家づくりについて調べていると、よく目にする「自由設計」というワード。言葉の雰囲気から、最も自由度が高い家づくりのような印象を持つかもしれませんが、実はそうではありません。また、自由に決められる部分もメーカーによって異なることをご存じでしょうか。そこで今回は、自由設計とはどういうもので、「建売住宅」や「注文住宅」と何が違うのかについて解説します。自由設計や注文住宅、建売住宅のメリットやデメリットを理解して、自分に合った家づくりのプランを作成しましょう。
●自由設計とは?
自由設計とは、ハウスメーカーなどのモデルプランをベースにする建築方法です。設備や仕様はある程度決まっていますが、間取りを自由に選択、または変更が可能。例えば、洋室を和室に変更することはできますが、キッチンや浴室といった設備や、内装材などの仕様の変更はできません。ただし、その選択や変更がどの程度可能かは、ハウスメーカーごとに異なります。
自由設計では、基本的に「建築条件付きの土地」が用意されていることも知っておきたいポイント。土地は、家を建てるハウスメーカーや関連会社が売主であることが多いです。その場合は、購入時に「土地売買契約」と「建築請負契約」の両方の契約が必要です。
●注文住宅や建売住宅との違いは?
先述した自由設計について、より深く理解するためには「注文住宅」や「建売住宅」との違いを押さえる必要があります。それぞれについて説明します。
注文住宅
注文住宅とは、間取りや設備、仕様などすべてを自由に決められる建築方法。その自由度がハウスメーカーによって異なるということは、基本的にはありません。設計や設備の選択から行えるので、こだわりの家づくりが可能ですが、その分高額になりがちです。
また、土地の売買は含まれず、土地は別物として取得、または購入する必要があり、「建築請負契約」を行うことになります。
建売住宅
建売住宅は、空いている土地に家を建てて、セットで売られている住宅。短期間で入居できるのが最大のメリットで、基本的に間取りや設備、仕様を選ぶことができませんが、その分安価になります。ただ、間取りなどは決まっているので、使いにくかったり、インテリアやエクステリアが好みでなかったりして、リフォームが必要になる場合もあります。購入時には「土地付建物の売買契約」を行います。
自由設計 | 注文住宅 | 建売住宅 |
---|---|---|
・間取りは自由。設備や仕様はあ る程度決まっている ・費用を抑えられる | ・間取りや設備、仕様などすべてが自由 ・高額になりやすい | ・間取りや設備、仕様がすべて決まっている ・安価。短期間で入居可能 |
●自由設計で家を建てるのに向いている人は?メリットを紹介
前述した内容を踏まえると、自由設計の住宅は、注文住宅と建売住宅の中間に位置するスタイルの住まいです。どのような人に向いているのか、具体的なメリットとともに紹介します。
自分に合う間取りの家をローコストで購入可能
注文住宅に比べて、自分たちのライフスタイルに合う間取りの家をローコストで手に入れられることが一番のメリット。
家族の人数や生活スタイルによって、間取りの優先順位や、重要視するポイントは異なります。その点、自由設計なら「リビングの横は洋室ではなく和室にしたい」「子ども部屋は3つほしい」といった希望も可能。家族全員にとって使い勝手のいい家を実現できるでしょう。また、一定の範囲で間取りを変更するので、予算の把握がしやすいという特長もあります。
家づくりを決めてから入居までが短期間
注文住宅の場合、土地探しから始まり、ハウスメーカー選び、打ち合わせ、設計、設備選び…と時間がかかり、入居までに1年以上かかることも。
その点、自由設計は土地とハウスメーカーが決まっていることがほとんどです。基本的なモデルプランをもとに間取りをアレンジするので、設計や打ち合わせに必要な時間が最低限で済みます。
すぐに新居に住みたい、打ち合わせなどに割く時間があまりないという人にとって、引き渡しまでの時間が短いのは大きな魅力といえます。
●自由設計を検討するうえで注意するべきデメリット
続いて、自由設計のデメリットについても押さえておきましょう。
建築会社を選べない
土地とセットで販売されている自由設計の場合、基本的に建築会社を選べません。自由設計で家を建てるなら、その建築会社で選択や変更ができるポイントが自分に合っているかが大きなポイントになります。家のデザイン以外の耐震性や断熱性といった住宅性能や保証内容、アフターサービスについて、チェックしておくことをおすすめします。
自由に決められる範囲が、建築会社やハウスメーカーで異なる
自由設計では、前にも述べたように、自由に決められる範囲が建築会社やハウスメーカーによって異なります。何を決められて、何を決められないかをあらかじめ確認しておきましょう。
大胆な間取り変更は、注文住宅より単価が高くなる
建築会社によっては、間取りの変更料金が発生することがあります。大胆な間取り変更は高額になったり、難しいと断られたりすることも。注文住宅より単価が高くなることもあるので注意しましょう。
