
最近、注文住宅の間取りを検討する際に、人気を集めているのが「2階リビング」です。都市部に多い30坪前後の住宅密集地でも採光や風通しを確保しやすく、道路や隣家からの視線も避けられるというメリットがあります。しかし一方で、「階段移動が大変ではないか」「老後に後悔しないか」という不安の声も少なくありません。
そこで今回は、2階リビングのメリットとデメリットを整理し、導入を判断するための基準を紹介。老後に階段移動の負担を軽減できる“1階完結型の間取り”や、30坪の土地でも実現できる“2階リビング+1階風呂の間取り”の実例など、後悔しない家づくりを目指す方に役立つヒントをお届けします。
目次
2階リビングが選ばれる理由|都市部や日当たりが悪い土地に強い
「2階リビング」が選ばれる主な理由を紹介します。
隣家や道路の影響を避けやすく、明るさと風通しを確保できる
リビングは、家の中でも特に家族が過ごす時間の長い場所なので、騒音や他人の気配を近くに感じてしまうと、落ち着いて生活できません。そのため、1階にリビングを設ける場合は、隣家の玄関や道路からなるべく離すなど、位置関係に注意する必要があります。2階であれば自然に距離を空けることが可能です。
また、周囲に建物や植木、物置、車といった物が密集する1階より、2階の方が風通しを確保しやすいというメリットもあります。
道路や歩行者からの視線を防ぎやすい
1階リビングの窓が道路に面していると、周囲からの視線が気になりやすいです。できれば窓の位置を変えたいところですが、土地の形状や日当たり、隣家との兼ね合いによって、どうしても道路側になってしまうケースがあります。しかし、「2階リビング」の間取りにすれば、高さによって道路などからの視線を防げるので、プライバシーを守れます。
勾配天井や大きな窓で開放感を演出できる

1階よりも外からの視線を気にせず大きな窓を設置できるので、開放的なリビングを造る手法としても「2階リビング」は有効です。さらに、広めのベランダを併設すれば、より広い空間を演出できます。
また、2階建ての際は、2階の天井を平面にする必要はないため、勾配天井にして屋根裏の空間まで最大限に利用することも可能です。勾配天井とは、屋根の形状に合わせて勾配を付けた天井のこと。屋根裏のデッドスペースとなる位置まで天井高を確保できるので、同じ床面積でも開放感を感じられます。
2階リビングのメリットとデメリット
2階リビングには、メリットだけでなくデメリットも存在します。必ず両方を把握し、比較検討するようにしましょう。
メリット
まずは、代表的なメリットを3つ紹介します。
日当たり良好、風通しがいい
2階は1階よりも周囲の建物や植木などの影響を受けにくく、日光を取り込みやすいという魅力があります。南側に大きな窓を設ければ、日中は常に自然の光が差し込む明るいリビングを造ることができます。また、周りの障害物も1階より少ないため、風通しも確保しやすいです。
道路からの視線を避けられる
前述した通り、2階は人の目線より高い位置にあるため、通行人や近隣住民からの視線を避けられます。また、住宅密集地では「隣家のリビングと向かい合ってしまう」という事態を避ける方法としても有効です。下からの視線が気になる場合は、窓の外にバルコニーを設けると良いでしょう。
ただし、近くにマンションのような高い建物がある場合や、隣家との距離が近すぎる場合もあるので、必ず事前に周辺環境を確認しましょう。
