注文住宅の屋根選び。形状から活用法まで大切なポイントをチェック

家を風雨から守る地味な存在だった屋根の役割が、見直されています。太陽光発電のベースとしての役割や、断熱性能向上への利用、収納空間にゆとりを生み出す空間としての活用などなど。より多彩な視点で屋根の役割を捉え直す傾向が拡大中。そこで、最近の流れを踏まえ、屋根の形状や素材などの基本から検討する上でポイント、費用感・メンテナンスまで屋根の情報を網羅して注文住宅の屋根選びに役立つ最新情報を解説します。

●主な屋根の形態

屋根は雨風をしのぐことはもちろん、耐震や防音、断熱など、家を守るためのさまざまな役割を兼ねています。ここでは、現在屋根に用いられる代表的な5つの形状を紹介して、それぞれの特徴を紹介します。

◇切妻屋根(きりづまやね)

「戸建ての家」と言ったときに、真っ先に思い浮かぶ三角屋根の家。その典型的な屋根のイメージが切妻屋根です。シンプルな形状であることから設計が簡単で、コストも安く抑えることができます。

メリット

・構造が単純で比較的安価に施工できる

・和風・洋風どちらにでも合う

デメリット

・個性を出しづらい

・妻側が雨や直射日光の影響を受けやすい

メンテナンス性

屋根同士の継ぎ目が1カ所なので雨漏りしにくい

太陽光発電

適しているが、平側が南に向いていないと発電効率が下がる

◇寄棟屋根(よせむねやね)

4枚の屋根を重ねるような形状の屋根が寄棟屋根です。屋根の枚数が多くなるためコストが高くなりますが、切妻屋根と比べると外壁面積が減るため、耐風性が高まります。和風・洋風どちらにも合う形状です。

メリット

・雨を四方に流せる

・耐風性が高い

デメリット

・屋根裏が狭くなり通気性はあまりよくない

メンテナンス性

・棟が多くなるので雨漏りリスクがある

太陽光発電

・面積を確保しにくい可能性がある

◇陸屋根(りくやね・ろくやね)

ビルのように平らな屋根で、フラットルーフとも呼ばれます。シャープでモダンな外観や、屋上をバルコニーとして利用できる特徴があり人気上昇中です。雨や雪を流すことができず、水たまりができやすいことが難点で、防水に関しては十分なケアが必要です。

メリット

・屋上を活用できる

デメリット

・勾配が小さいので排水性が低い

・屋根裏が狭くなり、通気性はあまりよくない

メンテナンス性

・定期的な防水塗装が必要

太陽光発電

・斜めに設置するための架台が必要

◇片流れ屋根

一方向だけに傾斜がついている屋根で、シャープな印象です。アシンメトリーな外観がスタイリッシュで人気になっています。設置費用が安いメリットはありますが、雨や雪が落ちる方向が1ヶ所になるので注意が必要です。

メリット

・斜線制限に対応できる

・見た目がスタイリッシュ

デメリット

・屋根がないほうの外壁は直射日光や雨の影響を直接受けやすい

メンテナンス性

・雨や雪が片側に集中するので、雨どいに負荷がかかりやすい

太陽光発電

・搭載面積が広いため適している

◇入母屋屋根(いりもややね)

寄棟屋根の上に切妻屋根を被せたような形状です。切妻部分に「矢切」と呼ばれる壁があり、窓を取りつけることも可能です。瓦を使った日本家屋で用いられることが多く格式を感じさせます。複雑なつくりのため、雨漏りには注意が必要です。

メリット

・屋根裏の通気性がよくなる

デメリット

・構造が複雑なので材料費や施工費が高くなる

メンテナンス性

・寄棟と切妻が合わさる部分から雨漏りするリスクがある

太陽光発電

・設置しやすいが、平側が南に向いていないと発電効率が下がる


◇屋根形状による比較

屋根形状コスト耐風性断熱性雨漏り危険度太陽光パネル採光性
切妻屋根
寄棟屋根★★
陸屋根×★★★
片流れ屋根
入母屋屋根★★


◎良い ○普通 △やや劣る ★低い ★★注意 ★★★しっかり対策

◇人気の傾向

ここ10年ほどで片流れタイプの屋根の人気が急上昇。直近の調査ではついに41%でトップになりました。逆に寄棟タイプは徐々に少なくなり、令和5年ではトップ人気だった平成14年の3割以下まで採用率が低下しています。

住宅仕様実態調査報告 屋根の形状ベスト3

調査期間1位2位3位
令和5年片流れ(41%)切妻(31%)寄棟(13%)
平成29年切妻(40%)片流れ(30%)寄棟(13%)
平成24年切妻(48%)片流れ(19%)寄棟(17%)
平成19年切妻(47%)寄棟(31%)片流れ(12%)
平成14年寄棟(43%)切妻(42%)陸屋根(6%)


