最近の注文住宅の間取りですっかり定番となったワークスペース。でもなんとなくつくって、あまり利用されずにムダな空間となってしまうケースも増えています。そこで今回は、ワークスペースづくりで成功するための基本知識から、タイプ別の比較や場所選び、注意すべきポイントなど役立つ情報を特集。使いやすく、おしゃれで快適なワークスペースづくりをサポートします。ます。

ワークスペースとは

「ワークスペース」とは、仕事や勉強、家事などをする作業スペースのこと。コロナ禍以降、リモートワークをするための場所としてもニーズが高まっています。一般的な書斎は6畳や4畳半の広さを持つ部屋が多いのに対し、ワークスペースはより自由なスタイルでデッドスペースを活用したり、狭い空間にもつくりやすいという特徴があります。

注文住宅にワークスペースをつくるメリット

・集中力が上がる

専用スペースがあることで、作業に集中しやすくなります。特に個室タイプなら、家族の声や生活音に影響されずに仕事や趣味に没頭できます。

・オンとオフの切り替えがしやすい

仕事をする場所と生活する場所がはっきり分けられることで、メリハリがつき、意識の切り替えもスムーズになります。

・仕事の効率をアップする

必要な書類や機器をつねにスタンバイされているので、セットアップの手間がなくスムーズに作業に入れ、仕事の効率がアップします。

・リモート会議が快適にできる

音声環境や背景などが整備された空間でリモート会議ができるため、ミーティングの質が向上します。

・整理整頓しやすい

仕事の書類や資料などが決まった場所に収められ、家が散らかりにくくなります。
 

注文住宅にワークスペースをつくるデメリット

・スペースを取る

家の中に専用のワークスペースの場所を確保するため、その分だけリビングや個室に使えるスペースが減少します。

・将来的な用途変更が難しい

転職や働き方が変わると、家の中のワークスペースが不要になる場合があります。

・使用頻度が低いとムダになる

不便な場所にあったり、使いづらい設計だと使用頻度が下がり、ムダな空間になってしまうことも。 

・仕事から離れられない

いつも家で仕事をしていると、仕事を忘れる時間がなくなり休日でもリラックスできないことがあります。

・家族で過ごす時間が減る

ついつい仕事の時間を優先してしまい、家族とのつながりが希薄になることもあります。さえておきたいものです。

タイプ別ワークスペースの特徴　

ワークスペースは通常の部屋と同じ個室タイプに加え、共用空間の一角に設けるオープンタイプ、階段の下など閉鎖空間ではないものの、やや視線の届きにくい場所に設けるセミオープンタイプ、さらには暮らしに合わせて先々は別の用途にも転用可能な多目的タイプなど４つ。ここでは、タイプごとの特徴を見てみましょう。

◇作業に集中しやすい個室タイプ

個室として他の生活空間と完全に分離したタイプ。オン・オフの切り替えが明確になり、作業に集中でしやすい環境が保てます。また、個室の場合でもLDKの近くに配置し、室内窓やガラス扉を採用することで空間につながりをもたせると、家族とのコミュニケーションがとりやすくなります。

◇育児と仕事の両立ができるオープンタイプ

LDKなどの一角にカウンターやデスクを設けワークスペースにするタイプです。家族と同じ空間で作業したいかたや、育児と仕事を両立したい方などに向いています。また、家事の合間に他の作業ができる家事コーナーや、お子さまの勉強コーナー、パソコンコーナーなど、家族共有の作業スペースとしても活用できます。

◇家族の気配も感じつつ仕事ができるセミオープンタイプ

住まいの広さ的に個室を作れない場合や、個室では窮屈に感じる方、家族の気配も感じながら作業したい方にオススメのタイプです。程よくこもり感のある半個室タイプを設けるのがおすすめです。階段の下やロフトなど、やや視線の届きにくい場所やパーテションで仕切ってスペースを確保します。

◇将来の変更にも対応できる多目的タイプ

将来的には他の用途にも使えるように変更可能な工夫をすることで、床面積を増やさずにマルチに使えるタイプ。稼働間仕切りや家具で「個室⇔オープン」を切り替え、ワークスペースとしてだけでなく暮らしに合わせて空間を使い分けられます。

