
注文住宅を検討していると「スキップフロア」という言葉を目にすることがあります。これは、住宅の中に段差を設けたスペースのこと。最近は、趣味や仕事の専用スペースとして活用されるケースも多く、空間の有効利用ができることから、導入を検討している方も多いでしょう。
そこで今回は、スキップフロアのメリットやおすすめの用途、デメリットと対策などを紹介します。特徴を知っておけば、住み始めてから後悔してしまうという失敗を事前に防ぐことができますので、注文住宅でスキップフロアの導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
●スキップフロアとは?注文住宅でやめたほうがいいといわれるのはなぜ?
スキップフロアは「ステップフロア」とも呼ばれており、一つのフロア階層に複数の高さの空間を配した間取りのことです。フロア内に短い段差を設け、高低差を生み出すことで、一つの大きな空間の中に、複数のスペースを構築します。床から少しだけ高い位置に作られる、一般的に“小上がり”と呼ばれるスペースも、スキップフロアに含まれます。
同じような目的で設けられる空間に「ロフト」があります。これは天井高が1.4m以下で、直下の階の床面積の半分以下という制限がありますが、固定資産税がかからないスペースのことを指します。屋根裏や上部空間といったデッドスペースを、収納や子どもの遊び場などとして有効活用するケースが多いです。
スキップフロアは人気を集めていますが、一方で「やめた方がいい」といわれることもあるようです。その大きな原因は「スタイリッシュなデザインに引かれて、デメリットをしっかりと理解せずに取り入れてしまった」というケースが多いから。
スキップフロアに興味がある人は、ポイントをしっかりと押さえたうえで、間取りを検討するようにしましょう。
●注文住宅でスキップフロアを導入するメリットはたくさんある!
スキップフロアには次のようなメリットがあります。
空間の有効利用が可能
スキップフロアを取り入れることで、3階建てを造ることが難しいケースでも、1階と2階の間に1.5階といったスキップフロアを設けることで、3つのフロアを造ることが可能。また、部屋を区切る際に廊下を設けると、部屋に充てられる床面積が減ってしまいますが、スキップフロアは段差などで緩やかに部屋を区切るため、部屋が広く、立体的に感じられます。
通気性が良い
スキップフロアは壁やドアで空間を仕切らないため、空間の遮閉性が低く、通気性が良いことがメリットです。
家族の気配を感じることができる
スキップフロアを設けることで、キッチン、子ども部屋、書斎と家族がそれぞれの場所で過ごしていても、互いの気配を感じられます。また、スキップフロア部分には仕切りなどがないため、用事があるときは気軽に声をかけやすく、家族間で会話をすることもできます。
収納スペースを確保できる

スキップフロアの階段下、段差部分のスペースを収納として利用できるようにすると、収納のための家具の購入は必要最低限で済みます。季節の衣類や寝具、家電、子どものおもちゃなども収納できて、空間を広く使用することも可能です。