※令和5年の住宅金融支援機構の報告による

●屋根材の種類と特徴

同じ形状の屋根でも、屋根材の種類によって印象が大きく変わります。ここでは主な屋根材の種類と特徴を紹介します。

◇瓦屋根

粘土を高温で焼いてつくられる屋根材。古くから使われ、おなじみの屋根材です。メンテナンスの手間がかからず、耐用年数も50年間と長いのですが、重量があり、重さに耐えられるように設計する必要があります。

メリット

・耐久性が高い(半永久的)

・部分的に葺き替えできる

・断熱性や遮音性が高い

デメリット

・重量があるため耐震性が低くなる

・地震や台風で損壊しやすい

・勾配が緩やかな屋根には適さない

◇スレート屋根

セメントと繊維材料を主原料に薄い板状に成型した屋根材。手頃な価格で一般住宅での使用率が高い屋根材です。耐用年数は20~25年とされていますが、カビが発生しやすく定期的なメンテナンスが必要です。

メリット

・瓦屋根よりも軽量

・デザインが豊富

・加工しやすく屋根の形状にあわせやすい

・屋根材のなかでは比較的安価

・勾配が緩くても施工できる

デメリット

・ひび割れしやすい

・素地には耐水性がない

・定期的な塗装メンテナンスが必要

(10年程度。塗料の耐用年数による)

◇トタン屋根

薄い鉄板の表面に亜鉛メッキを施した屋根材で、継ぎ目がないため雨漏りもしにくいというメリットがありますが、亜鉛メッキが剝がれやすく耐用年数10~20年と短いことから、現在一般住宅に使用されることはほとんどありません。

メリット

・コストが安い

・雨漏りしにくい

・軽量

デメリット

・亜鉛メッキが剝がれやすい

・耐用年数が短い

・見た目がチープ

◇ガルバリウム鋼板屋根

アルミ亜鉛合金メッキ鋼板でできた屋根材で、スタイリッシュな印象で人気を集めています。着色のしやすさ、素材の軽さにも定評があります。また錆びにくく、耐用年数が30年程度と比較的長いのが特徴です。

メリット

・軽量なので家の耐震性が高くなる

・耐久性が高い

・勾配が緩い屋根にも施工できる

デメリット

・防音性が低い

・スレートよりも高価

◇ジンカリウム鋼板屋根

紫外線で劣化しない、細かな鉱物の粒が吹き付けられたガルバリウム鋼板です。耐久性が高く、30年間以上にわたって塗装メンテナンスが不要なのが特徴です。

メリット

・耐久性が高くメンテも不要

・金属製の中では雨音がしにくい

デメリット

・コストが高い

・コーティングが剝がれ落ちるリスク

●屋根を選ぶ際のポイント

素材や形もさまざまな屋根を選ぶポイントは、まず機能から。ここでは、その代表例をご紹介します。

◇耐久性

屋根は、建物を雨や風から守ることですから、長期間働きつづける耐久性が大切です。屋根がもろいと雨漏りなどのトラブルが起きたり、台風により崩落する可能性もあります。

◇防水性

日本は雨が多く、近年は特にこの傾向に拍車がかかっています。屋根の防水性はしっかり確認しておきましょう。防水機能は経年劣化することが多く、メンテナンスの時期についてもチェックしておきましょう。

◇遮熱・断熱性

光を遮り暑さから人や家財を守るのも屋根の役割です。屋根の遮熱性が高ければ、夏場でも室温の上昇を抑えられ、エアコンの電気代が節約できます。また、紫外線の遮断効果も期待できます。

◇防音性

外部の音を遮断する屋根の防音性にも注目です。車や電車、飛行機の音、そして雨が屋根に当たることによって発生する音が抑えられるかも、屋根を選ぶ際のポイントとなります。

◇耐火性

万が一、自宅で火事が起きてしまった場合でも耐火性が高い屋根なら、火が回って家が燃えるまでの時間を稼ぐことできます。近隣火災の延焼を防ぐうえでも有効です。

◇耐震性

地震大国日本では、屋根の地震対策も必須です。屋根の素材、重さなどに注目し、強い地震が起きでも耐えることができる耐震性の高い屋根がオススメです。

◇価格

質の高い屋根の設置には高額な費用が発生することがあります。屋根選びは価格にも注目し、全体の住宅予算の中でバランスが取れるものを選びましょう。どの性能を重視し、どの部分を捨てるのかを決断することも重要です。

◇デザイン

意匠的な視点からの屋根選びは、住宅全体のデザインとの調和を考えながら、住まいの外観を引き立てる屋根を設置するようにしてください。

◇メンテナンス性

屋根は住宅の中でも特に劣化が激しい部分の1つです。メンテナンスを一切せず、長年にわたって性能を維持することは不可能です。屋根の素材によってメンテナンスが必要な時期は異なりますから、メンテナンス時期や費用などにもチェックを怠らないでください。

●屋根の新たな役割

屋根は家を守るという基本的な役割に加え、最近は太陽光パネルの設置や断熱機能をプラスしたり、屋根形状を内部空間に生かし収納空間など間取りの可能性を広げることに活用されるなど新たな役割が注目されています。

