
注文住宅は自由度が大きい反面、予算の決め方が難しく悩む方が多くいます。広さや間取り、インテリアなど家づくりの希望に合わせて予算を考えていくと予算がふくらみ過ぎて現実とかけ離れた金額になってしまうことも。まずは収入を基準にした現実的なシミュレーションで、目安となる予算を決めてから詳細をつめていくアプローチがおすすめです。そこで今回は年収別の予算シミュレーションを中心に、注文住宅の予算づくりにフォーカスをあて、失敗しない注文住宅づくりをサポートします。
目次
なぜ大切?注文住宅の予算づくり
注文住宅は自由度が高いだけに、予算の決め方に悩む方が多くいます。なんとなく予算を考えて家づくりを進めると、あれもこれもと、どんどん金額が増えて予算オーバーになったり、逆に予算を切り詰めすぎて、希望を諦めて住み始めてから後悔したりと、理想とはほど遠い家づくりになってしまいます。
土地を探すにしても、広さや間取り、インテリアを検討するにしても、最後は予算との兼ね合い。
まずは、年収を基準にした現実的なシミュレーションを元に、適正な予算を決めて注文住宅づくりを進めてください。
注文住宅の予算シミュレーションで必要な準備

まずは自己資金を調べる
まず家づくりにかけられる自己資金を確認してください。自己資金は主に「住宅ローンの頭金」や「住宅ローンの実行前に必要な費用の支払い」に使います。ただし、自己資金は、こどもの教育資金や病気や災害などもしもの備えに残しておきたいお金などは差し引いて実際に家づくりに使える総額を把握しておきましょう。
自己資金にカウントできるもの
・預貯金
・両親、祖父母からの援助(生前贈与)
ちなみに国土交通省の令和5年度住宅市場動向調査によると、土地を購入した注文住宅の自己資金率29.0%と発表されています。自己資金は総予算の3割程度を目安に準備すると良いでしょう。
月々のローン返済可能額の確認する
次に住宅ローンの借り入れ可能金額と月々の返済額を確認します。一般的に無理なく返済できる住宅ローンの年間返済金額は、「年収の25%以内」といわれています。
金融機関のホームページでは住宅ローンのシミュレーションを公開していますので、借り入れ可能金額と月々の返済額を確認しておきましょう。
つくりたい家の相場、土地の価格相場を確認する
新たに土地を購入して注文住宅を建てる場合は、まず土地の購入費用と建物の建築工事にかかる費用をどのように配分するかも考えなくてはいけません。
一般的には、土地:建物が4:6~3:7程度が良いと言われています。
また、住宅の建築費用は広さや間取り、さらには建築業者によって大きく変わります。住宅金融支援機構が2025年7月に公表した「2024年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅を購入した人の所要資金の全国平均は3,936万円でした。購入された注文住宅の住宅面積の全国平均は118.5㎡(35.8坪)なので、坪単価の相場に換算すると、約110万円となります。この坪単価を目安として建築費用の大枠を考えておくと間違いないところでしょう。
データ引用元: 「2024年度 フラット35利用者調査」
https://www.jhf.go.jp/about/research/loan/flat35/index.html
家の新築にかかる費用の内訳を把握する
一般的に、注文住宅の建設にかかる費用の目安は「本体工事費」が約7割、「付帯工事費」が約2割、「諸費用」は約1割と言われています。
この目安をもとに、3,000万円の住宅を建てる場合の内訳を算出すると、次のとおりです。
本体工事費:3,000万×0.7=2,100万円
付帯工事費:3,000万×0.2=600万円
諸費用:3,000万×0.1=300万円
年収別注文住宅の予算シミュレーション

4人家族を想定し、返済期間35年、金利1%前後の想定で、年収別に注文住宅の予算をシミュレーションしてみました。あくまでも試算による目安ですが、予算を決める際のシミュレーションの参考にしてみてください。
| 年収 | 借入可能額(目安) | 自己資金(想定) | 総予算(建物+土地+諸費用) | 建てられる住宅のイメージ |
| 300万円 | 約1,800~2,000万円 | 200万円 | 約2,000~2,200万円 | 土地が安い地方で25坪程度のコンパクト住宅 |
| 400万円 | 約2,500万円 | 300万円 | 約2,800万円 | 30坪前後のコンパクト住宅、地方なら土地付きも可 |
| 500万円 | 約3,000~3,500万円 | 300万円 | 約3,300~3,800万円 | 郊外で標準的な注文住宅、3LDK程度 |
| 600万円 | 約3,500~4,000万円 | 400万円 | 約4,200~4,500万円 | 郊外で土地+建物、3~4LDKの標準的な間取り |
| 700万円 | 約4,000~4,800万円 | 500万円 | 約4,500~5,300万円 | 都市近郊でも土地+建物を実現可能 |
| 800万円 | 約5,000~5,500万円 | 600万円 | 約5,600~6,000万円 | 好立地や広めの間取り、設備グレードも充実 |
※表の数値はあくまで目安で、金利・返済期間・家族構成により変動
予算を決める時の基本ルール

