
インナーバルコニーは、リゾート感覚の屋外リビングやお子様のプレイスペースなど暮らしにプラスアルファの豊かさを生み出す空間として人気上昇中。魅力が多い反面、費用面や税金面のことを配慮せずにつくって後悔してしまうケースも見受けられます。そこで今回は注文住宅でつくるインナーバルコニーのメリット・デメリットを整理し、気になる費用や固定資産税の情報も網羅。よりトータルなチェックで、後悔しないインナーバルコニーづくりをサポートします。
目次
インナーバルコニーとは
インナーバルコニーとは、住まいの2階以上に設置される、バルコニー部分が建物の内側にある形状の空間です。屋外でありながら、天候の影響を受けにくいため、幅広い用途でスペースを利用することができます。
広さの目安は
バルコニーの広さの目安は、洗濯物を干す目的で利用するなら奥行きが1m以上、椅子やテーブルを置いたりアウトドア空間として活用したい場合は2m以上の奥行きをとったほうがいいでしょう。
バルコニーやベランダ、サンルームとの違いは
インナーバルコニーと違い、バルコニーやベランダ、テラスは建物の外に張り出しています。一般的なバルコニーは、屋根のない比較的広いスペースのこと。ベランダは、2階以上に設けられた、屋根があるスペースのことを指します。そして、テラスは1階の部屋に設けられたスペースです。
また、サンルームはインナーバルコニーと間違えられやすいですが、サンルームとは洗濯物を干したり観葉植物を育てたりするため屋外から日光を取り込みやすい設計にした空間のこと。大きな違いは水栓や排水口を備えるなど水を扱えるかどうか。一般的なサンルームは通常の居室と同じつくりのため水は扱えないようになっています。
インナーバルコニーのメリット・デメリット

インナーバルコニーを設置した際のメリットとデメリットについてご紹介します。
〈メリット〉
インナーバルコニーを設置すると以下のようなメリットがあります。
開放感のある空間をつくることができる
2階にリビングがある場合、インナーバルコニーとつなげることで開放感のある空間の演出が可能。また、水栓を設けることで観葉植物を育てるなど屋外空間と同じように、さまざまな用途で使用することができます。
天候に左右されることがない
インナーバルコニーは建物の内側に設けられているため、天候に左右されず使用できることが大きなメリット。雨の日でも洗濯物を干すことができます。また、天気の良い日は強い日差しを避け、快適に過ごすことができるでしょう。
雨の日でも洗濯物が干せる
奥行きが1m以上あると屋外に洗濯物を干したいときに無理なく干すことができます。また、建物の中に引っ込んでいる構造のため、多少雨が降っていても洗濯物を濡らさずに干すことができます。
プライバシーを確保できる
先述した通り、インナーバルコニーは建物の内側につくられているため、プライバシーの確保も容易です。人目を気にすることなく、バーベキューや家庭内でのキャンプを楽しめるでしょう。
プラスアルファの空間として使える
わいわい楽しむバーベキューやホームキャンプ、のんびりくつろぐお家カフェテラスをはじめヨガやガーデニングなど暮らしを広げるアウトドアスペースとして活用できます。
お子様の遊び場として使える
雨が降って外で遊べない日でも、インナーバルコニーがあれば、子供たちを伸び伸びと遊ばせることができます。また夏は、ビニールプールで水遊びさせたり、お子さまを安心して遊ばせられるスペースになります。
〈デメリット〉
室内にいながら、屋外にいるような感覚を楽しむことができるインナーバルコニーですが、いくつか注意しておきたいポイントもあります。
他の部屋のスペースが狭くなる
インナーバルコニーは構造上柱や壁が必要になります。そのため、他の部屋のスペースが狭くなったり、間取りに制限が出ることがあります。室内の柱によっては、使いにくさや狭さを感じることもあるので、プランニングを十分検討する必要があります。
建築費用やメンテナンス費用がかかる
インナーバルコニーは屋根や外壁、柱などが必要なことや、床面に断熱材や防水加工が必要なことから、一般的なバルコニーより建築費用が高くなりがちです。また、半屋外となるため落ち葉やほこりの掃除など、日々の手入れが必要となり、10~15年に一度は防水床の交換などメンテナンス工事も必要になります。
固定資産税が発生する
固定資産税の計算をする際は、その建物の延べ床面積を利用します。屋根のあるインナーバルコニーは建物の内部として扱われるため、延べ床面積に含まれてしまい、固定資産税が発生します。
隣接する部屋の採光を妨げる場合がある
インナーバルコニーの奥行きが深いと、隣接する部屋に陽光が入りにくい場合があります。窓の配置を工夫したり天窓を作るなど採光に配慮する必要があります。
インナーバルコニーの費用の相場
インナーバルコニーを設置する際の一般的な費用相場は、坪単価で30万~50万円程度。広さや使用する素材などによっても変動しますから、正確な費用は、見積りを取る必要があります。