・太陽光パネル

近年の電気代の高騰や環境意識から住宅での太陽光発電が脚光を浴びています。太陽光発電に必要なソーラパネルは屋根に設置するのが一般的。その際は、太陽光を効率良く受けられる南向きの勾配屋根がオススメです。フラットルーフに載せる場合は、ソーラーパネルに勾配を付けることで発電効率は高められます。

・屋根断熱

夏、外気の暑さは屋根から11%ほど入り込むと言われています。ですから家の断熱対策は屋根がキーポイントになります。「屋根断熱」は、一般的に断熱材を壁の内側と外側に貼って、外部からの熱をカットします。Wの断熱で熱さに強いメリットがありますが、コストが高くなりがちです。省エネ意識が高まり住宅性能の向上に注目が集まる現在、天井の断熱はますます注目を集める屋根の新たな役割と言えます。

・収納空間

屋根と天井の間にある空間は「小屋裏」と呼ばれ、近頃注目の存在です。通常は天井板で塞がれているのですが、このスペースを活用して収納空間を設けるのが人気です。ただし、小屋裏は空気がこもりやすいため換気扇や空調設備を設けることが大切です。雨季などに湿気がこもるとカビの発生につながるため、適切な温度・湿度管理をしましょう

●地域特性で変わる最適な屋根形状

縦に長い日本列島は北と南では全く違う気候の特性があります。当然、そこで求められる屋根の役割も大きく違ってきます。ここでは地域によって異なる屋根のニーズを簡単に紹介します。

・雪が多い地域

雪が多い地域では、雪の重みで家に負担をかけないよう、雪がスムーズに流れるように勾配の大きな切妻屋根や片流れ屋根などがオススメです。屋根材もガルバリウム鋼板などすべりの良い金属製が適しています。ただし、住宅が密集しているエリアでは隣家に雪がすべり落ちないように緩衝地帯を設けたり、雪止めのネットを使用しましょう。

・夏の暑さが厳しい地域

夏の暑さが厳しい地域では、屋根裏の空間を広く確保して暑さを和らげるため、勾配の大きな屋根がオススメです。高温多湿になりやすい屋根裏にも換気口を設けやすく、家の傷みを防ぐ効果もあります。また、暑さ対策には断熱効果が高い日本瓦や熱伝導率が低いスレート瓦も効果的です。

・台風が多い地域 

九州や四国・沖縄など台風が多く風の影響を受けやすい地域では、勾配がゆるくシンプルな形状の屋根が適しています。屋根材は、強風でも飛びにくいガルバリウム鋼板やアスファルトシングルがオススメです。

●気になる費用の目安

屋根の費用は大きさやタイプごとに変わり一律での比較は難しいもの。ただし、費用の多くを占める屋根素材ごとの単価の目安はある程度決まっています。そこで代表的な屋根素材ごとのコストを比較表でまとめておきます。

スレートガルバリウムジンカリウム
施工費の目安9,000~
12,000円/㎡
6,000円/㎡8,000~
10,000円/㎡
9,000~
13,000円/㎡
耐用年数50年以上30年20~30年30年
重さ38~45kg/㎡21 kg/㎡4~7 kg/㎡7 kg/㎡
メンテナンス10年に1回点検
ほぼノーメンテ
周辺部材に劣化
5年に1回点検
再塗装が必要
周辺部材に劣化
5~10年に
1回点検
再塗装が必要
周辺部材に劣化
5~10年に
1回点検
30年で大改修が必要
周辺部材に劣化


※トタン屋根は現在ほとんど採用されていないので割愛

●FAQ

Q1 屋根の寿命はどのくらい?

A1. 屋根の素材によって違いはありますが、20年~30年が目安と言われています。素材の違いによって耐久性やメンテナンスの時期が大きく変わる場合がありますから選ぶ際にはその点からもしっかり検討してください。

屋根の改修は雨漏りなどが起こる前に工事をした方がトラブルを未然に防げ、大がかりな工事が必要にならないため、経済的にもお得です。まずは定期的に点検をすることが大切です。

Q2 屋根点検のタイミングを教えてください。

A2.屋根材によりますが5年~10年に一度は点検が必要です。また大雨、台風、地震後などは不具合が起きている可能性があるため、点検を行うことをお勧めいたします。

Q3 屋根のメンテや工事中も家で生活できますか?

A3. 屋根工事中でも、いつも通りの生活が可能です。足場の設置や養生などが必要な場合は多少生活に不便を感じるかもしれません。

改修工事を進める場合は、足場の設置や養生などの内容、工事スケジュールなどを事前に確認して、対応を考えておくとスムーズにするめることができます。

●まとめ

屋根は形状や種類が多く、選定に迷う方が多くいらっしゃいます。イシンホームは長年の注文住宅づくりで培った経験とノウハウで、あらゆる屋根に精通しています。注文住宅をお考えの方で屋根づくりの疑問やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせくださいね。皆さまのご希望に応える屋根づくりをサポートいたします。

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本社(総合戦略本部)

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