
注文住宅を考える際、「せっかくなら明るく開放的な家にしたい」と思って窓を大きくしたのに「夏は暑くて冬は寒い」「外から丸見えだった」などと後悔する人は少なくありません。一方で、断熱を重視して窓を小さく減らした結果、「部屋が暗くて閉塞感がある」と不満を感じるケースもあります。
実は、快適さを実現するのに大切なのは“どこに・どんな光を・どう取り入れるか”という設計を考えることです。今回は、窓に関する後悔を防ぐために考えるべき、明るさ・断熱・デザインの全てで満足するためのポイントを解説。「窓の数」ではなく「窓の使い方」で、暮らしの心地よさをデザインするヒントをお届けします。
目次
窓は「数や大きさ」ではなく「使い方や設計」を重視するべき!
窓は「数や大きさ」ではなく「使い方や設計」を重視するべきというのは、窓が単に採光や通風のためだけにあるのではなく、住む人の暮らしや快適性を高めるための重要な要素であるという考え方によります。
「窓は多いほど良い」「大きな窓をつければ、明るい家になる」と思って、とにかく大きな開口を求める人は少なくありません。しかしその結果、夏は日差しが強すぎる、冬は冷気が入って寒いという後悔につながるケースも見受けられます。
数や大きさといった表面的なことにとらわれず、窓の“配置・高さ・向き・素材”を考えることで、より快適で質の高い暮らしが実現します。窓は採光や風通し、デザイン性はもちろん、断熱性や防犯性にも大きく関わる「設計要素」です。つまり、「窓=壁の穴」ではなく、「光と視線のコントロール装置」なのです。
窓でよくある後悔例とその対策方法とは?

注文住宅を建てる際、間取りや外観に比べて検討を後回しにされがちな「窓の配置と種類」。しかし、窓の選び方ひとつで、家全体の明るさや風通し、プライバシーの確保、見た目の印象は大きく変わります。ただ明るくしたり、断熱のために窓を減らしたりするだけではありません。
ここでは、窓の配置でよくある3つの失敗パターンについてその対策を紹介します。
・南面の大窓が夏は暑すぎて冬は寒い
「開放感が欲しい」と思って南側に大きな窓をつけたものの、夏は暑く冬は寒くて、後悔してしまうケースは少なくありません。
太陽は、夏だと高い位置からですが、冬だと低い位置から差し込みます。軒や庇は、その違いを利用して、日差しをコントロールする設備です。深い軒や庇の設置によって、夏は日差しをしっかりと遮り、室温の上昇を防いでくれますし、冬は暖かい日差しを室内の奥まで取り込めます。
また、複層ガラスや樹脂サッシを使うことで、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるようになります。窓のサイズは、断熱性能とのバランスを考えて決めましょう。
・テレビの位置優先で窓が小さく暗い
大きな窓や複数の開口部を設けることで、明るさや開放感は得られますが、壁面が減って家具配置が難しくなるため注意が必要です。一方、テレビやソファの置き場所を優先して考えると、窓が小さくなり、部屋全体が暗くなってしまうケースがあります。
対策としては、天窓や高窓などで開放感や採光性を高めつつ、家具の置き場を確保する方法があります。
・道路側の視線が気になり、カーテンを閉めっぱなしにしなければならない
道路側や隣家からの視線に配慮しないまま窓を設置してしまったことで、常にカーテンを閉めっぱなしにしなければならないケースも。そのようなときに活躍するのが、スリット窓や高窓。これらの窓は外部からの視線を遮ってプライバシーを守りながら、安定した光を室内に届けてくれます。さらに、デザイン性の高い外観を演出することもできます。
快適な窓設計をかなえる3つの考え方

窓は建物の構造に大きく関わる部分であるため、建築後に「大きさを変えたい」「別の位置に設置したい」と思っても簡単には変更できません。だからこそ、設計段階で考えておくことが大切です。
・断熱と開放感を両立する窓設計にする
窓の断熱性能を高めれば、視覚的な広がりや明るさを十分確保した開放的で快適な空間をつくることは可能です。