宅地建物取引業法の規制が適用されない
自由設計で建築条件付きの土地を購入した場合は、土地売買契約に加えて建築請負契約を結ぶ必要があります。この場合、施主を守る宅地建物取引業法の規制で、手付金が適用されず、トラブルになる恐れがあるので注意が必要です。例えば、自己都合で契約を解除することになった場合、先述した手付金を放棄するだけでなく、建築請負契約に基づく違約金を請求されることもあります。家づくりにおいては、購入時の契約によって法規制や契約が異なるので、その内容を十分に理解しておきましょう。
●自由設計はどのように進める?流れをチェックしよう
自由設計で家を建てる場合の具体的な流れを紹介します。
① 土地を選択し、建物のイメージを決める
自由設計では、土地の売買契約を最初に結びます。契約前に、家を建てる際の法的な制限や、価格、広さ、方角などを自身で確認しておきましょう。
建築条件付きの土地の場合、施工会社が決まっていることがほとんど。モデルルームやショールームに足を運び、家の大まかなイメージを決めていきます。なお、建築条件のない土地の場合は、施工会社を選ぶところからのスタートです。
② 土地を購入したら、建物の設計・プランニングを
希望の土地が見つかったら購入契約。この時、住まいの間取りや設備などについて、施工会社と打ち合わせます。この段階で、自分たちの家族構成やライフプランなど、思い描いているイメージや希望をしっかりと伝えましょう。予算も考慮したうえで、希望条件に優先順位を付けて、どうしても譲れないというものから決めていくとスムーズです。
③ 建物の建築請負契約を行い、着工・引き渡しへ
建物の建築請負契約を結び、建築確認申請の許可が下りれば着工となります。その後は、基礎配筋検査や中間検査などで建物の安全性をチェック。さらに、建物完成時には、完了検査と立会検査を実施します。不具合がなければ、建築工事費用の残金を支払い、引き渡しとなります。
●失敗しないために…間取り計画のポイント!トラブル事例とその対処法も
間取りを決める際には、何人で暮らすかをしっかり考えることが大切。さらに、10年後や20年後まで想定しておくことも重要です。
家族構成別の間取りイメージ
住生活基本法の中で定められている誘導居住面積水準によると、豊かな住生活の実現のために必要な住宅の延べ床面積は、「25㎡×世帯人数+25㎡」です。例えば、3人家族の場合は100㎡(約30坪)、4人家族は125㎡(約37坪)となります。
※実際に必要となる延べ床面積は個々のライフスタイルによって異なるので、あくまでも目安としてご確認ください。
・2人家族の場合
夫婦2人の場合は、リビング・ダイニングに加えて、それぞれの趣味などを楽しむことができるスペースがあるといいでしょう。共働きなどで家にいる時間が異なる場合は、気兼ねなく生活するために寝室を分けるなどの工夫もおすすめです。
また、将来に向けて間仕切りで子ども部屋を作れるようにしておくと、部屋数が足りないという事態を防ぐことができます。
・3人家族の場合
子ども部屋と主寝室を確保しておくことで、子どもが成長してもプライバシーを守ることができます。基本は2LDKがおすすめ。子どもの人数が増えた場合に備え、スペースに余裕をもたせておくとよいでしょう。
また、子どもが独立した後は、夫婦それぞれの寝室や書斎、趣味の部屋にするなど、さまざまな使い方が可能です。
・4人家族の場合
夫婦と子ども2人の場合、主寝室と子ども部屋2つの計3部屋が必要となるため、3LDK以上がおすすめです。来客用としてリビングの一角に和室を設け、普段はリビングと一体化できるように工夫しておくと、開放的に使えるでしょう。
トラブル事例
・子どもが成長するにつれて生活しにくい間取りになった
子ども部屋の設計は家づくりにおいて重要なポイント。適度にプライバシーを保ちつつ、親子のコミュニケーションを維持するだけでなく、子どもの独立後も有効に使いたいのであれば、幅広い視点から間取りを検討する必要があります。
ハウスメーカーと綿密に打ち合わせて、成長に合わせて間取りを変化させられるようにしましょう。
・収納スペースが思っていたより少なかった
一般的に、戸建ての延べ床面積に対する収納スペースの比率は10~15%が理想とされています。ただ、標準仕様の収納サイズや配置だと、暮らし始めた後に収納力や動線に対して支障や不満が出てくることも珍しくありません。
収納は、家族の人数やライフスタイルに合わせて、サイズや配置を決めることが大切です。まずは今の家の収納スペースと荷物の量を把握し、新居の収納スペースを見積もります。物は増えていく傾向にあるため、長期的な視点でスペースに少し余裕を持っておくことが望ましいです。将来子どもをもちたい、親と同居したいという場合も、収納スペースを広めに確保しておくこと。さらには、動線を考えた配置も重要であり、土間収納やパントリー、シューズクロークなどを活用することも有効です。
●【実例紹介】イシンホームの自由設計を見てみよう!
