
最近、人気のある間取りの1つが、吹き抜けのあるリビングです。モデルハウスはもちろん、写真からでも感じる伸びやかで広々とした開放感は、ワンランク上の暮らしを予感させてくれる洗練された空間づくりを印象づけます。SNSでも「映える家」として紹介されるなど人気が高く、憧れの間取りとして定着しつつあります。
今回は、そんな吹き抜けのメリット・デメリットから実際のケーススタディまで、押さえておきたいポイントを紹介します。
目次
●人気の吹き抜け、その理由は
吹き抜けとは上下の空間を隔てる天井などの仕切りをなくした、2つ以上の階がつながっている空間のこと。よくある2層吹き抜けの場合だと、1階の床から天井まで2階分の高さがある空間になります。そのため、吹き抜けをつくるためには、基本的に2階建て以上の構造が必要。最近増えてきた平屋の場合、勾配天井などを取り入れなければ設置できないので、注意してください。
ではまず吹き抜けのメリットを簡単にまとめます。
開放的な空間
吹き抜けのある間取りは、天井が高くなることで上部に広がりができるため開放感が大きくアップします。特にコンパクトな住宅は吹き抜けをつけることで、空間に伸びやかな印象がプラスされ窮屈さが軽減されます。
採光性と通風に優れている
吹き抜けは、高い位置から光を取り入れることで部屋全体に光を行き渡らせます。太陽の位置が低い冬でも、高く大きな窓から自然光が広がるため、室内の明るさを保つことができます。
また、暖かい空気が上昇することにより、縦方向にも空気が対流。立体的な空気の流れが生まれ風通しが良くなります。
コミュニケーションを取りやすい
吹き抜けがある間取りは、1階と2階の空間がつながり家族間のコミュニケーションがしやすい環境を生み出します。1階のリビングから2階にいる子どもと会話したり、様子を確認したりすることも自然にできます。
おしゃれでSNS映えする
吹き抜けのある空間は、デザイン性に優れていて、洗練された印象を与えます。おしゃれな照明器具やシーリングファンを設置したり、スキップフロアと組み合わせたりと、広がりのある空間だからこそできる演出が可能。SNS映えする個性的な住まいを実現できます。
●吹き抜けのデメリットは?
人気の吹き抜けにもデメリットはあります。住んでから「思っていたのと違う」と後悔しないように、デメリットもしっかりと検討して間取りを考えてください。
冷暖房効果を妨げる
吹き抜けのある広く開放的な空間では、どうしても冷暖房の効きが悪くなります。特に冬場は、温度の高い空気は上方に集まり、反対に温度の低い空気は下に溜まるため、1階にあるリビングなどで寒さを感じるケースがあります。そのため空調にかかる電気代が高くなりがちです。
メンテナンスが手間
照明の交換や掃除などのメンテナンスに手間がかかることも吹き抜けのデメリット。天井のダウンライトやシャンデリアなど高い位置に照明がある場合には、電球交換や掃除に手間がかかります。また窓の掃除も高い位置にあるため、簡単に掃除をすることができません。
音やにおいが広がる
1階で発生した音やにおいが上階にまで広がってしまうこともデメリットです。音を響きにくくする吸音材や、においが広がるのを防ぐ換気扇を設置するなどの対策が必要になる場合もあります。
費用が割高になる
注文住宅で吹き抜けをつくる場合、2階部分の床面積が少なくなることから安くなると思われがちです。しかし、2階の構造補強や高所作業に必要な足場の設置、断熱対策、シーリングファンや照明の取り付けといった追加費用によって、割高になる場合があります。
後悔しないために…吹き抜けを取り入れるべき?やめるべき?