ワークスペースタイプ別比較表

タイプ	特徴	メリット	デメリット	向いている人
個室	2～6畳程度の個室	・作業に集中できる ・収納空間をまとめやすい	・床面積が必要 ・家族と離れがち ・高コスト	集中して仕事したい人 在宅勤務が多い人
オープン	ダイニングやリビングの一角を利用	・家族とつながれる ・子どもの学習にも兼用	・生活音が気になる ・整理整頓が必須	家事・育児と両立したい人
セミオープン	リビングや廊下の一角を仕切って活用	・空間を有効活用できる ・家族の気配も感じられる	・防音性は弱い ・気が散りやすい	家族と繋がりつつ、仕事や作業もしたい人
多目的	可動間仕切りや家具で「個室⇔オープン」を切り替え	・用途に応じて空間を使い分け可能 ・家族共用スペースにも転用	・設計・施工コストが高め ・中途半端になりやすい	将来のライフスタイル変化に備えたい人

ワークスペースをつくる場所

① リビングの一角

住まいの中でも広い空間が確保されたリビングは、ワークスペースがつくりやすい場所です。机やパソコンなどを場所も確保しやすく。ワークスペースをつくりたいけれど空間に余裕がないときなどにオススメ。広いダイニングテーブルがあれば、そこで作業をすることも可能です。

ただリビングは家族で過ごす生活空間なので、仕事への集中という面では個室などに比べ環境的に劣るかもしれません。一方で、仕事をしながら家事や子どもの様子を確認できるというメリットもあります。

② 階段下のデッドスペース

デッドスペースになりやすい階段下は、収納空間が作られることが多いですが、ワークスペースににも活用できます。家族の視線や気配から適度に隔てられるので、落ち着いて仕事ができるメリットもあります。ただし、階段下なので頭上の圧迫感や足音が気になる可能性もあるので注意が必要です。

③ 階段の踊り場や廊下の一角

階段の踊り場や廊下の一角という共用空間をワークスペースとして活用するケースもよく見られます。家族と適度にコミュニケーションを取りながら作業できることもメリットといえます。狭いスペースを有効活用できるよう造り付けのテーブルや棚を手配することもオススメ。来客時は、仕事の様子が目に入る可能性がある場所なので、セキュリティへの配慮や雑然とならないような収納家具も用意したいものです。

④ キッチンの一角

キッチンの一角にワークスペースをつくれば、料理や家事の合間を活用して仕事をするスペースとして便利に使えます。小さなお子さまの様子を見ながら家事と仕事を両立させたいという方に適したタイプです。キッチンの一角にワークスペースをつくる場合には、家事動線をよく考え邪魔にならないような場所を考えましょう。

⑤ 収納スペースの一部

広めのウォークインクローゼットの一角をワークスペースとして活用するケースが代表的な例。ワークスペースと収納を同時に確保できるため、限られた住空間を有効に活用できます。ただし、場所によっては換気や空調ができないなどの問題が生じることがありますので慎重に検討してください。

⑥ 寝室の一角

寝室はプライバシーが確保されているので、集中して仕事ができるというメリットがあります。日中は個室に近い感覚で利用でき、web会議などでも生活音を気にすることなくできることがメリットです。ただし夜遅くまで仕事をする場合は、寝室での作業が難しいことを考慮しておくことが必要です。

注文住宅のワークスペースづくりで後悔するポイント

「せっかく作ったのに使いにくい」「物置になった」など、ワークスペースづくりで後悔するケースもあります。ここでは後悔するポイントの代表例をピックアップしてご紹介します。

◇場所選び

ながら作業など集中力がそれほど必要ないならリビングの一角でも大丈夫。でも、集中したい仕事やリモート会議が多い場合はリビングのそばは避け個室を設ける必要があります。仕事や目的に合わせてワークスペースに適した場所は変わってきます。使う人の仕事スタイルにフィットする場所選びを心がけましょう。

◇広さ不足

せっかくワークスペースをつくっても、デスクを置いたら椅子の出し入れもままならないのでは役に立ちません。最低でも、奥行き60cm以上のデスクスペース＋椅子の可動範囲を確保してください。広さの目安は、部屋の一角につくるなら1畳～2畳、個室をつくるなら3畳以上が欲しいところです。

◇収納不足

整理整頓がしにくいワークスペースは仕事の効率が落ち、使いづらい場所になってしまいます。仕事の書類や資料を収納する家具を置き、PCやディスプレイ、プリンターなどの機器を設置できるように棚などのサイズや位置も検討してください。上部棚・引き出し・壁面収納をセットで計画するのがポイントです。