“窓の数”ではなく“性能の組み合わせ”で検討を
近年の注文住宅では「高気密・高断熱」という考え方が標準的。その中で、断熱性能(UA値)を高めるために、窓を減らしてしまうと発生するデメリットもあります。例えば、窓を減らすことにより、冬の暖かい日差しが室内に入りにくく暖房に頼る期間も長くなりやすいです。また、窓からの景観を味わう機会が減ってしまうと、家族が日々を快適に楽しく過ごすという、家づくりの大切な目的を果たせにくくなるかもしれません。
そこで大切になるのは、“窓の数”ではなく“性能の組み合わせ”。イシンホームであれば、「Low-Eトリプルガラス(複層ガラスの間に熱の伝わりを抑えるLow-E膜をコーティングし、熱を伝えにくい性質のアルゴンガスを注入した断熱性の高いガラス)と樹脂サッシを組み合わせる」「熱を逃がさない配置設計にする」「軒や庇、植栽などで直射日光をコントロールする」といった工夫を組み合わせることで、快適な暮らしと開放感の両立を可能にしています。
・方角別のポイント
方角ごとに、光の入り方は違います。方角ごとの特性を簡単にまとめます。
東:朝のやわらかな光。寝室・ダイニングに好相性です。
南:年間を通じて採光が安定。夏は庇/外付け遮蔽で調整する必要があります。
西:夏の西日対策として、遮熱ガラス・壁量確保が有効です。
北:基本的に直射が少なく終日安定した明るさ。書斎などに適しています。
・“光の量”ではなく“光の質”で設計する
大切なのは、“光の量”ではなく“光の質”。窓の大きさではなく、窓の位置や向き、高さに関して設計のバランスを考えましょう。
間接光でやさしく照らす「高窓・地窓・スリット窓」
壁の高い位置に設置される高窓、床面に近い低い位置に設けられる地窓、縦または横に長く幅も狭い窓で、機能性とデザイン性を両立するスリット窓は、光の方向や量を調整し、柔らかな間接光を生み出すために効果的な手法です。外からの視線を遮ってプライバシーを守りながら、空間に広がりや奥行きを演出することができます。特に細いスリット窓は防犯性も高く、近年人気が高まっています。
北向きの光を生かす「安定採光」
特定の時間に集中して光が差し込む他の向きとは違って、日没まで強すぎないやわらかな明るさを確保し、一日を通して安定した明るさを長時間得られることが北向きの窓の最大のメリットです。北側の窓は基本的に直射日光が差し込みにくいため、大きな窓を設けても快適に過ごすことができます。ただし、適切な断熱性能を採用することが前提となります。
昼と夜の心地よさをつなぐ「照明×窓の一体設計」
昼間の自然光と夜間の人工照明を効果的に組み合わせることで、空間の快適性、美しさ、省エネルギー性を高めることができます。窓から入る自然光を最大限に活用し、時間帯や天候、用途に応じて、天井や壁の間接照明などを補完するよう連動させれば上品な空間を演出できるでしょう。
・道路側を閉じても明るい家にする
明るさを優先して道路側に大きな窓を設けると、通行人の視線が気になってしまい、「年中カーテンを閉めっぱなしの家」になってしまうことも。道路側に窓を設けなくても、採光計画をしっかり行えば、家の中の明るさを保つことは可能です。
中庭・光庭・吹き抜けにより、上から光を取り入れる
明るい家にするためには、光の通り道をつくることが重要です。具体的には高窓や天窓など、光を上から取り込む工夫が有効です。プライバシーを確保しつつ、日当たりに左右されにくい明るい住まいを実現することができます。
スペースに余裕がある場合は、中庭や光庭をつくる方法がおすすめです。窓からの採光が難しい場合でも、1階、2階の窓を中庭に向けて配置することで、採光効率を高められます。また、1階の一部を吹き抜けにし、その真上の天井に高窓や天窓を設置すれば、窓の採光だけに頼ることなく、家を明るくすることができます。
隣家の壁を“反射板”として活用する