開放感のある空間を確保しやすい
2階建て住宅の場合、1階の天井は2階の床にあたります。もし1階を吹き抜けにしようとすれば、その分2階の延べ床面積が減ってしまいます。その点、2階を勾配天井にすれば、延べ床面積が減ることなく上下に広がりのある空間を作ることが可能です。
また、2階リビングにすると1階より眺望が良くなり、開放感が得られるというメリットもあります。特に前が公園のような開けたスペースであれば、窓から空や緑を眺めることができ、リラックスして過ごせます。
デメリット
続いてデメリットを紹介します。
階段移動が必須(老後の負担)

2階にリビングを配置すると、当然ながら必ず階段を使って行き来しなくてはいけません。そのため、買い物後など、重い荷物を持ち運ぶ際は負担に感じる可能性があります。
また、若いうちは気にならなくても、年を重ねると昇降が辛くなってくるかもしれません。リビングは使用頻度が高い場所なので、何気ない移動の負担も蓄積しやすいでしょう。
老後も快適に暮らし続けるためには、傾斜の緩やかな階段設計や手すりの設置、将来昇降機が取り付けられるスペースの確保など、バリアフリーを意識した間取りにすることが大切です。
夏は暑い可能性がある
暖かい空気は上昇する性質があり、上の階ほど直射日光も入りやすくなります。そのため、1階リビングより2階リビングの方が、室温も高くなる傾向があります。したがって、夏場は冷房代が高くなったり、常温で保存している食材が傷みやすくなったりするリスクがあります。
来客時に2階へ案内する不便さ
ちょっとした来客や宅配便が届いた時など、玄関で対応が必要な場面にはいちいち階段移動が発生します。料理や育児で忙しい時に、2階を離れて玄関へ向かうのは不便だと感じる人も少なくないようです。
口頭でのやり取りについては、ビデオ通話付きインターホンを設置することで解決します。また、宅配ボックスを設置して置き配を活用すれば、都度玄関まで出向く必要がなくなります。
2階リビングのポイント~迷ったら『立地・家族・動線』で判断~
2階リビングの間取りは、主に3つのポイントを踏まえて検討しましょう。
日当たりや人目は問題ないか
メリット部分で説明した通り、都市部のような住宅密集地や日当たりが悪い土地で、なるべく静かで明るいリビングを造りたいなら、2階リビングが非常に有効です。ただし、周囲に高い建物があると、日当たりや人目が気になるケースもあるので、立地の確認は欠かせません。
また、2階からの眺望の良さも重視する場合は、住宅密集地ではなく広い土地や高台にある土地が必要になります。
家族のライフステージに合うか
2階リビングは、周囲からの視線を避け、日当たりやデザイン性を重視した開放的な空間づくりを望む方に向いています。一方で、小さなお子さんや高齢者がいる世帯にとっては、階段移動が負担になるリスクも高いと考えられます。
そのため、まずは現在の家族構成や理想のライフスタイルに合うかどうかを慎重に検討することが大切です。
生活動線に困らないか
生活の中心となるリビングを2階に配置することによって、家事動線や生活動線が複雑になってしまうと、移動時間が増えて生活にストレスを抱えてしまいます。家事の手間などが倍増してしまうので、特に水回りや玄関のような家事に関わる場所までの動線はなるべく短くすることが大切です。
老後に備える“1階完結”の間取りとは?

