最近の新築物件ではすっかり見なくなった昔ながらの和室。ところがその和室がモダンなインテリア空間として海外から逆輸入のカタチで紹介され、新築の注文住宅でおしゃれな魅力が再発見されています。そこで、今回はおしゃれな和室を大特集。ぜひ新しいライフスタイルにフィットするモダンな和室づくりの参考にしてください。
●最近の和室事情
昔からある伝統的な純和風の和室は最近ではすっかり見なくなりました。その大きな理由は、床の間があって、床柱があって、というような伝統的な和室の作りはコンパクト化が進んだ昨今の住宅事情に合わなくなっているため。また和室を設けても広さはだいぶ縮小気味。調査によると、以前は6畳が平均でしたが、4畳半程度にまで狭くなっているそうです。しかし、居間や客間、あるいは寝室としてなど自由に使える汎用性の高さなど和室には捨てがたい魅力もあり、最近では昔ながらの決まり事にとらわれない、モダンな和室の人気が高まっています。これから注文住宅の新築を考える方は、和室のメリットとでメリットをしっかりと検討してみることをお勧めします。
<和室のメリット>
現代的なライフスタイルでも、和室は多彩な魅力があります。注文住宅のオーナーへのヒアリングで多いのが、和室を作ればよかったという声。後悔する前にここで紹介する和室のメリットをしっかり検討して、住まいのプランニングに生かしてください。
◇リラックスできる
素足になって、ごろりと寝転んでくつろげる和室。畳の質感を足裏や身体で感じることで、疲れが癒やされリラックスできる魅力は洋室にない特徴です。畳の素材である「い草」の香には心や体を落ち着かせる森林浴と同じ効果があるという研究もあります。
◇調湿効果
畳は湿度が高ければ室内の水分を吸収し、湿度が低くなると中に含んだ水分を放出するため、部屋を快適な湿度に保つ調湿効果があり、高温多湿の日本には、ぴったりの素材です。また、汗臭・タバコ臭、ペット臭などの成分を吸着し、イヤな臭いをやわらげる働きもあります。
◇クッション効果
畳にはクッション性があり、空気を多く含んでいることからフローリングと比べて音が響きにくい特徴があります。お子様が走り回る音も吸収して騒音を和らげ、うっかり転倒した場合も適度な弾力があるので怪我のしにくい素材だと言えます。
◇多用途
1つの部屋が居間にもダイニングにも寝室や客間にもなる汎用性が、和室の最大の特徴。座卓や座布団を置けば、リビングのような使い方ができる一方で、食事や宴会のスペースにもなり、布団を敷けば、寝室としても使えます。コンパクトな現代住宅では多用途に使える和室は、暮らしにゆとりをプラスするマルチ空間なのです。
<和室のデメリット>
使い勝手の良い和室もデメリットはあります。ここでは和室のデメリットを整理してご紹介します。
◇費用がかかる
素材のグレードにもよりますが、一般的に和室は洋室より費用が掛かかります。特にふすまや障子、床の間まで設ける本格的な和室となると、洋室に比べ建具の費用と工賃・技術料がかかります。ただしシンプルに仕上げてコストを抑えていけば、洋室と同じ程度の費用にすることも可能です。
◇メンテナンスが必要
1番のデメリットは畳やふすま、障子に定期的なメンテナンスが必要な点です。和室の建具は洋室に比べると傷みやすく、定期的なケアが必要です。その分、費用が必要になります。ただし畳やふすまの張り替えは比較的簡単で、定期的なメンテナンスで、長く美しい状態を保てるという点はメリットにもなります。
◇スペースをとる
住宅のスペースには限りがあり、和室を作るためには間取りに制約が生じます。たとえば、4畳半の和室を作るためには、その分個室を一つ減らすかLDKや収納などの広さを制限する必要があります。このため、床の間や畳、障子、襖などを取り付けた、本格的な和室は減り、LDKとつながる小上がり和室や、畳スペースを設けるケースが増えています。
◇家具が置きにくい
畳は家具を長期間設置すると凹みます。ですから重量のある大型の家具は置きにくいです。また、い草の表面は日焼けするため、家具をどかしたあと色の差が目立ちます。和室にはクローゼットや押し入れなどの収納を設け、棚やソファなどの固定家具は置かないのがオススメです。
