住宅の「基礎」は、地盤と建物の間に作られるコンクリートの構造物で、建物を支える大切な役割があります。普段はなかなか目に触れにくい部分なので、気にしていない人も多いかもしれませんが、実は基礎にも種類があり、それぞれ特徴や価格が異なります。今回は、そんな基礎の中で日本の住宅で多く使われている「布基礎」と「ベタ基礎」について紹介します。
●ベタ基礎・布基礎とは
そもそも基礎とは、地盤と建物のつなぎ目に造られるコンクリート製の土台のことをいいます。地面の上に直接建築物を造ってしまうと、建物の重さに地面が耐えきれず沈んでしまったり、地震の際に建物が傾いてしまったりするリスクが高まります。そんな地盤の変形や沈下、振動に耐えられるように、頑丈な基礎が造られるのです。
基礎は、地盤に杭を打ち込んで造る「杭基礎」と、地盤の上に直接造られる「直接基礎」の2種類があり、「直接基礎」はさらに「ベタ基礎」「布基礎」「独立基礎」という3タイプに分けられます。そのうち、住宅に多く用いられるのは「ベタ基礎」か「布基礎」です。
ベタ基礎
ベタ基礎は、建物の床下全体に鉄筋を入れた厚いコンクリートを敷く方法の基礎です。柱や壁だけでなく、建物全体を面で支える構造のため、荷重を分散できるのが特徴。日本では阪神淡路大震災以降に広がりはじめ、現在では主流となっています。
布基礎
布基礎は、建物の主な柱や壁の下にだけ鉄筋入りのコンクリートを敷く方法の基礎のこと。その他の部分には防水シートが敷かれ、その上を薄いコンクリートで覆われますが、この部分に建物を支える力はありません。そのため、建物を点で支える構造と言えるでしょう。1990年代以前には、この布基礎が一般的に使われていました。
●ベタ基礎・布基礎のメリットとデメリットを紹介
それぞれの違いを分かりやすくするために、ベタ基礎と布基礎のメリット・デメリットを比較してみました。
ベタ基礎
まずはベタ基礎の特徴から紹介します。
メリット
・耐震性に優れている
ベタ基礎は建物全体を面で、しかも鉄筋でしっかりと支える構造。この構造によって建物の重みを分散させることができ、地震などによる衝撃を地面に逃がすことができるのです。そのため、一般木造住宅での採用が増えている上に、地盤の強度が比較的小さい土地でも用いることができます。
・湿気やシロアリに強い
地面全体が厚いコンクリートで覆われているベタ基礎は、地面からの湿気が伝わりにくいので、木材の腐食やシロアリによる被害が減ります。
デメリット
・費用が高い
鉄筋やコンクリートを多く使うので、コストが高い傾向があります。
布基礎
続いて、布基礎の特徴を紹介します。
メリット
・費用が抑えられる
布基礎は、ベタ基礎と比べると鉄筋やコンクリートの使用量が少なく、コストを抑えやすいのが魅力です。
デメリット
・耐震性が劣る
主な柱や壁のみを支える構造の布基礎は、どうしても床全体を支えるベタ基礎より耐震性が低い傾向があります。
・湿気やシロアリに弱い
ベタ基礎の建物を支える部分以外のコンクリートは薄く、ベタ基礎と比べると湿気を通しやすいため、シロアリなどの被害を受けるリスクは高いです。
●基礎工事にはどのくらいの期間がかかる?
