
注文住宅を建てる際、モデルルームのようなスタイリッシュな仕上がりを思い描く人は多いのではないでしょうか。しかし、完成後に自分たちで家具をそろえると、理想とかけ離れたインテリアコーディネートになってしまうことは少なくありません。さらに、無計画な家具の配置によって部屋が狭くなってしまう可能性もあるでしょう。
そんな失敗を防ぎ、限られたスペースを有効活用するには、造作収納や造り付け家具がおすすめです。ここでは、そのメリットや具体的な事例を紹介していきます。
目次
注文住宅の造作収納や造り付け家具ってどんなもの?既製品とどう違う?
まずは、注文住宅における造作収納や造り付け家具について、特徴を紹介します。
造作収納・造り付け家具とは?

造作収納や造り付け家具とは、注文住宅などをを施工する際に造る備え付けの設備です。例えば、壁一面を使った本棚やクローゼット、食器棚のほか、階段下やリビングの一角を利用した家事・リモートワーク用のスペースなど。部屋の広さや形状に合わせて欲しい設備を造ることができます。
既製品との違い
次に、造作収納や造り付け家具と既製品にはどのような違いがあるのか、主に4つの項目に分けて説明します。
・自由度
造作収納や造り付け家具の魅力は何といっても自由度です。既製品とは違って、素材や色味、デザインなどを自分好みにカスタマイズすることが可能。使う人やものに合わせたサイズ設計もできます。さらに、「ここにこんな収納が欲しい」といったアイデアの実現も可能なので、自分の生活スタイルにぴったりのオリジナル家具を造ることができます。
・費用
造作収納や造り付け家具は、住む人のさまざまな要望を取り入れた、世界に1つだけのものとなります。完全オーダーメードで設計・施工するため、量産型の家具と比べてどうしても製作費用は高くなりがちです。加えて、使用する材料や取り付ける金具など理想を詰め込んでいくにつれ、どんどんコストがアップしていきます。そのため、製作費用については事前にしっかり打ち合わせをして、予算に合わせて決めることが大切です。
・耐震性
造作収納や造り付け家具は、天井までの収納や壁一面を使うなど、部屋や壁の形状に合わせて設計。基本的に壁や天井、床に固定されるため、市販の家具に比べて地震で倒れてくる心配が少ないことも魅力の1つといえるでしょう。就寝時の家具の転倒リスクを考えて、寝室に造作収納や造り付け家具を採用すると安心です。
・設置時間
既製品の場合、商品を選んで搬入・設置するだけで完了するのに対し、造作収納や造り付け家具の場合は、設計から材料の調達、製作、取り付けまでの一連の工程が必要となるため、設置までに時間がかかります。特に複雑なデザインになると、打ち合わせや製作に時間がかかるだけでなく、施工段階で細かい調整を繰り返すことになったり、設計変更が発生したりするケースも。時間に制約がある場合は、施工期間を事前に確認しておきましょう。
造作収納や造り付け家具 | 既製品 | |
---|---|---|
サイズの自由度 | ◎ | △ |
デザインの自由度 | ◎ | △ |
費用 | △ | 〇 |
耐震性 | ◎ | △ |
設置時間 | △ | ◎ |
注文住宅で造作できるもの一覧
続いて、どのような家具を造作することができるのか、具体例を紹介します。
収納棚
間取りや用途、ライフスタイルにあわせてミリ単位で設計、施工される造作収納棚は、機能的で無駄なスペースがなく、部屋の統一感を演出してくれます。
アイデア次第では、パントリーやクローゼットなど、さまざまなデザインの収納棚を造ることが可能ですが、特に限られたスペースを最大限に活用したい場合は、壁面収納がおすすめ。廊下や階段下、各部屋のちょっとしたデッドスペースに合わせて造ることができ、収納スペースを増やすのに最適です。また、壁をうまく使うことで部屋をスッキリと見せることも可能です。
壁面収納には、シンプルなものから扉付きの棚までさまざまなデザインがあるため、カスタマイズして楽しみましょう。さらに、ただ収納するだけでなく、お気に入りのアイテムを飾るディスプレイスペースとしても活用できます。
テレビボード
家電量販店やインテリアショップなどで購入することができるテレビボードですが、イメージ通りのデザインやぴったりのサイズのものがなかなか見つからず、オーダーする人も多いようです。
テレビボードには、一般的な置き型タイプのほかに、収納一体型やフロートタイプなどがあります。置き型タイプはDVDデッキなどを隠すことができる収納力があり、テレビ周りをすっきりと見せることが可能。収納一体型は、テレビの周辺にさらに収納棚を増やせるため、リビングの収納が少ない場合に活躍します。DVDプレーヤーやゲーム機、リモコンなども収納でき、片付けもぐっと楽になります。脚がないフロートタイプは、スタイリッシュなイメージになるうえ、掃除も簡単です。
