気代を0円にするシステムです。一般的なご家庭の年間消費電力は4人暮らしで約5,252kWh程度。一般的に太陽光発電の出力1kWあたり、年間約1,000~1,200kWhの発電量が得られるとされていますから、5kW設備があれば、4人家族分の年間消費電力はまかなえる可能性が高いと考えられます。そこですべての電力消費を自家発電に置き換えると年間の経済メリット1 kWh あたり27.31円※1で計算すると約14万3432円になります。蓄電池の導入費用は1kWhあたりの価格は工事費なども込みで『12.5〜16.5万円』が相場※2です。蓄電池は100%の容量で使用することはできず、約80%の容量で利用することが一般的。7kWhの蓄電池であれば5.6 kWhの電力が利用することができ、停電時でも余裕を持って対応できます。また蓄電池にも各自治体から補助金が用意されている場合が多いので、確認してみてください。
※1「太陽光発電について」2023年12月資源エネルギー庁発表より
※2三菱総合研究所 定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査
●補助金や優遇措置が費用負担を軽減
太陽光発電の導入費用に国の補助金はありませんが、各自治体によっては補助金を出している場合もあります。例えば東京都では『災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業』(2023年度)により新築住宅で12万円/kWの補助(上限36万円)があります。また、エネルギー収支をゼロ以下にするZEH住宅の支援として新築の際は、国から「ZEH補助金」が用意されており、55〜112万円の補助金を受け取れる可能性があります。太陽光発電の導入を検討している場合は国や家を建てる地域の自治体の補助金制度を確かめたり、業者に確認することが大切です。
●太陽光発電を設置する際に活用できるZEH住宅補助金
今、太陽光発電を設置する際にぜひ活用したい補助金として注目されているのが「ZEH住宅」の補助金です。
ZEH住宅の補助金
ZEH住宅は省エネ・創エネ・蓄エネにより、年間のエネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅です。つまり、太陽光発電を基本に暮らしのインフラを構築す家づくりにぴったりな補助金なのです。ZEH補助金を利用するためには、住宅性能の基準を満たすことに加え、ZEHビルダーまたはプランナーとして登録されている住宅建築会社に依頼する必要があります。
またZEH補助金は、予算枠がなくなってしまうと使えなくなるため、申請のタイミングがによっては使えないケースも出てきます。
「こどもエコすまい支援事業」補助金が新設!
2023年はZEH住宅に対して、40代以下の若者夫婦・子育て世帯を対象にした「こどもエコすまい支援事業」の補助金制度が新設されています。ZEH補助金との併用は不可ですが、最高で100万円の補助金がでるなど、ZEH住宅の補助金よりも金額が大きくなるため、対象に該当する方は必ず検討しておきたい補助金です。
●イシンホームならベストな提案で最適なシステム導入をサポート
未来ゼロエネ住宅イシンサンクス-ZEGAの外観イメージ
イシンホームには、「一生、電気もガスもエネルギー代をほとんど払わない家」をコンセプトにした「未来ゼロエネ住宅イシンサンクス-ZEGA」があります。
住まいの新築で太陽光発電の導入に関わる費用のシミュレーションも、家庭の実情に合わせコンピュータソフトにより計算してご提示できます。太陽光発電システムを含めた「住まいの新築費用」、補助金や税金の優遇制度などについての相談や疑問がある場合を含め太陽光発電の導入した家づくりをお考えの方はぜひ一度イシンホームにご相談ください。豊富な経験をもとにしたきめ細かな提案でよりよい選択をお手伝いいたします。
太陽光発電の導入に関する記事は、こちらにもございます。併せてご覧ください。