隣家の壁の反射光をうまく利用して室内を明るくするという方法もあります。隣家の壁に光が当たる方角を設計段階で把握し、その光を反射して取り込めるように窓の向きや角度を調整しましょう。隣家との距離や方角など、専門家やハウスメーカーと相談しながら、最適な設計を検討してください。
実例紹介:窓の配置で快適さを変えた家

・ケース1:ゆったり安らげる開放感のある平屋
リビングには床から天井までの大きな掃き出し窓を採用し、とてもスタイリッシュな印象です。窓を開けると濡れ縁があり、目の前に広がるのは和風の庭。天気のいい日にはレースのカーテンを開け、開放感を味わったりするのがご夫婦の安らぎのひとときになっているそうです。プライバシーにもしっかり配慮していて、ゆったりとした感じがいいですね。
・ケース2:立体的な間取りが魅力!蔵のある2階リビングの家
限られたスペースをうまく使った立体的な間取りの二世帯住宅。何度も相談を重ねて完成した面白い家にご夫妻とも大満足しているといいます。2階に設けたリビングは天井が高く開放的。6枚の横すべり出し窓とダウンライトの組み合わせが洗練された雰囲気を演出しています。晴れた日は窓からの景色がすごくきれいでとても気に入っているそうです。
窓で後悔しないための3ステップ

窓の配置は、暮らしやすさやプライバシー、見た目の印象を大きく左右する重要な要素です。ここからは窓選びで後悔しないためのコツを紹介します。
1. 家族で過ごすことが多い時間帯と場所を可視化する
まずは、家族が“どこで何をしている時間が長いか”を整理。さらに家でどのように過ごしたいかを家族で話し合い、リビングや子ども部屋、寝室などで窓に求める役割を明確にしましょう。
2.「どんな光が心地よいか」を話し合う
次に、眩しい、やわらかいなど、“どんな光が心地いいか”について話し合います。心地いい光を得るためには、窓の方角や大きさ、位置、種類を工夫して、時間帯や用途に合った光を取り入れることが重要です。
3.“性能とデザインの両立策”を住宅会社に相談する
複層ガラスや断熱性の高いサッシを使った窓を選ぶことで、夏は涼しく冬は暖かい空気を保ち、冷暖房にかかるエネルギーを節約することも可能です。同時に、窓のデザイン性を考えることも大切です。“性能とデザインの両立策”を住宅会社に相談しましょう。
よくある質問
・窓が多いと防犯が心配です。どう対策すればいいですか?
セキュリティ面では、鍵付きの窓や防犯合わせガラスの選択が欠かせません。あわせて、鍵の位置にも工夫が必要です。FIX窓やスリット窓など侵入できない窓を選ぶことも有効でしょう。
また、掃き出し窓や腰高窓を、人目の届きにくい裏側や道路から死角になる位置に設置すると、侵入リスクが高まります。
・窓の設計はいつ決めるのがいいですか?
窓は建物の構造に大きく関わる部分のため、設計段階でしっかりと考えておくことが大切です。間取りが固まる前、動線設計と同時期に検討できることが理想的といえます。
・トイレや浴室に窓は必要ですか?
以前はトイレや浴室に窓を設けるのが一般的だったことから、「窓がないと湿気やニオイがこもるのでは?」と心配する人が多いかもしれません。ただ実際には、住宅の換気システムの性能は大きく進化していて、換気扇と調湿壁材があれば湿気やニオイをしっかりと排出可能。“窓なし”でも快適に過ごすことができます。
まとめ
窓は「住まいと外の環境をどうつなぐか」を決める、最も大切な設計要素です。「多ければ明るい」「少なければ暖かい」といった単純なものではありません。大切なのは、“光・風・視線・熱”の流れをどのように設計するかを考えること。つまり、窓の数や大きさよりも「使い方」こそが快適な住まいをつくる鍵です。庇や断熱サッシで熱を調整し、高窓やスリット窓で光を操るなど、さまざまな工夫によって、性能も開放感もどちらもあきらめない家づくりができます。
注文住宅で後悔しないためにも、「窓の数」ではなく「暮らしに合った光の取り入れ方」を考えてみてはいかがでしょうか。イシンホームでは窓に関するご相談も承っていますので、お気軽にお伝えください。