なお、壁に取り付ける場合、全体的にすっきりとした雰囲気になり、耐震性もアップしますが、簡単に模様替えができなくなるため、設計の段階から十分に注意しましょう。
洗面台
既製品の洗面台は、サイズやデザインが決まっていることが多く、ほかの家具と雰囲気が合わなかったり、デッドスペースができてしまったりすることも。
そのため、カウンターのサイズや形、水栓の種類や鏡、ボウル、照明などを細かくカスタマイズしたい方にぴったり。さらに、必要な収納スペースもしっかり確保。さまざまなアイテム選びを楽しみながら、理想通りの空間を作り上げることができます。
カウンター
キッチンカウンターやバーカウンター、ちょっとしたワークスペースなど、さまざまな用途のあるカウンター。造作収納や造り付け家具として採用すれば使い勝手がよくなり、部屋の雰囲気にもマッチします。
特にキッチンカウンターは人気の造作収納や造り付け家具です。システムキッチンのカウンターは色や形が限られていることが多いですが、造作収納や造り付け家具なら自由にカスタマイズが可能。「カウンターをコの字型にしたい」「調理スペースを広くしたい」「 ダイニングテーブルと同じ素材や色にしたい」「収納スペースを増やして調味料や調理器具をスッキリ片付けたい」など、イメージ通りのキッチンを実現できます。
書斎スペース
書斎スペースには、デスクや本棚、収納棚などを造ることができます。パソコンやモニターの大きさ、資料の量などに合わせて、作業しやすいように設計。デスク周りの整理もしやすくなることで仕事の効率もアップ。在宅ワークなども増える中、需要が高まっています。
注文住宅での造作収納や造り付け家具のメリットとデメリット
造作収納や造り付け家具には、多くのメリットがあります。ただその一方で、デメリットもあるため注意が必要です。

メリット1:空間にフィットするオリジナルサイズで作ることができる
造作収納や造り付け家具は部屋の広さや形状に合わせて設計されるので、既製品の家具を置く時のようなデッドスペースが生まれません。空間を無駄なく活用できる分、収納力が確保できます。また、家具と壁や床の隙間にホコリが溜まる心配もなく、掃除がしやすいのもうれしいポイントです。
メリット2:固定されているため、転倒のリスクが減って耐震面でも安心
住宅の施工時に造り付けられる造作収納や家具は、建物と一体化しているため転倒リスクがないのが魅力です。既製品の家具のように、突っ張り棒や粘着マットを使用したり、L型金具で家具を壁にネジ止めしたりする必要はありません。

阪神淡路大震災時の実態調査によると、負傷原因の46%が「転倒した家具や家電の下敷き」だったことが明らかになっています。また、死亡原因の77%は「窒息死・圧死」という結果に。つまり、一般的な家具は災害時に大きな危険を及ぼす可能性があるのです。こうしたリスクが減るのは、大きな魅力ですよね。
メリット3:デザインに統一感を演出できる
住宅が完成してから少しずつ必要なものを買い足していくと、テイストの違う家具やインテリアが集まって部屋全体のまとまりが悪くなってしまうことがよくあります。購入してから「ほかの家具と色が合わなかった」ということになっても、なかなか買い換えられませんよね。また、既製品ではちょうど良いサイズや素材のものが見つからないことも少なくありません。
その点、造作収納や家具であれば、好みの素材を選び、ミリ単位でサイズを調整して設計できます。住宅に合わせてデザインされるので、部屋の統一感もバッチリです。
デメリット1:コストが高くなりがち
造作収納や造り付け家具は住宅ごとに設計されるオーダーメード品なので、量産される既製品より価格が高くなる傾向があります。注文住宅の場合はあらかじめ設定された標準装備には含まれていない場合が多く、オプションとして追加料金が発生する可能性があるので要注意。
デメリット2:サンプル品での事前に確認ができない
住宅に合わせて造られる造作収納や造り付け家具はには、基本的にはサンプル品は存在しません。既製品のように完成形を事前に確認することはできないので、注意が必要です。
デメリット3:後から移動や撤去がしづらい
先述したように、住宅の施工時に造り付けられる造作収納や家具は建物と一体化しています。そのため、一般的な家具のように気軽に移動や撤去がしづらいのが欠点。一度設置してしまうと簡単にはやり直しができません。撤去する際には大掛かりな解体工事が必要です。
注文住宅に造作収納や造り付け家具を導入する際の費用相場は?