吹き抜けはすべての土地や建物に向いているとは限りません。また、家族によっても暮らし方や考え方はさまざまです。結果的に暮らしにくい住まいになってしまうことがないよう、その判断項目を紹介します。
【取り入れるべきケース】
高断熱・高気密の性能が担保されている
吹き抜けのある広く開放的な空間では、どうしても冷暖房の効きが悪くなり、光熱費がかさんでしまいます。快適に、長く住み続けるためには、高断熱・高気密の高性能住宅であることが肝心です。
間取り全体が吹き抜けに最適化されている
先述の通り、吹き抜けにはさまざまなデメリットがあります。それらを踏まえた上で、寝室やリビングの配置など、家の間取り全体が吹き抜けに最適なのか判断しなければなりません。さらに、家族構成やライフスタイルなどと調和するかどうかも考えましょう。
【おすすめできないケース】
断熱性能が低い
断熱性能が低い家では、外気の影響を受けやすく、エアコンを使っても夏は暑く、冬は寒くなりがちです。室温を維持するためにエアコンをフルパワーで稼働させなければならなくなり、電気代もたくさんかかってしまいます。
エアコン1台で家全体の空調をまかなおうと考えている
吹き抜けのように縦に大きな空間は、前述したように冷暖房効率が悪くなる傾向があります。1階でエアコンを使用したとしても、吹き抜けがあると暖かい空気は上階へと逃げ、冷やされた空気は下の階に溜まるなど、エアコン1台で家全体の空調管理を行うことが難しいと考えられます。
音やにおいに敏感
吹き抜けのある空間は開放的である一方、プライベートな空間づくりにはあまり向いていません。特に、リビングの音やキッチンのにおいなどに敏感な家族がいる場合は、吹き抜けを採用するかどうかよく相談してから決めた方がいいでしょう。
快適な吹き抜けは「家の性能」で決まる
さまざまなメリットがある吹き抜けですが、その一方で気になるデメリットもあります。これを防いで快適に過ごすためには、家の性能が重要になります。
高気密・高断熱化
高気密とは熱が出入りする隙間ができるだけ少ない家にすることです。また高断熱は、壁の内外や床下などに使用する断熱材を高性能なものとし、さらに窓やサッシを熱の通しにくいタイプにすることが必要です。
これにより温めた空気が外へ逃げにくく、吹き抜けがあっても寒さを感じにくくなります。また、夏も外部の暑さが家の中に入り込みにくいので、冷房効率が高まります。冷暖房の効率が高まると空調の設定を低くできるので省エネにもつながります。
シーリングファン+換気計画
冷暖房の効きにくい吹き抜けには、シーリングファンを取り入れることがおすすめです。天井部にシーリングファンを取り付けることで、室内の空気が効率よく循環。暖かい空気を下に戻してくれるため冷暖房効率も上がります。また、デザイン性が高いものも多くあり、スタイリッシュな印象にすることもできます。
耐震性の確保
吹き抜けは上階との間に天井や床を設けない構造のため、耐震性が低くなり、横揺れに弱くなる可能性があります。 特に大きな吹き抜けを設ける場合は、構造計算を行い、必要な耐震補強を施さなければなりません。必ず経験豊富な住宅会社に相談しましょう。
吹き抜けの費用と注意点
憧れの吹き抜けですが、費用はどの程度必要なのでしょうか。注意点とともに紹介します。
吹き抜けの費用は?
吹き抜け導入の費用は各社まちまち。施工面積や、建物の補強工事がどの程度必要かなど、条件によって価格が変動するものです。また、吹き抜け部分の工事費用をどのくらいの坪数で換算するかも影響します。リフォームで吹き抜けを新設する場合、100万円〜数百万円と、規模や構造補強の有無によって大きく変わります。
吹き抜けを設けると坪単価が変わる?
吹き抜けは2階部分に床がないことから、その分だけ安くなるイメージをもつ人も少なくないかもしれません。確かに吹き抜けは、建築基準法では床面積に入らず、容積率に含まれません。しかし吹き抜けの場合、天井部分に天窓や照明をつける際に足場を組むための費用がかかるほか、耐震性アップのための工事も必要になります。そのため、結果としてコストは増える場合が多いです。
天井の仕上げ、シーリングファン、照明計画で費用がアップする
吹き抜けの天井や壁の仕上げは、使用する材料によって費用が大きく変わってきます。クロスや塗装であれば比較的抑えることができます。高級タイルなどの材料を使用すると、費用はアップします。
また、シーリングファンや照明の購入費用なども必要です。シーリングファンは、シンプルなタイプで1万円から5万円、照明器具付きのタイプで10万円から15万円が一般的。吹き抜け照明は、ペンダントライトやシャンデリア、スポットライトなどさまざまな種類があります。シンプルなペンダントライトなら数千円から購入できますが、デザイン性の高いシャンデリアなどは数十万円を超えるものも。さらにそれらの設置工事には別途費用がかかります。
