マイホームを建てる際に「庭はいらないので敷地いっぱいに家を建てたい」「狭い土地でも3階建てにすれば良い」なんて考えている人はいませんか?実は、住宅は建てる場所によって面積や高さが規制されており、たとえ自分が購入した土地内でも自由に建てられるわけではありません。住宅の規模を考えるうえで、抑えておきたい代表的な規制が「建ぺい率」と「容積率」。せっかくのマイホーム、思い描いたとおりに建てたいですよね。今回の記事をしっかりと理解すると、それが実現できますので、ぜひ読んでみてください。
●建ぺい率・容積率とは
住宅を建てるにあたり、法律をはじめとしたさまざまな規制によって、土地の広さに対して建造できる建築物の規模が制限されています。その代表的なものが、建ぺい率と容積率という敷地面積に対する建物の面積の割合です。この建ぺい率と容積率は、住宅を建てる土地の種類ごとに上限が定められており、その範囲内におさまるように設計しなければならないのです。
建ぺい率
住宅を建てる土地の面積である敷地面積に対する建物を真上から見たときの水平投影面積を指す建築面積の割合のこと。つまり、敷地に対して建てられる建物の広さを制限する基準で、以下の計算式で求められます。
【計算式】建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100
容積率
敷地面積に対する各階の床面積の合計である延べ床面積の割合のこと。敷地に対して何階建ての住宅を建てられるのかを定めるための基準で、以下の計算式で求められます。
【計算式】容積率(%)=延べ床面積÷敷地面積×100
建ぺい率・容積率が定められている理由は?
建ぺい率は、建物の広さを制限することで建物同士が接近しすぎないように設けられています。隣同士の建物に一定の距離が空くと、災害時に建物が延焼、倒壊した場合に、被害が広がるリスクを減らせます。また、建物の間隔を開けることで日当たりや、景観がよくなるというメリットもあります。
一方、容積率は立体的に建物の広さを制限することで、人口の密集を防ぐ役割があります。規制がなければ、高層マンションなども自由に建てられることになり、特定のエリアに人口が集中してしまう可能性があるので、そうした一極集中を防ぐことを目的としています。
●用途地域ごとに定められている建ぺい率と容積率
自分がどの位の建ぺい率・容積率の家を建てられるのかは、家を建てる場所によって変わってきます。というのも、建ぺい率と容積率の上限は、都市計画法によって定められた「用途地域」によって違うのです。用途地域とは、その地域に建築できる建物の種類や用途の制限を定めたもので、具体的には、住居系8、商業系2、工業系3の全13種類に分類されます。今回は、住居系8種の建ぺい率・容積率を紹介します。
用途地域ごとの建ぺい率・容積率の上限
・第一種低層住居専用地域…小規模な住宅や小中学校などが建築可能な地域
・第二種低層住居専用地域…第一種低層住居専用地域に加え、コンビニなど小規模な店舗が建築可能な地域
・田園住居地域…農業の利用の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域
建ぺい率:30、40、50、60%/容積率:50、60、80、100、150、200%
・第一種中高層住居専用地域…住宅はもちろん、高校や大学、中規模の店舗などが建築可能な地域
・第二種中高層住居専用地域…第一種中高層住居専用地域に加え、中規模のオフィスビルや1500平米までの店舗も建築可能な地域
建ぺい率:30、40、50、60%/容積率:100、150、200、300、400、500%
・第一種住居地域…建築可能な店舗に制限がある地域
・第二種住居地域…第一種住居地域に加えて、パチンコ店やカラオケ店は建築可能な地域
・準住居地域…道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域
建ぺい率:50、60、80%/容積率:100、150、200、300、400、500%
※建ぺい率・容積率の組み合わせは、土地によって異なります。
●具体的な数値から、どのような住まいが建てられるのかを紹介
続いて、具体的な数値をもとに、建てられる家の広さをシミュレーションしてみます。
【計算式】
建築面積の上限=敷地面積×建ぺい率
延べ床面積の上限=敷地面積×容積率
一般的な住宅地の場合(敷地面積100㎡、建ぺい率50%、容積率100%)
低層住宅地では、建ぺい率50%、容積率100%というケースがよくみられます。敷地面積を100㎡と仮定すると、計算結果は次の通りです。
建築面積の上限:100㎡(敷地面積)×50%(建ぺい率)=50㎡
延べ床面積の上限:100㎡(敷地面積)×100%(容積率)=100㎡
戸建ての面積の平均は約100㎡(30坪)ですので 、一般的な広さの敷地でこの建ぺい率・容積率であれば、2階建ての住宅は十分建てられます。
容積率が低い土地の場合(敷地面積100㎡、建ぺい率50%、容積率80%)
同じ広さの敷地面積・建ぺい率でも、容積率が低くなると、居住空間である延べ床面積に大きく影響します。
建築面積の上限:100㎡(敷地面積)×40%(建ぺい率)=40㎡
延べ床面積の上限:100㎡(敷地面積)×80%(容積率)=80㎡
この場合、100㎡ほどの敷地では2階建てにできなかったり、2階が狭い家になってしまったりする可能性も考えられます。
高級住宅地の場合(敷地面積200㎡、建ぺい率30%、容積率80%)
高級住宅地では、建ぺい率が30%ほどというケースも少なくありません。
建築面積の上限:200㎡(敷地面積)×30%(建ぺい率)=60㎡
延べ床面積の上限:200㎡(敷地面積)×80%(容積率)=160㎡
このような土地に十分な広さの家を建てようとすると、広い土地が必要になります。
●建ぺい率や容積率が緩和されることはある?