2階建て住宅を購入した方が、老後は1階しか使わなくなるというケースは珍しくありません。2階にリビングを造る場合も、そのような生活変化を視野に入れた“1階完結”の間取りにすることは可能です。
生活の基本(寝る・入浴・トイレ・身支度)を1階で完結する間取り
老後に1階のみで生活を送るためには、必要な機能を1階に集めておかなければいけません。具体的には、トイレやバスルームといった水回りのほか、寝室として使える部屋が必要です。
将来的に簡易キッチンを取り入れてもよい
2階リビングの間取りでは、キッチンも2階に設置されることが多いです。ただ、それだと1階では調理ができないため、老後はリフォームをしてミニキッチンを設けるのがおすすめ。まるでワンルームマンションのようなコンパクトな暮らしがかないます。
ホームエレベーターや階段昇降機の導入
“1階完結”とは異なりますが、2階リビングを老後も負担なく使い続けるために、階段昇降機やホームエレベーターのような昇降設備を導入する方法もあります。
階段昇降機は、既存の階段に設置する昇降リフトのこと。人を乗せた器具が階段の壁に沿って移動する仕組みで、車椅子ごと乗せられるタイプもあります。ただし、設置するためには階段に十分な幅が必要です。
一方、ホームエレベーターは、その名の通り住宅用のエレベーターのことです。リフォームで後付けするには大掛かりな工事が必要になるので、新築の設計段階から設置の計画をしておく方が良いでしょう。
30坪代の土地でも実現可能!2階リビングの間取り実例
当社が実際に手掛けた2階リビングの間取りを紹介します。
ゆったりくつろげる開放的なリビング
大きな窓から優しい光が差し込む開放的な空間。リビングを2階に設けたことで、外からの視線は遮りながら、心地良い風と光を最大限に取り込んでいます。
将来的にホームエレベーターを導入できる設計
将来を見据えて収納部分にホームエレベーターを導入する計画で設計。年齢を重ねて階段の昇降が辛くなっても、快適にゆったりと暮らせる家になっています。
後悔しないために押さえたい注意点
2階リビングの間取りで失敗しないために、押さえておきたい主な注意点を紹介します。
断熱・日射遮蔽・換気などによる室温対策は必須
2階は1階よりも日差しの影響を受けやすく、暖かい空気が集まりやすいので、夏場は暑くなりやすい傾向があります。なるべく室温の上昇を抑えて冷房費を節約するためには、家の断熱性を上げることが大切。屋根や壁の断熱材はもちろん、外気の影響を受けやすい窓も断熱性能の高いものを選びましょう。
洗濯や買い物の動線を想定しよう

家事効率の高い間取りにするためには、ランドリールームやバスルーム、衣類の収納スペースなど、使用頻度の高い場所を近くにまとめるのが理想的。2階にリビング・キッチン、1階にバスルームなど、階が分かれてしまう場合もなるべく動線を短く設計することが大切です。また、買い物後の荷物の移動を考えると、玄関からリビングやキッチンまでの動線も短い方が良いでしょう。
階段の位置や幅、廊下幅、出入口はバリアフリー視点で
老後に快適な生活を送るにあたり、手すりやスロープ、昇降設備などを導入する必要性が出てくる可能性が考えられます。その際に「スペースが足りなくて設置できない」という問題が起きないように、階段や廊下、出入口などの幅には余裕を持たせておくことが大切です。車椅子が通ることのできる幅になっているかどうかも考慮しておきましょう。
Q&A
Q.洗濯や物干し動線は2階リビングだと不便にならない?
ランドリールームやバスルーム、ベランダを2階に設ければ、料理から洗濯の取り込みまでの全てが同じフロアで完結します。動線は短くまとめられるので、洗濯における一連の作業で不便を感じる心配はないでしょう。
また、老後を見据えて水回りを1階に集約したい場合も、移動が楽になるように動線を工夫することは可能です。
来客対応に不便さを感じない間取りは?
玄関の近くに階段を設けて、くつろいでいたり料理を作っていたりしてもすぐに動けるよう、リビングやキッチンまでの動線を短く設計した間取りがおすすめです。階段の傾斜を緩やかにしたり、踊り場を設けたりすると、昇降の負担を減らせます。
子育て中の家族にとって、2階リビングのメリット・デメリットは?
日当たりが良く開放感のあるリビングで子育てができるほか、外からの視線が届きにくいのでプライバシーを守れるといったメリットがあります。一方、家族の帰宅に気付きにくい、子どもが小さい場合は階段の昇降に危険や負担が考えられるなどのデメリットもあります。また、子ども部屋を1階に配置する場合は、防犯面で不安を感じることもあるようです。
まとめ
周囲からの視線を避けたい方、明るく開放的な空間にしたい方、デザイン性にこだわりたい方にとって、2階リビングは有効な選択肢といえます。ただし、まずは現在の家族構成や将来的に目指すライフスタイルを良く考えてから導入を検討することが大切です。
迷っている方は、今回ご紹介した『立地・家族・動線』というポイントを参考にしてください。もし、不安や疑問が出てきた場合は、ぜひ気軽に当社へご相談ください。