またインナーバルコニーには固定資産税やメンテナンス費用もかかります。住み始めてから後悔しないためにも、これらの費用も考慮しておきましょう。
インナーバルコニーの費用を抑えるコツ
インナーバルコニーの費用を抑えるためのポイントを紹介します。
素材選び
人工木・合成系デッキ材の方が天然木より価格が安く、維持する手間もかかりません。屋根の素材(ポリカ/ポリカーボネート・アルミ・樹脂板など)でも価格差があります。
屋根・窓の仕様を簡素にする
屋根は簡単な形状・既製品を使う。窓を小さくしてサッシの仕様も標準的なものにする。断熱工事も必要なグレードを検討して価格を抑えることができます。
広さを最小限にする
インナーバルコニーの活用の仕方を考えて、不必要に広くしないことで材料・工事費を下げることができます。
複数の見積もりをとる
ハウスメーカーや工務店など複数社から見積もりを取ることで、仕様・価格見積もりの差が把握できます。
設計段階で工事内容を明確にする
防水処理や排水勾配、躯体との接合など、後から追加費用が発生しやすい部分は最初から仕様に組み込んでおくと予算オーバーが避けられます。
インナーバルコニーで後悔しないためのポイントとは

インナーバルコニーを設置する時に、気を付けるポイントを紹介します。
動線について検討する
インナーバルコニーの使用目的に応じた生活動線を検討することが重要です。第二のリビングとして開放的な空間を楽しむのか、洗濯物を干すのかなど、使用目的を明確にしましょう。そのうえで動線や間取りを検討すると、インナーバルコニーを活用することができます。
室内のデザイン統一感を持たせる
インナーバルコニーをプラスアルファの部屋として使う場合は、屋内空間とのデザインを合わせることがポイント。天井に同じ木材を使ったり、壁やインテリアの色味を統一することで自然なつながり感が生まれ洗練された空間づくりが行えます。
外からの視線が気になる場合は対策する
お隣のベランダからの視線が気になる場合は、ブラインドを設置して視線を遮りましょう。ブラインドの素材にもこだわると、空間のデザイン性もアップします。その他、ルーバーやカーテンなどで視線対策をする方法もあります。
使い方のイメージを明確にする
インナーバルコニーを検討する場合は、どのように活用したいのかを明確にしておくことが大切です。洗濯物を干したい場合と、アウトドアリビングとして使いたい場合では、広さや必要な設備が大きく変わります。なんとなく作ってしまうと、使用しない無駄なスペースになる可能性があります。
固定資産税について確認する
固定資産税が発生する条件は以下の通りです。
・インナーバルコニーの奥行きが2m以上
・インナーバルコニーの手すりの高さが天井までの半分以上
これは、ほとんどのインナーバルコニーに当てはまります。固定資産税が通常の住宅よりも高くなってしまうことを把握したうえで、プランニングを進めていきましょう。
インナーバルコニーの固定資産税とは
固定資産税が発生する条件
前項で固定資産税が発生する条件は述べましたが、さらに詳しく税額の算定基準を紹介します。
固定資産税は建物の 床面積 × 評価額単価 をもとに算定されます。
ただし、「床面積」に算入されるかどうかは、建築基準法上の延べ床面積の扱いとは必ずしも同じではなく、課税上の判断が行われます。
屋根・三方の壁に囲まれている部分 :「室内と同様に利用できる」とみなされ、 床面積に算入され課税対象 になります。
屋根はあるが三方向以上が開放されている部分 :「バルコニーやベランダ」とみなされる場合は、 課税床面積に含まれません。
半分程度壁で囲まれているケース :「床面積に一部算入(2分の1課税など)」とする自治体もあります。
固定資産税額のシミュレーション
以下に簡単な固定資産税額のシミュレーションを整理します。
固定資産税額 = 建物評価額 × 1.4%(標準税率)
仮にインナーバルコニーが10㎡で建物評価額の単価が1㎡あたり12万円だとすると
10㎡ × 12万円 = 120万円 が建物評価額に上乗せされ
固定資産税増加額 = 120万円 × 1.4% = 16,800円
固定資産税の年額が16,800円増加します。
固定資産税を抑えるポイント
屋外との一体性を高める
壁を三方すべて囲まず、2面以上を開放する、大きな開口部を確保するなど屋外との一体性を高めると「バルコニー(半屋外空間)」として扱われやすくなります。
屋根のかけ方を工夫する
常設の屋根があると室内扱いになりやすいので、完全に覆わず、一部を吹き抜けにして、可動ルーバーなど「後付けの日除け」で対応すると屋外の扱いになります。
設計図面の用途を居室にしない
建築確認申請時の図面に「バルコニー」「テラス」と明記して登記上の床面積に入らないように表現します。「サンルーム」「居室」と表現すると床面積に算入されます。
インナーバルコニーは日当たりが悪いって本当? 対処法を紹介!