住みたい場所に希望する広さの家を建てられない場合、諦めてしまうのはまだ早いかもしれません。建ぺい率と容積率の上限は、緩和されるケースもあります。
建ぺい率の緩和措置
建ぺい率は、次に紹介する2種類のうち、いずれかに該当すれば、上限が10%上乗せされます。条件を両方満たす場合は、上限は20%上乗せされます。
・2方を道路に囲まれた『角地』に家を建てる場合
道路の幅や角度など、対象となるための必要条件は自治体によって異なります。
・『防火地域・準防火地域』で『耐火建築物・準耐火建築物』を建てる場合
耐火建築物とは、建築基準法で定められた、耐火性能を有する建築物のこと。建物が密集している地域や幹線道路沿いエリアが多い傾向があります。
容積率を緩和する方法
容積率を計算する際、玄関をはじめ、ベランダやバルコニー、ロフト、地下室、ビルトインガレージなどは、一部またはすべてが延べ床面積に含まれないルールになっており、その対象となる部分は計算から除外されます。容積率の範囲内でなるべく広い家を建てたい場合は、そうした構造を取り入れることも有効です。
●容積率を守りつつ、広い家を建てるコツを紹介
前述の計算式でも分かるように、容積率は家の広さに大きく影響します。しかし、容積率を守りつつ、より広くて快適な家を造るコツもあるので、紹介します。
地下室を造る
地下室とは、地上1.0mの高さより低い部屋のことで、床面積の1/3までが容積率の計算から除外される緩和措置の対象です。一般的な部屋よりは光が入りにくい傾向がありますが、書斎や趣味部屋など、居住スペースとして十分に活用できるのでおすすめです。
ベランダ・バルコニーを造る
ベランダやバルコニーは、建物の外壁から1m未満であれば、容積率の計算から除外されます。洗濯物や布団を干したり、家庭菜園を楽しんだりと、さまざまな用途で使えるでしょう。また、リビングの先にバルコニーを造ると、空間を広く感じさせる効果も期待できますよ。
ロフトを造る
ロフトや屋根裏など、天井までの高さが1,400mm以下の空間は、容積率の計算から除外されます。天井が低いので収納スペースとして考えられがちですが、設計次第でキッズスペースや趣味部屋など、生活空間としても活用できます。
吹き抜けを作る
吹き抜けもロフトと同様に、容積率の計算から除外されます。吹き抜けを造ると、開放感が生まれ採光を得ることもできるため、心地よさやデザイン性を重視したい方には特におすすめです。
●他にも注意すべき建築制限を紹介
最後に、今回ご紹介した建ぺい率・容積率以外で、注意して欲しい建築制限を紹介します。
斜線制限
隣接する建物や道路の採光や通風を確保するため、建築基準法によって定められた建物の高さを制限する規定です。「隣地斜線制限」「北側斜線制限」「道路斜線制限」の3種類があり、それぞれ対象となる用途地域が異なります。
絶対高さの制限
都市計画で定められた建物の高さの制限のことで、10mまたは12mのいずれかが設定されています。対象となるのは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域の土地で、該当すると容積率にかかわらずこれより高い建物は建てられません。
高度地区の制限
高度地区とは、都市計画法で定められた地域地区の1つで、市街地の環境維持や土地利用の増進を目的に、建築物の高さが制限されています。斜線制限などと異なるのは、上限だけでなく下限が設けられていること。規定の高さよりも低い建物も建てることができません。なお、高度地区の導入の有無や制限内容は、自治体ごとに異なります。
●イシンホームでは、建ぺい率や容積率を守りつつ、快適な家づくりが可能!
イシンホームでは、建ぺい率や容積率を守りつつ、お客様の希望に寄り添ったマイホームをご提案しています。限られた面積を最大限に活かすため、ロフトや吹き抜けなどを取り入れた住宅も数多く手掛けているので、ぜひお気軽に、ご希望をお聞かせください。