基礎の種類や基礎の重要性が分かったところで、その基礎工事はどのくらいの時間がかかってしまうのか、気になる人が多いのではないでしょうか。ここでは、基礎工事にどのくらいの時間が必要かご説明します。
着工から基礎完成まで4~5週間
基礎工事は、一般的に新築の全工事期間の3分の1程度の時間がかかるといわれています。面積にもよりますが、戸建て住宅の場合は着工から基礎が完成するまで、約4〜5週間が目安です。
冬場だと時間がかかってしまうから要注意
コンクリートは寒さによって固まるスピードが遅くなってしまうという性質があります。そのため、冬場は施工時時間が長くかかる上に、凍結するほど気温が下がる場合は工事が先延ばしにされることも。冬季の工事は、スケジュールに余裕を持たせておくのが賢明といえるでしょう。
工事の流れ
ここで、基本的な基礎工事の流れを押さえておきましょう。
・地盤調査を行う
家を建てる際には、建物の荷重に耐えられるかの指標である地耐力を調べることが義務付けられています。これを確認するのが地盤調査です。調査の結果、地盤が軟弱だった場合は、地盤改良工事が必要です。
・地縄を張る
文字通り、縄を張る作業。施主の立会いのもと設計図などを参考にして、建物の位置を明確にします。もしここのチェックを怠ると、後々のトラブルにもつながってしまうため、しっかりとチェックしておきましょう。
・掘削工事を行う
先の工程で確定させた位置をもとに、基礎を設置するための穴を掘る作業です。重機を使い、必要な深さまで掘り下げます。ここでは、掘削した面を凸凹でなく平らにしておくことはもちろん、地面が凍結すると膨張して建物に悪影響を及ぼすため、凍結深度より深く掘り下げておくことも重要です。
・砕石を敷き詰める
地盤を安定化させるため、掘削した地面に砕いた石を敷き詰める工程です。砕石した面に機械をまんべんなく当てて圧力をかけ、しっかりと地盤を安定させます。ちなみに、地盤改良された土地では省略されることもあります。
・捨てコンクリートを流す
「捨てコンクリート」は、建物位置の目印にしたり、地盤を平らにしたりするためのコンクリート。この工程をおろそかにすると、建物全体のずれにつながってしまいます。
・配筋作業を行う
基礎の骨組みとなる鉄筋を組み立てる作業です。「捨てコンクリート」の上に鉄筋を配置していきますが、どの直径の鉄筋をどこに使うか、どういう間隔で配置するかなど、一つひとつ確認しながら進める必要があります。
・コンクリートを流す
事前に組み立てた型枠の中に、専用の機械などでコンクリートを均一に流し込みます。コンクリートを枠内にむらなく行き届かせたり、流し込む際に混入した空気を抜いたりと、職人が工具や振動機を使って丁寧に仕上げます。
・型枠を外す
コンクリートがしっかり乾くには、夏であれば3日程度、冬は5日以上かかる場合もあります。その見極めも経験を要する作業。強度の高いコンクリートになったら、型枠を外していきます。
●結局、新築を建てる時にはどちらの基礎を選ぶべき?
結局どちらにすれば良いのか分からないという人は、自分が大切にすることを基準にして選ぶと良いでしょう。
コストを重視するのであれば「布基礎」
先述のとおり、布基礎はベタ基礎より鉄筋やコンクリートの使用量が少ない分、コストが低い傾向があります。とはいえ、ハウスメーカーによってはあまり大きな差が出ないケースもあるようなので、事前に見積もりを取った上で、比較検討するようにしましょう。
耐震性を大切にしたい場合は「ベタ基礎」
基礎だけでいうと、耐震性は布基礎よりベタ基礎の方が優秀です。そのため、地震に強い家を希望する場合は、ベタ基礎を選ぶのがおすすめ。ただし、住宅の耐震性能は基礎だけで決まるわけではないので、建物自体の構造もしっかり確認してください。
シロアリや湿気に悩みたくない場合は「ベタ基礎」
湿気の多い地盤に家を建てる場合や、シロアリ対策を重視したい場合は、ベタ基礎がベター。ただし、ベタ基礎なら100%被害を防げるというわけではありません。定期的な点検によって被害を予防することも大切です。
●基礎を長持ちさせるために押さえておくべきポイントは?
先述した通り、基礎は家を支えている土台。耐震にも影響する大切な部分です。そこで、基礎コンクリートを長持ちさせるポイントを紹介します。
基礎の寿命は30~40年
住まいの基礎の寿命は、30~40年といわれています。その寿命を左右するのは、鉄筋部分の腐食。コンクリートに吸収された水分によって鉄筋が錆びることや、雨水に含まれる炭酸ガスによって酸化することが原因です。鉄筋が腐食すると膨張し、コンクリートにひび割れが発生します。ひび割れた部分には、水や炭酸ガスが入り込みやすいので、腐食の連鎖となってしまうのです。
家づくりの時点で寿命を延ばす方法はあるの?