●注文住宅のスキップフロアで後悔する前に確認を!失敗事例とともに、デメリットと対策を紹介
住み始めてから後悔することがないよう、失敗事例とその対策を紹介します。
失敗事例1 子どもや老後のことを考えていなかった
段差が多いスキップフロアは、転倒や落下の可能性もあるため、小さな子どもがいる場合は常に見守りが必要といえます。また、年齢を重ねるにつれて段差の昇り降りが負担になってしまうこともあるでしょう。
対策:手すりや防止柵を設置する
事故を防ぐためには、手すりや転落防止用の柵を取り付けたり、段差を緩やかにしたりするといった工夫が必要になります。また、踏み板に隙間のあるスケルトン階段などは、落下の恐れがあるため、避けた方がいいでしょう。
失敗事例2 建築会社に、設計難易度が高いと言われた
スキップフロアのある家は、デザイン性はもちろん、採光や通風、匂いや音の広がり方など配慮すべき項目が多く、一般的な住宅と比べて設計や建築の難易度が高くなります。
対策:設計・施工の経験が豊富な建築会社を選ぶ
スキップフロアを設ける際、施工実績をよく確認し、設計・施工の経験がある建築会社やハウスメーカーを選びましょう。設計方法や空調、音や匂いが広がるかどうかについてもしっかりと相談してくださいね。
失敗事例3 空調が効きにくく、音や匂いが広がってしまう
スキップフロアは大空間を作ることができる一方で、壁などの間仕切りがないため、冷暖房の効率が悪くなりがちです。
対策1:空調の位置やシーリングファンの設置を検討する
暖かい空気は高い所に上昇し、冷たい空気は低い所に下降していきます。そのため、エアコンは高い位置に設置して、シーリングファンで循環させましょう。
対策2:断熱・気密性能を高める
熱の流入・流出を防ぐため、断熱材と窓は性能の高いものを取り入れることが大切です。断熱材はたくさんの種類があるため、それぞれの特徴を知って、自分たちに合ったものを選びましょう。また、窓は、住宅の中で熱が出入りしやすい場所。断熱性能の高い「Low-Eガラス」や「オール樹脂サッシ」を導入すると、一年中快適に過ごせますよ。
失敗事例4 固定資産税などの費用が高くなった
床面積と比例して高くなっていく固定資産税。スキップフロアを取り入れて床面積が増えると、通常の2階建て住宅より固定資産税や施工費が高くなってしまいます。
対策:自治体に事前確認を
固定資産税は、自治体によってスキップフロアが床面積に含まれる場合とそうでない場合があります。本来、天井までの高さが1.4m以下であり、設置されているフロアの床面積の1/2未満であれば、床面積に含まれないことが多いのですが、最終判断は自治体によって異なります。家づくりを始める前に、まず自治体に確認することが大切です。
●スキップフロアのおすすめ用途
スキップフロアによって新たに生まれたスペースは、アイデア次第でさまざまな用途に役立てることができます。
子ども部屋なら、秘密基地のような遊び場として活用を
子どもが小さいころは、スキップフロアを遊び場に活用することがおすすめ。秘密基地のようで好奇心が湧く空間なのはもちろん、親の目が届きやすく、家事をしながらでもコミュニケーションがとりやすいです。ただ、子どもがある程度の年齢になるとプライベートがないと感じる可能性も。そのような場合に備えて、子ども部屋は別に確保しておく、または間仕切りを設置するといいでしょう。
在宅勤務などのために書斎として利用
読書はもちろん、仕事場としても活躍するなど、スキップフロアを書斎として利用するのもおすすめ。家族の雰囲気を感じながら自分の時間を確保することができます。
ただ、壁がないため、テレビの音や家族の話し声が気になって集中できないという心配も。特に仕事場として利用する場合は、リビングや子ども部屋から離して設置すると良いでしょう。
サブリビングにすれば趣味空間を楽しめる
スキップフロアは、ピアノコーナーや趣味の空間など、サブリビングとしても活用でき、アイデア次第で使い方が広がります。とは言っても、おしゃれだからと使い道を決めずに取り入れると、有効活用することが難しくなってしまいます。
どのような使い方をしたいのか、設計前にしっかりと考えておくことが大切です。
└キッチンに導入して、コミュニケーションを取りやすく
広いLDKは単調なデザインになりがち。そこでキッチンにスキップフロアを取り入れれば、空間にメリハリが生まれ、リビング、ダイニング、キッチンそれぞれの役割が明確になるため、デザイン性と居心地のよさがアップします。
また、キッチンの床を一段下げるスキップフロアもおすすめ。キッチンに立った際、ダイニングで食事している家族と目線が合い、コミュニケーションが取りやすくなります。
●スキップフロアの下を有効活用しよう!
スキップフロアは、下の部分もさまざまな使い方が可能。子どもの成長や家族構成の変化に合わせて有効活用しましょう。
和室を設けてリラックスペースに
スキップフロアの下を畳敷きにすることで、ソファなどとは異なるリラックススペースを作ることができます。ゆったりと足を伸ばしたり、こたつを置いたり、家族のお気に入りの場所となるでしょう。
下収納の空間を設けて、ウオークインクローゼットや室内物置に
スキップフロアの下のスペースは、階段の下などに設ける場合とは違い、使いやすい形の空間を確保できて収納力がアップ。ウオークインクローゼットや室内物置として有効利用できるため、収納家具をできるだけ増やしたくない人におすすめです。
昼寝スペースにもピッタリ
スキップフロアの下の空間は、昼寝スペースとしても活躍。程よい広さに設計すると、小さな子どもはもちろん、大人がゴロリと横になってひと休みするのにぴったりです。