<人気はモダンな和室>
洋室が一般的となった現代でも、住まいをつくるなら一部屋は和室を設けたいという方は多くいます。そんなニーズに応えて増えているのが「モダンな和室」。洋室と違和感なく繋がるスタイリッシュな和室です。また、アンティーク家具にマッチする和テイストのデザインやライトな「畳スペース」など、多彩なモダン和室も増えています。
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<手軽な畳コーナーや小上がり和室も人気>
畳コーナーとはリビングの一角に設ける畳スペースのことです。独立した和室をつくるにはそれなりのスペースが必要になりますが、畳コーナーであればリビングの一部分を和室と同じように活用ができます。畳コーナーには、段差がない「フラットタイプ」が主流。その他にリビングの一角などに20~40cmほどの段差をつけ立体感を持たせる「小上がり和室」も人気です。
●よくある和室の使い方
和室は多用途に使え、暮らしの豊かさを広げるマルチスペース。部屋数が限られた現代のコンパクトな住宅では多用途に使えるスペースは貴重な存在。ここでは代表的な使い方をご紹介します。
◇キッズスペース
畳の和室は、適度な弾力があり転んでもケガをしにくいため、お子さまのスペースにピッタリです。クッションやタオルケットがあれば、寝かせるだけで赤ちゃんのお昼寝スペースに早変わりします。
◇ゲストルーム
来客用の布団を用意しておけば、ゲストルームとしても活躍。いつもはほかの用途に使って、来客時だけゲストルームになるのでムダがありません。
◇仏間
和室は、仏壇置き場にもピッタリな和の空間。最近はフローリングの洋室に仏壇を置くケースもよく見られますが、やはり畳がある和室が使い勝手もよく、雰囲気にマッチします。
◇書斎・家事スペース
和室は、座卓と座椅子を置けば、書斎としても活用できます。必要なときだけ書斎に使えるのも便利なポイント。また洗濯物の整理やアイロンがけなどの家事スペースとしても活用できます。
●モダンな和室づくりのポイント
「モダンな和室」にも様々なタイプがあります。「今風のスタイリッシュな和室」や「大正や昭和のレトロモダンな和室」など、どんなイメージにするかを明確にして、デザインを進めてください。ここではポイントとなる基本的な要素を整理しておきます。
◇畳のデザインを選ぶ
畳は、一畳サイズの一般的な畳の他にもサイズやカラーなど様々な選択肢があります。モダンなイメージの方形畳や縁のない琉球畳などが代表的。例えば、少し色の違う縁なし半畳サイズの畳を市松模様に並べることで、インテリア性が一段とアップします。またフローリングや板間に直に敷く「置き畳」も手軽に和空間を楽しめるテクニックです。
◇建具や壁のスタイルを工夫する
襖の紙をモダンなデザインに変えるだけで、高額な費用をかけずに印象を大きく変えることができます。また、柱を露出させた真壁ではなく、柱が見えない洋室仕様の大壁で和室をつくることもオススメ。凹凸が消えることで、シンプルな壁面となりモダンな印象が高まります。モダンで個性的な和室を作りたい方はぜひご検討ください。
◇壁紙、クロスでコーディネート
従来の和室は砂壁や塗壁が一般的でしたが、モダンな和室にしたい場合は、壁や天井にアクセントクロスを使うのがオススメです。クロス、天井、床を同系の落ち着いたトーンでコーディネートすると、モダンで洗練された印象が深まります。
◇照明を工夫する
アンティークなペンダント照明や、シンプルなダウンライトなど照明の工夫でもモダンな印象は高まります。また、床の間や書院造りに間接照明を使ったり、折り上げ天井でライトアップしたりと、照明プランでよりスタイリッシュな演出も可能です。
◇収納や床の間を一新する
一般的な押し入れから「吊り押入れ」への変更もオススメ。押入れの下部に生まれる空間に間接照明を採用したり、明り取りの地窓を設けたりすることで洗練された和空間に仕上がります。