開放感のある明るいインナーバルコニーにするためには、日差しが欠かせません。実用性を考えても、洗濯物や布団を干す際に日光がまったく当たらないようでは困りますよね。そのため、インナーバルコニーの日当たりが気になる人は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、屋根や壁に囲まれた形状であるインナーバルコニーは、一般的なバルコニーと比べると、どうしても日当たりが劣ってしまいます。また、インナーバルコニーの奥行きが広くなればなるほど、奥に日差しが届きにくくなるので、隣接する部屋が暗くなってしまうリスクも。部屋が暗いと不便なだけでなく、生活にストレスを感じる可能性も考えられます。
とはいえ、すべてのインナーバルコニーが暗くて不便なわけでは、もちろんありません。設計次第で明るく便利なスペースにすることは可能です。失敗しないためには、事前に対策を立てることが大切。しっかりと採光できるように適切な対策を行えば、インナーバルコニーで快適に洗濯物を乾かすことができ、隣接した部屋でもストレスなく過ごせるでしょう。
日当たりの良いインナーバルコニーするために有効な対策は?
それでは、一体どのようなインナーバルコニーにすれば、日当たりが良くなるのでしょうか。ここでは、具体的な対策を3つ紹介します。
・太陽の動きと、周辺の建物や道路の方角を考慮する
日当たりの良いインナーバルコニーにするためには、太陽が登る方角を考慮することが大前提です。通常、日差しが当たりやすいのは南側。ただし、そこに西日が入ってくるとインナーバルコニーや隣接する部屋が暑くなってしまうリスクもあるので、より快適な空間にするためには東側から採光できる工夫をすると良いでしょう。
1点注意が必要なのは、貴重な南側のスペースにインナーバルコニーを設置すると、部屋に入る日差しが減る可能性があること。その結果、冬場に寒さを感じるという失敗談もあるようなので、居住スペースの採光も考慮しながらインナーバルコニーを設ける方角を決める必要があります。
また、インナーバルコニーを南側に設置したとしても、隣に高い建物がある場合には、十分な日当たりが得られないことがあります。そのほか、南側に住宅や道路が隣接していると、日当たりは良くても視線が気になってインナーバルコニーを使いにくくなる可能性も。そうした周辺に建つ建物や道路の方角も考慮したうえで、インナーバルコニーの位置を決めることが大切です。
・用途に合わせて最適な間取りを考える
通常のバルコニーは、奥行きがおよそ90cmという基準が一般的ですが、インナーバルコニーにはそのような基準がなく、間取りの自由度は高いです。ただし、インナーバルコニーを広げると、その分隣接する室内が狭くなるなどという影響が生じる点には注意が必要。
インナーバルコニーは、リビングに隣接させるか、ランドリールームや家事部屋として設けるケースが多いもの。前者の場合にはインナーバルコニーが広すぎるとリビングが狭くなってしまいます。さらに、屋根の大きさを誤ると、リビング全体が昼間でも暗く、地味な印象になってしまう可能性も。一方、後者の場合は、日当たりだけでなく、風通しも良くなければ洗濯物が乾きません。インナーバルコニーの設置場所や使用用途を考慮したうえで、最適な間取りを決めることが大切です。
・天窓やハイサイドライト(高窓)を設置する

方角や間取りを調整しただけでは十分な日差しが確保できない場合、天窓やハイサイドライト(高窓)を設置するのも有効な手段です。天窓とは、屋根の一部に設置される窓のこと。真上からより多くの光を取り込むことができるので、通常の窓だけでは暗いインナーバルコニーの採光にぴったりです。開閉式の天窓であれば風通しも確保できるので、洗濯物も乾きやすくなるでしょう。
一方、ハイサイドライトは天井面近くの壁面に設けられる窓のことを指します。壁面といっても、一般的な窓とは異なる高い位置に造られるので、天窓と同様に光を取り込みやすいのが魅力です。このハイサイドライトをインナーバルコニーに隣接する部屋に設けると、家具などを配置する壁面は確保しつつ、十分な光を室内に取り込むことが可能になります。 このように、天窓やハイサイドライトをうまく活用すれば、より明るく快適なインナーバルコニーを実現できます。実際に当社でもこの方法を取り入れた実績があり、お客様からもご好評いただいています。
【実例紹介】 イシンホームで、おしゃれなインナーバルコニーを作ろう!
最後は、当社が手がけたインナーバルコニーのご紹介です。急なお天気の変化を心配して、洗濯物を外に干せないとお悩みの共働きのご家庭に喜ばれているのが「トップライト付き洗濯物干場」。トップライトとは、通常の窓の3倍の採光が確保できる天窓のこと。そのため、洗濯物をしっかりと太陽光に当てることができるうえ、急な雨でも濡れることがありません。さらに、乾燥機などを使うことがなくなって、電気代の節約にもつながります。

まとめ
インナーバルコニーは使い方のイメージをはっきりさせ、日当たりや間取りなどをしっかりと考慮すると、暮らしの開放感や楽しみを大きく広げてくれます。イシンホームは、インナーバルコニーを導入した豊富な経験を元に、様々なアドバイスや提案で理想のプランニングをサポートします。インナーバルコニーで疑問やお悩みがある場合は、どうかお気軽にご相談ください。