基礎の寿命を延ばすには、水分や炭酸ガスへの対策が必要。住みながら定期的なメンテナンスをするのはもちろん、家づくりの段階でも気を付けたいポイントもあります。
・密度を高める
基礎に使うコンクリートの密度を高めておくと、強度が増し、耐久性も向上します。
具体的には、セメントペーストの配合を適切にして、接着力を向上させるなどの方法はもちろん、コンクリートの締め固めを徹底することも有効です。
・かぶり厚を増やす
「かぶり厚」とは、建築基準法に規定された鉄筋外側からコンクリート表面までの距離を指します。かぶり厚を厚くしておくことで、腐食を防ぐことができます。
・打設後に養生を行う
コンクリート打設の大切な最終段階が養生です。適切な温度や湿度をキープし、風雨などから守りながらコンクリートを乾かして、強度を出していきます。
・表面をコーティングする
仕上げに表面をコーティングしておくと、水分や炭酸ガスがコンクリート内部に侵入するのを防ぐことができます。
メンテナンスも大切
基礎の寿命を延ばすには、定期的なメンテナンスも大切。
まずはシロアリの対策を徹底しましょう。シロアリは基礎や柱に使われる木材を食べてしまうため、基礎が劣化してしまいます。また、シロアリはひび割れたコンクリートから侵入することから、一度侵入を許してしまうと基礎の劣化がより一層進んでしまうでしょう。シロアリが好む水分を避ける、すなわち、換気などの湿気対策を徹底しておくことが、シロアリ対策にもつながってくるといえます。
また、補強工事も効果的です。補強には、コンクリート全部を取り替える「打ち直し工事」や、鉄筋コンクリートを追加する「まし打ち工事」などがあります。軽度なひび割れの場合は、専用の薬剤を注入する「クラック補修」を行います。
●FAQ
地震に強い家にするには、基礎だけでなく土地も大切って本当?
埋め立て地や地盤の弱い土地も多い日本。地震に強い家を建てるなら、基礎はもちろん土地も重要なポイントです。ここでは、その流れを説明しましょう。
・地盤調査を行う
義務化されていないものの、家を建てる前には一般的に実施される地盤調査。地耐力を調査することで、家を建てても安全かどうか、また軟弱な場合はどのように改良すれば良いかが分かります。
・軟弱地盤だった場合、地盤改良工事を行う
地盤調査で軟弱地盤と診断された場合は、地盤改良工事を実施します。地盤改良工事には、表層に固化材を混ぜて重機で固める方法や、土の中にコンクリートの柱を作って土台にする方法などがあります。
基礎の保証はハウスメーカーごとに違うの?
新築住宅は、住宅品質確保法に基づき、引き渡しから10年は「瑕疵(かし)担保責任保証」という保証が付いています。引き渡しから10年以内に、住まいの基礎に不備があった場合は、施工業者に修理などしてもらえるのです。これに加えて、独自保証を設けているハウスメーカーも多いです。期間や範囲など、その内容は各社さまざま。例えば、内装の初期不良、住宅設備の故障など、無償で修繕してもらえる可能性もあります。
近年は20、30、60年など長期保証を打ち出すハウスメーカーも増えています。ただし、長期保証の条件として、期間内の有償メンテナンスが設定されていることが多いので、注意が必要です。
●イシンホームでは、ベタ基礎が標準装備!
今回ご紹介した基礎のうち、イシンホームでは「ベタ基礎」を標準装備として採用しています。住宅は長く住み続けるものなので、将来的に大きな傷みが出ないように、なるべくリスク回避しておきたいですよね。その点、湿気やシロアリなどの被害を減らせるベタ基礎は、長い目で見てもおすすめです。標準装備であれば追加料金が発生する心配もないので、当社ならコスト面でも安心してお選びいただけます。
また、当社の基礎は寒冷地仕様の高断熱なうえ、土台には強度と耐久性に優れた国産高級桧を使用。断熱性と耐震性に優れています。基礎について気になる方は、ぜひ一度ご相談くださいね。
●まとめ
イシンホームでは「ベタ基礎」が標準装備。社内の厳しい検査体制を整え、引渡し前に第三者機関の検査も実施し、欠陥などがない家づくりに努めています。
「瑕疵担保責任保証」の延長として、有料ですが最長60年延長保証制度もご用意。詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。