最後に、イシンホームが手掛けた自由設計を紹介します。
今回ご紹介するのは、全天候型のアウトドアリビングのある住まい。施主さんがイシンホームを選んだ決め手は、カリフォルニアスタイルのデザインとソーラー。他のメーカーと見比べて、デザインや標準装備も気に入られています。アウトドア好きのご夫婦で、軒の深いウッドデッキと一体となったLDKを備え、ペットと共に開放的な暮らしを満喫。屋根のあるガレージを趣味の大型バイクの置き場やDIYの作業場として重宝していて、キャンプ道具は物置に収納しているそう。
イシンホームの「自由設計」は、家事やウイルス対策に配慮した家づくりが可能な点が魅力。特に好評なのは、「家事時間1/2動線」が叶う「ウォークスルー洗面クローゼット」。洗濯、干す、収納という一連の動線を一カ所にまとめて、家事時間を大幅に短縮する間取りを生み出すことに成功しました。また、ウイルス対策動線は、玄関そばにクリーンルームを設けて、専用の光触媒機能で除菌することで、部屋に汚れを持ち込みません。
お客様のニーズや悩みをもとに、考え抜いたプランを用意していますので、ぜひご相談ください。
●FAQ
ハウスメーカーや工務店に要望を上手く伝えるコツを教えてください。
・要望書にしっかり記入する
ハウスメーカーや工務店を訪れると、営業担当者から「要望書(ヒアリングシート)」を渡されます。これは、あなたがどのような暮らしをしたいか、どのような家にしたいかを伝えるためのものです。口頭で要望を伝えた場合は、どうしても抜けや漏れが発生してしまい、工事の進み具合によってはやり直せないケースも。
限られた打ち合わせ時間の中で、できるだけ思いを伝えられるよう、要望を文字に書き起こしましょう。言語化することで、頭の中のぼんやりとしたイメージが明確になったり、新たな要望やイメージが膨らんだりするといったメリットもあります。
・間取りは簡潔に伝える。設備や間取りの希望に優先度をつける
間取りの希望については、事前に家族みんなで話し合い、希望を1つにまとめて簡潔に伝えましょう。要望書を書く際は、設備や間取りなどそれぞれの項目に重要度や優先度を記載しておくのがおすすめ。予算などトータルして検討する際、優先したい項目が明確になっているとスムーズです。
予算を抑えるためにできることを教えてください。
・延べ床面積や間取りを減らす
延べ床面積を狭くすれば、当然費用も安くなります。間取りを考える際は、家族の人数に対して必要最低限の床面積と部屋数に抑えるようにしましょう。床面積や部屋数が多いと壁や建具といった資材量が増え、コストアップの原因になります。
・不要な設備は除く
内装や設備を決める際は、施工会社が提案する標準仕様を採用することでコストアップを防げます。オプションやオーダーメイドは魅力的なものが多いですが、追加費用が発生するため要注意。一般的な注文住宅に比べて単価設定が高めになっている場合もあります。予算オーバーを防ぐため、不要なものは選ばないよう、慎重に検討しましょう。
外観や内観設計の自由度はどの程度なのでしょうか。
・内装や外装、設備などは基本プランから選択する場合が多い
内装や外装、設備などに関しては、ハウスメーカーや工務店が用意した複数の基本プランから選択するようになっていることが多く、基本的に変更はできないと定められています。ただ、自由設計の範囲はハウスメーカーや工務店によって異なるため、事前に細かく内容を確認しておきましょう。
●まとめ
自由設計は、自分たちのライフスタイルに合った間取りを実現できるのが魅力。ある程度は建築プランに制限があるものの、注文住宅よりローコストで、建て売り住宅より自由度が高いというのがメリットです。イシンホームでは、それぞれの希望に応じた提案やアドバイスもさせていただきますので、ぜひ気軽にご相談ください。