また床の間も、最近は枠にしばられないスタイルが人気です。床柱を省いたり、照明とアクセントクロスでモダンなディスプレイスペースとしたり、掛け軸ではなく壁そのものをデザインして鑑賞する対象にしたりと、より自由な発想が生かされています。
◇空間のつながりを考える
最近人気のプランは、和室をリビングに隣接させ、襖や障子の開閉によって個室と一体使いを選べる間取りや、和室を小上がりにして、リビングやキッチンから視線が届くようにした設計です。このようなプランの場合、LDK+和室を一つの空間として考え、リビングのインテリアに合わせて和室の家具・建具・照明のデザインをコーディネートすることが大切になります。
◇ペット専用畳も選べる
最近では、室内でペットを飼っているご家庭向けに、ペット専用畳も用意されています。ペット専用畳は、滑りにくく抜け毛が付きにくい加工済み。抗菌・消臭加工もあるので、気になる臭いも抑えられます。また、一般の畳に比べ、犬や猫がひっかいても穴があきにくい仕様で、耐水性があるため排泄後の処理もスムーズになっています。
●和室の実例
LDKと一体化する和室
和室の障子戸を開け放てばLDKと一体化してゆとりあるくつろぎ空間が生まれます。
床の間のある本格和室
モダンな印象の中に和の佇まいを大切にした本格的な和室空間も人気のタイプです。
●FAQ
Q. メンテナンスの期間や費用は?
A. い草を使った畳は、日焼けや摩耗による表替えなどメンテナンス費用と手間がかかるイメージをお持ちの方も多いようです。もちろんフローリングよりメンテナンスのサイクルは短いですが、費用や手間に関してはそこまで大きな負担はありません。
例えば、畳表面部分のい草は、色あせや擦り切れが目立ってきたら裏返して使うことができ、両面使ってから新品に交換するのが一般的。メンテナンス期間の目安は裏返しが2~3年、新品への交換(表替え)が6~8年です。フローリングの耐久性と比べると少し短めですが、畳一枚当たりの費用は1万円程度で、一日で交換可能です。
逆にフローリングの場合20年~30年で一度張り替えると数10万円かかり、数日間部屋を使えない場合もあります。ですから、畳だからメンテナンスの費用や手間など負担が大きいということはありませんのでご安心ください。
■畳の費用の目安
畳のデザイン | 縁つきタイプ | 縁なしタイプ(琉球畳) |
1枚のサイズ | 1畳 | 半畳 |
1枚あたりの価格 | 約10,000~12,000円 | 約10,000~12,000円 |
6畳の価格 | 約60,000~72,000円 | 約120,000~144,000円 |
Q. お掃除はどうすればいい?
A. 和室のお掃除は、基本的にフローリングとそれほど変わりません。
以前は掃除機をかけるのは良くないといわれていましたが、最近は畳用のやさしいモードを備えた機種が一般的になりました。畳の目に沿って掃除機をかけた方が長持ちするため少しの手間はありますが、それほど大変な作業ではありません。汚れが気になった場合は絞った濡れ雑巾で拭けばOKなので、お掃除も洋室と同じような作業で大丈夫です。
Q. ダニやカビは大丈夫?
A. 肌に直接触れる機会が多い畳は、清潔感も気になるポイントです。特に、ダニやカビは健康に悪影響がありますので見過ごせません。この点でも、最近の技術で建てられた新築住宅の和室なら、特に心配はありません。
畳や和室はカビやダニが発生しやすいイメージをお持ちの方も多いですが、これは昔の構造で建てられた家が原因です。数十年前の一戸建ては、地面からの湿気が溜まりやすい布基礎と呼ばれる構造が主流で、和室の床は気密性が低く、床下で発生したカビやダニの影響を受けやすい構造でした。
現在の住宅は土が直接見えないベタ基礎と呼ばれる構造で、床下の換気についても配慮されています。畳の下の構造も気密性があり、フローリングと比べても特にカビが生えやすいことはありません。
●まとめ
21世記になり、ライフスタイルが大きく変化しても、住居内では靴を脱ぐ日本人には畳の生活が欠かせません。イシンホームでは豊富な経験と実績を元に、最近人気のモダン和室から本格和室まで、多彩な提案で理想の和室づくりをサポートします!和室づくりでご不明な点があれば、ぜひイシンホームにご相談くださいね。