●相性抜群? 平屋にスキップフロアを取り入れるケースも多い!
2階以上のフロアがないため、単調になってしまうことがある平屋。空間にメリハリを持たせるスキップフロアとはとても相性がよく、人気を集めています。
平屋にスキップフロアを取り入れる際のポイントを解説します。
間取りの自由度が広がるというメリットがある
スキップフロアを導入することで、限られた空間でも間取りに柔軟性が生まれます。個室を確保するのが難しい場合でも、床面に高低差をつけてエリアを区切ることで独立したスペースを作り出すことが可能。ほかにも、目線の変化を生かした個性的な空間に仕上げることができます。
段差が生まれるため、バリアフリーの検討が必要
スキップフロアを導入すると段差が生まれ、平屋の特長であるバリアフリーにはならず、高齢者や小さな子どもには優しくありません。対策としては、段差の傾斜を緩やかにする、滑り止め加工を施す、そして手すりを設置することが考えられます。
また、高さ30cm程度の小上がりを採用するのもおすすめ。腰かけになり、高齢になっても楽に立ち上がりができます。家族構成も踏まえ、将来にわたってスキップフロアの利用方法を十分に相談しておくことが大切です。
吹き抜け天井と合わせれば開放感抜群に
全ての部屋が1階に集まる平屋には、中心部に光が届きにくいというデメリットがあります。そこで、吹き抜け天井を採用して天窓や高窓を配置すれば、天井が高くなり、部屋全体が明るくなります。壁や扉など横の仕切りを抑えられるスキップフロアと組み合わせることで、縦と横の両方から光が入りやすくなり、開放感のある広々とした空間になるでしょう。
●【実例】イシンホームへの注文で安心!おしゃれなスキップフロアのある家
最後に、当社が手がけたスキップフロアのある家を紹介します。

●FAQ
建築費用が高くなることがあるって本当?
スキップフロアの住宅は、建物の構造が複雑になる上、各フロアを活用しやすい設計や少ない壁で耐震性を確保するための工夫などが必要になることから、一般的な住宅よりも建築費用がアップする傾向にあります。実績のあるハウスメーカーから詳細な見積もりを取って、よく検討をしてから依頼するようにしましょう。
耐震性に影響はあるの?
建物は壁や床によって支えられています。そのため、段差が多く、床が一体化していないスキップフロアは、地震の揺れを均等に伝えることができず、横揺れを吸収しにくくなっています。
ただ、適切な設計をすれば十分に耐震性を確保することは可能。実績が豊富なハウスメーカーを選ぶことが大切です。

●まとめ
スキップフロアはデザイン性が高く、空間の有効活用ができたり、収納スペースを確保できたり、家族とのコミュニケーションが取りやすかったりするといったメリットもたくさんあります。近年人気を集めている平屋との相性も抜群です。ただし、断熱性能や空調、将来の暮らし方などについてしっかり検討していないと、住みにくい家になってしまうケースも。イシンホームは実績も豊富で、それぞれの希望に応じた提案やアドバイスも可能です。注文住宅での導入を検討している方はぜひ気軽にご相談ください。