注文住宅において、造作収納や造り付け家具を導入する際に気になるのはコストです。ここでは、種類別の価格目安を紹介します。なお、サイズや素材によって費用は大きく変動します。
造作収納や造り付け家具の種類別価格目安
収納棚
簡単な収納棚であれば、約10万円以下。壁一面の本棚のような大型収納であれば、50万円前後になります。
テレビボード・洗面台
テレビボードや洗面台といった造作収納や造り付け家具は大型になりやすいため、あくまでも目安になりますが、10万円~50万円が相場とされています。ちょっとした収納棚であれば、10万円以下で造ることができるケースもあります。
カウンター
1mあたり10万円~20万円程度が相場とされていますが、素材や形状によってはそれ以上になることもあります。
テーブル
シンプルなダイニングテーブルであれば、10万円から50万円程度。キッチンカウンターとダイニングテーブルを一体化させる場合は150万円程度になる可能性もあります。
注文住宅での造作収納や造り付け家具の成功例
成功例1:造作収納や造り付け家具で暮らしをスッキリスマートに
壁に沿って造り付けられたカウンターデスクは、シンプルながらも機能的で、家族全員のワークスペースとして大活躍。リモートワークをしているときも、子どもたちが隣でお絵描きをするなどして一緒に過ごせています。
洗面台と収納棚が一体となったスペースは、家事の効率を高められるよう、タオルやバス用品、着替えなどをすぐに手に取れる配置で、お風呂上がりの作業や朝の準備もスムーズに進みます。
主寝室の横には、衣類や小物をすっきり収納できるシェルフとデスクスペースも完備されたクローゼットルームを配置。オープンで機能的なデザインが、片付けのしやすさと作業の効率アップに役立ちます。
成功例2:立体空間の利用と造作収納や造り付け家具で小粋な住まいを実現
レッドシダー貼りの天井と、ウッドパネルを施した造作テレビボードで、クールながらも木のぬくもりを感じられるリビングに。日々の家族団らんを楽しく演出します。
大型カップボードを採用したキッチンは、家電も食器もすっきりと収まって使い勝手も抜群です。タイル貼りの洗面台はオシャレで機能的。大きなカウンターは、ちょっとした家事にも使える優れものです。
注文住宅における造作を頼む際の流れと注意点
実際に、注文住宅で造作収納や造り付け家具を頼む場合、一般的な手順と注意点は次のようになります。
①イメージをまとめる
造作収納や造り付け家具を検討する際には、まず具体的な使用目的や設置場所、必要となる収納量を明確にすることが大切です。そのうえで、雑誌やWebサイトで事例を探したりしながら、好みのデザインや素材などを絞り込み、イメージをまとめていくといいでしょう。
②施工・設計会社と相談する
設計士や工務店、家具職人など、専門家の意見を積極的に取り入れることがおすすめ。どんな家具が造りたいか、どんな生活がしたいかをできるだけ詳しく伝えましょう。リフォームの場合などは、部屋の間取りや広さがわかるものがあれば、より具体的な相談が可能です。
設置後に移動したり、撤去したりするのが困難なため、今の生活やニーズだけで決めるのではなく、将来的な家族構成や生活スタイルの変化を見据えて、どのような家具が必要なのか長期的な視点で計画を立てることが重要です。
③素材や寸法を決定
デザインや素材など大まかなプランが決まったら、実際に担当者がご自宅のスペースを確認します。理想通りの仕上がりにするため、細部までサイズの確認をし、問題なく設置できるかを確認してもらいましょう。家具を固定するにあたり、建築上可能であるかも確認を。最終的なデザインと見積もりの内容が問題なければ製造がスタートします。
④現場でのすり合わせを実施
造作収納や造り付け家具は、現場で大工さんが材料を加工して組み立てる場合と、家具職人が工場で製作し、現場に搬入・設置する場合の2パターンがあります。
壁や床に固定したら、ガタつきの有無、扉や引き出しの開閉、収納物の出し入れが問題なく行えるかを確認。必要に応じて、最終調整やメンテナンスを行います。
⑤事前にメンテナンス方法も確認
長く美しく使い続けるために、日常的な清掃の方法など適切なメンテナンス方法を聞いておくことが肝心です。さらに、定期的なオイルメンテナンスや、扉や引き出しの丁番の調整などの必要性についても確認しておきましょう。