工務店や住宅会社に確認したい「吹き抜けに含まれる費用項目」
吹き抜けの費用に含まれるものは、構造補強工事、床組み工事、床材・天井材工事、壁・間仕切り工事、電気工事、内装仕上げ工事、その他諸経費などです。さらに、断熱工事や高所作業のための足場設置、シーリングファンや照明の設置などが追加費用として必要になるケースも。具体的な費用は工務店や住宅会社に確認しておきましょう。
注文住宅で吹き抜けを検討する際、気を付けるポイントとは
マイホームに吹き抜けを設ける際に、検討が不十分だったり注意点を見落としてしまったりすると「実際に暮らしてみたらがっかりした!」という事態になる恐れもあります。そこで気を付けたいのが以下に挙げるポイントです。
吹き抜けとその下の空間のバランスを検討しよう
まず、吹き抜けをつくると上階の部屋が減ります。家族構成を考えて部屋数が減ってもいいかしっかりと検討してください。
また、吹き抜けの面積が狭く広さが十分でないと、開放感や採光のメリットを生かせず、せっかく吹抜けを設けた意味がなくなってしまいます。逆に、吹き抜けの面積が広すぎる場合、しっかりした対策をしないと夏暑く冬寒い空間になりがちです。高気密・高断熱化や空調能力の計算、シーリングファンの導入などきっちりした空調計画が必要です。
暗くなりがちな夜間の照明計画を立てよう
吹き抜けは天井が高い分、照明の光が下まで届きにくく暗く感じるケースもあります。大きめのシャンデリアやダウンライト、スポットライト、フロアライトなど照明プランを工夫することで、個性的な灯りを楽しむことも可能です。また、吹き抜け部分に可動式照明レールなどのダクトレールを付けると、照明の設置や移動が簡単になり便利です。
吹き抜け×間取りのアイデア集
吹き抜けのメリットを最大限に生かす間取りのアイデアを紹介します。
「玄関吹き抜け」で第一印象を明るく広く
吹き抜けはリビングやダイニングに設置するものと考える人が多いかもしれませんが、玄関に設ける間取りもおすすめ。高窓や天窓など、高い位置に窓を設置できるという吹き抜けならではのメリットを生かして自然光をたっぷりと取り込めば、扉を開けた瞬間に明るく広々とした空間が広がります。家族が帰宅した際に心地よい気分が味わえるのはもちろん、来客時に明るく広い第一印象を与えられるのもうれしいポイントです。
「スキップフロア+吹き抜け」で空間を立体的に活用
スキップフロアと吹き抜けの相性は抜群。高さと奥行きを生かした立体的な空間設計によって、限られたスペースでも広がりを感じることができます。間仕切りを使わないスキップフロアは、吹き抜けの天窓から差し込む光を遮ることがなく、空間全体に明るさと開放感をもたらしてくれます。
「大きな窓+吹き抜け」で自然光たっぷりの開放空間
大きな窓と吹き抜けの組み合わせは、おしゃれな印象になるだけではなく、縦の空間を強調して開放感を高めます。また、一般的な窓よりも高い位置に配置できるため、近隣の建物の影響を受けにくく、明るい日差しをたっぷり室内に取り込めるのも大きなメリット。部屋全体が明るく、広く感じられます。
「リビング階段+吹き抜け」で家族のつながりを感じられる間取りに
リビング階段は、家族が自然と顔を合わせる機会を増やすもので、吹き抜けは、上下階をつないで空間の広がりと開放感を演出するものです。この2つを組み合わせることで、会話の機会が増えたり、お互いの気配を感じたり、家族のつながりが自然に深まっていく空間が生まれます。
【実例】人気の吹き抜けプランを紹介
実際の吹き抜けってどんなイメージ?という方のためにイシンホームが施工した吹き抜けのある住まいの中から人気のプランを紹介します。
オーソドックスな吹き抜け付きLDK

吹抜けの開放感と採光の良さを生かし、三連ロングスリット窓を設置。陽光が広がる明るく快適なリビング空間を実現しています。
リビングに吹抜け階段を設けた人気のLDK

最近人気のLDKに吹抜け階段を設置したタイプ。圧迫感の少ないスケルトン階段で家族のコミュニケーションを育みます。
開放感あふれる吹抜け高天井タイプ

ワイド幅の大型ウインドウを吹抜け上部に設置。採光性を向上して一年中陽光を招き入れるリビング空間を実現。広々とした天井空間が暮らしの伸びやかさを広げています。
まとめ
おしゃれで明るい印象を演出する吹き抜け。プランニングの際に、メリット・デメリットを踏まえた対策をしっかり考えてけば、ある程度カバーすることが可能です。
イシンホームは、吹き抜けを導入した住まいについて豊富な実績を誇ります。ご要望を踏まえた多彩な提案で、理想の吹き抜けの実現をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

