古い日本の家には当たり前のようにあった縁側。
昭和の終わり頃から、日本家屋からその姿を消し始め
映画や漫画の世界でしか見られない希少な存在になっていました。
ところが最近、じわりじわりと縁側人気が高まってきています。
そこで今回は知っているようで知らなかった「縁側」の実像に
スポットをあて、その魅力に迫ります。
●今なぜ縁側が人気なの?
縁側とは、かつての日本住宅によく見られた伝統的な建築様式で、屋内と屋外との間にある板張りの空間のこと。屋内であり屋外でもある、曖昧な緩衝領域で内外両者をさりげなくつなぐ役目を果たしています。ところが日本家屋の狭小化に伴い徐々に姿を消して、古くから残る住宅以外では見られなくなっていました。
ところが最近、縁側のもつ快適性やコミュニケーション機能、さらには延べ床面積の制限に含まれない外部空間(外壁面から2m以内の場合)として活用できる点などが再評価され人気が高まっています。最近ではLDKに掃き出し窓と濡れ縁を設置する例が新築・リフォーム両方で増加し、市販の濡れ縁を後付けするケースまで見られるほどの人気ぶりです。
●縁側にもいろいろある
一口に縁側と言ってもタイプによる違いがあります。そこで縁側の種類と特徴を簡単にまとめておきます。
濡れ縁(外縁)
濡れ縁(外縁)とは、雨戸や窓の外側に設けられた縁側のこと。軒はかかっていますが、屋外空間にあるため雨の降りが強いと濡れてしまうことから、「濡れ縁」と呼ばれています。
くれ縁(広縁)
くれ縁とは、雨戸や窓の内側に設けられた縁側のこと。屋内に設けるので雨に濡れにくく、部屋と部屋をつなぐ廊下のような役割も果たしています。くれ縁のうち、幅を広く取ったものを「広縁(ひろえん)」と呼びます。
落ち縁
部屋の内部とは一段下がった位置にある縁側です。濡れ縁の一種で、風雨にさらされますが、一段下がっているため部屋の内部に埃や汚れが入りにくい作りとなっています。
縁側のサイズ
一般的な縁側の奥行きは、人が横になれる十分なスペースが取れるに90cm〜120cm。庭をできるだけ大きく取りたい場合は、腰掛けられる程度の縁側もあり、スペースが限られる小さな住宅の場合は、リビングやダイニングの一部を奥行き60cm程度の縁側にして、スペースを有効に利用しながら、縁側の良さを取り入れるケースも見られます。また奥行きが120cm以上の縁側は、家具を置いたり植物を飾ったりすることができ、より活用法が広がります。
ウッドデッキとの違い
縁側とウッドデッキの違いは、上部を覆う軒があるかないかです。基本的に、縁側は軒下に収まる大きさですが、ウッドデッキは屋根から大きく張り出しています。縁側は家の一部分になり、ウッドデッキは庭に連なる家とは独立したスペースと言えるかもしれません。
●縁側のメリットとデメリット
ハンモックを吊ってお昼寝したり、庭を眺めながらお茶を飲んだり、縁側は暮らしを豊にしてくれる様々な魅力があります。もちろん良いことばかりではなく、注意が必要なデメリットも・・・。そこで縁側をつくる参考となるよう縁側のメリットやデメリットを整理し、注意点をご紹介します。
<メリット>
夏は涼しく冬は暖かい
屋外と部屋の間にスペースを設けることで、夏は部屋に直射日光が入るのを防ぎ、室内温度の上昇を防ぎます。また軒のおかげで日陰部分も生まれ、冷房などの省エネ効果も高くなります。冬は縁側が冷気を遮ってくれて、暖かな直射日光だけを招き入れるサンルームのような機能を果たします。
広がりのある開放的な空間
部屋と縁側の床の高さが一体となるフラットな作りの場合、ふすまや引き戸を全開にして部屋が広く見せることができます。さらに縁側の雨戸やガラス戸も開けると、屋外との一体感も生まれ、大きな開放感を演出できます。
コミュニケーションスペース
縁側は靴を脱いで床に「上がる」必要がありません。ふらりと気軽に立ち寄れて気軽に立ち去れるこの程よい距離感が、コミュニケーションを円滑にし、昔から人が立ち寄る場所として機能してきました。現代ではバーベキューやお子様の庭遊びの際に、家族や友人が腰かけて、お喋りしたり見守ったりする、屋外と屋内を繋ぐスペースとして役立ちます。
<デメリット>
ある程度広い敷地が必要
縁側を設置するには十分なスペースが必要になります。また縁側に合った庭をつくるとなるとさらに土地が必要になります。そのため、縁側をつくるにはある程度の土地の広さが必要になり、土地代や固定資産税などのコストがかかります。
プライバシーの確保や防犯面
縁側は家の外部に開放的であるため、家の内部が外から見えやすくなり、プライバシーが損なわれたり、不審者が侵入しやすい隙をつくり出すリスクがあります。そのため縁側の視界を遮るなど防犯対策が必要になります。
●縁側をつくる時の注意点
設置場所に注意する
縁側をつくっても、外の眺めが悪かったり、日中に日の当たらない場所に位置していたら、魅力も半減。事前に縁側をつくる場所の日照や周囲の環境を十分に検討し、イメージを固めておきましょう。
欲しい縁側を明確にする
一口に縁側と言っても、様々なタイプの縁側があります。そのため、縁側の利用の仕方や楽しみ方のイメージを事前に固めておくことが大切です。また縁側やウッドデッキは、後から増設することも可能です。焦って新築時に縁側をつくらず、じっくり検討してから後でつくることもオススメです。
プライバシーや防犯に配慮する
実際に縁側をつくる際には、適度な高さの植栽や、すだれやブラインドを設けるなどプライバシーや防犯のための工夫が欠かせません。また、不審者の侵入を防ぐために、外部から縁側へのアクセスを制限するゲートや扉を設けることも効果的です。
●よくあるご質問
Q:縁側の設置場所に制限はある?
A:まず、都市計画法や建築基準法などの法的な規制をクリアする必要があります。また場所を決める際に、日当たり、風通し、防犯、景観などを考慮することが大切です。
Q:どの方角に設けるのが良いのか?
A:日当たりを考慮して南向きに設けることが一般的。ですが、家の位置や周囲の環境により最適な方角を考える必要があります。
Q:縁側の広さはどのくらい必要?
A:家の大きさ、家族の人数、利用方法などにより異なります。大人が横になってくつろげるスペースとして考えると、90cm程度の幅が最低でも必要になります。
Q:縁側に必要な防水対策は?
A:雨が吹き込むことを考えると、床材には耐水性のある素材を選び、定期的なメンテナンスをする必要があります。
●いくら必要?縁側の価格相場
縁側の設置費用は、タイプや広さや使用建材などによって異なります。一般的に壁や窓、屋根の設置費用がかかる「くれ縁」の方が、濡れ縁よりも価格が高くなります。
「濡れ縁」1万2千円/㎡程度
「くれ縁」は10万円/㎡程度
新築の際の縁側づくりは費用の見積もりを含め経験豊富なイシンホームにお気軽にご相談ください。