◇コンセントの数

ワークスペースにコンセントが足りないと、使いにくく延長コードだらけで見た目も雑然として仕事の能率も低下します。あらかじめ必要なコンセントの数を検討して設置しましょう。また、デスクからの位置や、壁面の位置、足元などコンセントを使用しやすい場所に設置することもポイントです。

◇採光・照明

「暗くて目が疲れる」「窓がなくて閉塞感がある」など採光や照明の不備はワークスペースの快適感を大きく低下させます。快適な作業環境を守るため、採光・照明のプランを整備してください。

◇防音対策

リモート会議の最中に子供の大声が入ったり、集中したい時にテレビの音が気になったり、生活音への対策は重要です。特に防音性能は後から改善するのが難しいため、注文住宅の設計段階で考慮しておくことがポイントです。

◇２つ欲しかった

ワークスペースは男性のものばかりとは限りません。共稼ぎ世帯はもちろん、主婦もパソコンを使った作業が増えていますし、お子さまの家庭学習に使えるスペースがリビングにあると便利です。ご主人専用のワークスペースを用意しても、後から家族用のワークスペースが欲しかったというケースも案外多いのです。そんなニーズも考え、ワークスペースを計画する際は、家族全員で使えるオープンタイプのものや、個室とセミオープンタイプと２つのワークスペースをつくるなど、ご家族全員の暮らしを見直して必要なワークスペースをつくることを心がけてください。

注文住宅にワークスペースを取り入れる際のポイント

注文住宅のワークスペースづくりで失敗を防ぐためのポイントを整理しておきます。

◇必要な広さを確保する

広さは最低 1.5畳～2畳は確保しておきましょう。デスクが置けるかではなく「快適に座って使えるか」で判断しましょう。プリンターなどパソコンの周辺機器を置く場合はさらに広さに余裕を持たせてください。

◇内装のデザインにこだわる

内装のデザイン性にこだわり、洗練された空間に仕上げるのも大切なポイントです。壁紙やカウンター、収納家具などを素材や色でコーディネートして、おしゃれで使いやすいワークスペースをつくりあげてください。

◇適切な採光と照明を採用する

暗すぎたり、明るすぎる空間は仕事に向きません。快適な作業性を確保するために以下のような採光と照明を心がけてください。

自然光の取り入れ方

北向きの窓：直射日光が入らず、一日を通して安定した明るさが得られる
東向きの窓：午前中の柔らかい光が入り、集中力を高める

西向きの窓：午後の光が強いため、ブラインドなどで調整が必要

照明は3層構造で

全体照明：部屋全体を均一に照らします

デスクライト：作業面を明るく照らし、細かい作業をサポートします

間接照明：空間に奥行きを与え、リラックス効果をもたらします

照明の色温度

昼光色：（5000K以上）は集中力を高めます

電球色：（3000K前後）はリラックス効果があります。

◇快適な空調環境を心がける

快適な作業環境を整えるには、適切な空調で温度と湿度をキープすることが大切です。また在宅ワークが増えると、昼間も空調を使用するため、省エネ性能も重視したいポイントです。

快適な空調環境のポイント

高断熱・高気密設計：外気温の影響を受けにくく、冷暖房効率をアップ

適切な空調設備：広さにあった空調能力と風が直接当たらない位置に設置

換気システム：新鮮な空気を取り入れつつ温度変化を抑える熱交換型換気

◇防音・吸音対策を行う

集中が必要な仕事や、オンライン会議や通話が多い場合は、個室タイプのワークスペースにして防音・吸音対策を徹底する必要があります。

効果的な防音・吸音対策

・遮音性の高い壁や床材の採用

・吸音パネルやカーテンの活用

・壁と天井の間にグラスウールなどの断熱材を入れる

・扉はきちんと閉まるものを選ぶ

◇過不足無い収納を考える

必要なものが手の届く範囲にあり、かつ整理整頓がしやすい環境は仕事の効率を高めてくれます。事前に収納するものをリストアップし、使用頻度に応じた配置を考えることがポイントです。