注文住宅で人気の造作収納や造り付け家具アイデア集
続いて、当社が手掛けた造作収納や造り付け家具の実例をご紹介します。
実例① ランドリールームの壁面収納

家事の中でも洗濯は、「洗う」「干す」「たたむ」「収納する」など工程が多く、家中を行ったり来たりする手間がかかります。もし、すべての作業を1カ所で済ませることができれば、格段に楽になりますよね。そこで活躍するのが壁面収納です。タオルやバスマットはもちろん、家族全員分の服や下着を片付けられる大容量の収納棚がランドリールームにあれば、洗濯し終わった衣類を各部屋へ運んで片付ける手間が省けます。また、着替えがランドリールームで完結するので、家族が脱ぎ散らかした服を集めてまわる負担もなくなるでしょう。

洗濯に関わる面倒な作業に「アイロンがけ」があります。毎回、リビングやダイニングにアイロン台を出して作業しているという人も多いのではないでしょうか。ランドリールームの収納棚のすぐ横に、階段下のスペースを利用した家事机を造れば、より効率的にアイロンがけが行えますよ。
実例② 階段下を活用したワークスペース

階段下のデッドスペースはデスクスペースとしても活用できます。階段の段差を利用して本棚を設置すれば、立派な書斎に。自宅でリモートワークをしたい人にはぴったりです。また、子どものリビング学習やアイロンがけなどの家事にも使えます。家事や育児を終えた後に、ゆっくり読書や趣味を楽しむ場所としてもおすすめですよ。
造作収納や造り付け家具を長く使用するためのポイントとは
造作収納や造り付け家具を造る際、まず考えて欲しいのは「どこにどんな設備が必要なのか」ということ。例えば、キッチンに食器棚、ランドリールームに家族全員分の衣類の収納棚、リビングに子どもの勉強机など、必要な設備を考えてください。その際、「リビングの勉強机はテレワークにも使って、老後は読書スペースとして活用する」など、必ず将来のライフプランも踏まえて検討することが大切です。
また、せっかく造った設備が将来邪魔になってしまうと残念ですよね。そうならないように、イシンホームでは「ロングライフ設計」として50年後も住み続けられる家を目指しています。
ロングライフ設計は、和室と洗面が近い間取りが特徴です。例えば、子どもが小さいときは、和室をオムツ替えなどの「お世話スペース」として使えば、洗面が近くて便利です。また将来、家族の介護が必要になった時には、和室を寝室にすることで、お風呂にも入れやすいでしょう。長く快適に過ごせる造作収納や造り付け家具付きの家を考えている方は、気軽にご相談くださいね。
よくある質問
既製品と比べて、何が一番違うの?
造作収納や造り付け家具は、既製品とは異なり、間取りやスペースの広さ、使い勝手、収納したい物、好みなどに合わせて、一から設計、製作、施工を行うもの。まさに世界で一つだけのオリジナル家具といえます。
造作はリフォームでもできる?
リフォームの際にも造作収納や造り付け家具を造ることは可能です。部屋の雰囲気や素材、色などにぴったりのデザインにできるのはもちろん、「ここに収納棚があれば…」「かわいい洗面台にしたい」など、今までの生活で感じていた不便を解消したり、長年の夢をかなえたりすることができます。
実物を見られる場所は?
造作収納や造り付け家具は完成まで現物を確認できないため、完成後に「イメージと違う」とがっかりしてしまうケースも。カタログだけでは微妙な色合いや手触りまではわからないため、サンプルを用意してもらったり、ショールームで同じ材料を使っている家具を見せてもらったりしましょう。
まとめ
せっかく造った設備が将来邪魔になってしまうと残念ですよね。そうならないように、イシンホームでは「ロングライフ設計」として50年後も住み続けられる家を目指しています。
ロングライフ設計は、和室と洗面が近い間取りが特徴です。例えば、子どもが小さいときは、和室をオムツ替えなどの「お世話スペース」として使えば、洗面が近くて便利です。また将来、家族の介護が必要になった時には、和室を寝室にすることで、お風呂にも入れやすいでしょう。長く快適に過ごせる造作収納や造り付け家具付きの家を考えている方は、気軽にご相談くださいね。