効果的な収納計画

壁面収納：省スペースで、書類や資料を大量に収納

整理棚：文具や小物を収納

オープン棚：よく使うものを置く

隠す収納：プリンターなど大型機器を収納

コード類の収納：配線をすっきりとまとめる工夫

◇インターネットやコンセントなどの設備

在宅ワークには、インターネット環境と十分な数のコンセントが欠かせません。コンセントやLAN配線は後付けが大変なので、設計段階で十分に検討しておきましょう。

コンセント

必要な数：デスク周りに最低4～6口

配置の工夫：足元や目線の高さなど、使いやすい位置に

USBポート付きコンセント：スマホやタブレットの充電に便利

埋め込み式コンセント：デスク天板に埋め込んで使いやすく

インターネット環境

有線LAN：安定した高速通信が必要な場合

Wi-Fi環境：ワークスペース近くにルーターを設置

◇セキュリティ

リモートワークをする場合、取り扱う情報や会社の規定によっては、セキュリティ対策が必要になります。多くの会社の規定では、家族であったとしても、業務上に知り得たことは教えてはいけないルールがあります。会社の就業規則等をチェックして必要であれば、ワークスペースを完全に独立した個室にするか、以下のような対策を考えましょう。

自宅でできるセキュリティ対策

・鍵付きの引き出しを置くスペースをつる

・web会議や電話専用部屋をつくる

・パソコン画面を見られない配置にする 

◇将来的なライフスタイルの変化に対応できる可変性

家族の成長や働き方の変化で、ワークスペースのニーズも変わってきます。ですから、将来的な用途変更も考えたワークスペースづくりも大切です。例えば、子どもが小さいうちは親のワークスペースとして使い、成長したら子どもの勉強部屋として使うなど、長期的な視点で考えると住まいのスペースを効率よく活用できます。

可変性を持たせるポイント

・可動式の間仕切り

・多目的に使える造作家具

・壁に下地補強を入れておく（後から棚を取り付けられる）

・扉の位置や開き方の工夫

ワークスペースの設置は新築時がおすすめ

ワークスペースは後からつくることもできますが、住宅の建築時につくるのがベターです。理由としては、以下のようなことが挙げられます。

◇家全体のバランスから考えられる

ライフスタイルや生活動線などを考慮して設計された家に、後からワークスペースをつくる場合、ワークスペースが邪魔になったり不便さが生じることもあります。新築時からワークスペースを計画しておけば、生活動線など家全体のバランスを考えて、ワークスペースをつくれます。そのため間取りのバランスもよくなり、快適さも保たれます。

◇造作家具がつくれる

造作家具とは、オーダーメイドの家具や作り付けの家具のこと。空間に合わせて設計・製作される家具なので、サイズや雰囲気など統一感が保てます。ワークスペースに後から購入したテーブルや椅子を置くと圧迫感を覚えることがあります。造作家具ならばワークスペースにフィットしたサイズで設計・製作されるため、快適さを損なうこともありません。

◇費用や手間がかかる

当然ですが建築費とは別に費用がかかります。また、既存の間取りを考慮してスペースを確保する手間がかかり、造作家具やコンセントの費用は新築時より高額になる可能性があります。

FAQ

Q.DENとの違いは

A. DENとは、英語で「獣の巣穴」を意味する「den」から転じて隠れ家的な空間を意味するようになりました。設計上は居室にならないサービスルームの扱いで、仕事や個人の趣味を楽しむための小さな部屋を指すことが多いです。どちらも多目的な空間ですが、ワークスペースの方がより仕事の空間としての性格が強くなっています。

Q.広さ一畳でも作れますか

A. 1畳程度の広さがあれば、奥行き70㎝・幅100cmの机と縦横50cm以内のイスを設置でき、ワークスペースをつくることができます。

Q.リモート会議の映り込みが気になるのですが

A. web会議で背景にプライベートな部分が映り込むのは抵抗を感じます。画面の背景に部屋が映らないような対策は以下のようになります。

・パーテーションで、背景を隠す

・天井にカーテンレールを取り付けて、カーテンで仕切る

・web会議ツールのバーチャル背景を利用する

まとめ

ひと口にワークスペースと言っても千差万別。仕事の内容やライフスタイルの違いで求められる空間づくりは大きく変わります。イシンホームは、豊富なワークスペースづくりの経験を元に多彩な提案で納得のワークスペースを実現します！ワークスペースづくりの疑問やお悩みはぜひイシンホームにご相談くださいね。