総予算=自己資金+住宅ローン借入可能額
注文住宅の予算は、自己資金と銀行や住宅金融支援機構などからの住宅ローンの借入金の合計額となります。
自己資金比率は国土交通省の住宅市場動向調査のデータでも紹介したように、3割程度が多くなっていますが、自己資金ゼロで、住宅ローンのつなぎ資金や諸費用ローンを組み合わせることで注文住宅を建てられる可能性もあります。ただし、借入総額が多額になるため、毎月の返済負担が大きくなったり、ローンの審査に通らない可能性もあります。
逆に預貯金などを含めた手持ち資金の全てを住宅購入費用に充ててしまった場合、急にお金が必要になった場合に困る可能性があります。
長期的なライフプランを想定し、自己資金とローンのバランスを考えて総予算を決めてください。
住宅ローンの借入可能額の目安:年収の5~7倍
一般に、住宅ローンの借り入れ可能額は一般的に年収の「5~7倍程度」といわれています。
例えば世帯年収が500万円の場合、「500万円×5~7倍=2,500万円~3,500万円」が住宅ローンとして借りられる額の目安になります。ただし、この目安はあくまでも金融機関の金額の目安。借りられるからといって最大の額まで借りた場合に、本当に返済していけるかどうかをしっかり計算しておく必要があります。
無理なく返済できる範囲は「年収の25~30%程度」
一方、無理なく返済できる住宅ローン借入額として世帯年収に対し「25~30%程度」が目安だとされています。
例えば世帯年収500万円の場合では
500万円×返済比率25%=125~150万円(年間のローン返済額※1)
となります。
※1:年間のローン返済額には月々の返済額だけでなくボーナス返済額も含みます。
これを月々で見ていくと
125万円÷12カ月=10.5万円
150万円÷12カ月=12.5万円
となり世帯年収500万円の人であれば月々返済額が「10.5~12.5万円程度」が無理なく返済できる目安となります。
諸費用などその他の費用も忘れずに計上
注文住宅の予算づくりで失敗しがちなのが諸費用や付帯工事の費用をあやふやなまま進めること。家の新築費用の内訳でも説明した通り、建築費用以外に3割程度の費用が発生します。
諸費用は、住宅会社との工事請負契約にかかる手数料や印紙代、測量・地盤調査費用、地鎮祭・上棟式費用、住宅ローンの各種手数料などがあります。さらに、住み始めるにあたっての家具や家電の購入費用や引っ越し費用もこの項目として算出してください。
付帯工事費は、地盤改良工事や給排水・電気・ガス工事、ガレージや庭といった外構工事など。また、古屋がある土地に家を建てる場合は、その解体工事も発生するなど、その家ごとの環境や条件で必要な費用に幅があります。住宅会社に見積もりをしっかりと取りましょう。
下記に代表的なその他の費用をまとめておきますので参考にしてください。
・税金: 印紙税、不動産取得税、登録免許税、固定資産税など
・手数料: 住宅ローン保証料、融資手数料、火災保険料など
・その他: 外構工事費、引越し代、新しい家具・家電の購入費など
予算を決める時の注意点
予算を決めて住宅ローンを借りても、毎月の返済が遅れたり、通常以外の出費で立ち行かなくなっては本末転倒です。以下に予算を決める時に注意しなければならないポイントを整理しておきます。
「借りられる額」=「返せる額」ではない
住宅ローンが借りられるからといって、返済可能かどうかを検討せずに枠いっぱいの金額を借りる予算計画は無理があります。住宅ローンは「いくら借りられるか」より「いくら返せるか」が重要。現在の家賃や生活費、車のローンなどの返済金額を考慮し、自分たちに合った返済金額を検討してから借入金額を決めてください。
教育費や老後資金を考慮した余裕ある計画
当たり前のことですが、暮らしかかる費用は住まいと日常の生活費だけではありません。お子様の教育費や、老後に備えた貯蓄などさまざまな費用が発生します。また家のメンテナンスや修理費などの維持費も発生します。
お子様の成長やライフイベント、家の維持費や老後に備える蓄えなど長期的な視野で人生のマネープランを考えた上で、住宅予算を計画してください。
不測の出費に備え、予備費(総予算の5~10%)を確保
しっかりと予算計画を立てたつもりでも、細部の変更による追加工事や設備機器のグレードアップによる追加費用に発生など、なかなか予算計画通りにはいかないもの。予算枠に余裕がないとこうした不測の出費に対応するため、何かを諦めたり追加のローンを組む必要が出てきたりします。
予算組の時に、総予算の5~10%程度の予備費を考えておくのがおすすめです。使わなかったらそのまま貯蓄に回せば、住宅完成後のマネープランにも余裕が生まれます。
予算オーバーを防ぐためのポイント

予算を決める時に押さえておきたいポイントはコレ!予算オーバーを防ぐための3つのポイントを紹介します。
希望の優先順位付け
注文住宅は自由度が高いので、希望をすべて実現させようとすると費用はどんどん膨らんで簡単に予算オーバーしてしまいます。ですから予算づくりの前に、どんな家をつくりたいかのイメージを明確にし、その中の優先順位をつけていきましょう。限られた予算の中で家づくりをするわけですから、優先順位の高い要望を実現するために。優先順位の低いものを削りながら全体の費用を調整していくことで予算オーバーを防ぐことができます。
複数の見積もり比較
予算を具体的に詰めていく際の基本となるのは、建築会社からの見積もりです。その見積もりを元に、予算内で可能なプランを検討し、最終的な予算計画を建てることで予算オーバーを防ぐことができます。
ただし、見積りは複数社に依頼するのが鉄則です。1社だけでは適正価格が判断できず、2社でもどちらが適正なのか分かりにくいので、3社に依頼するのがおすすめです。逆に、見積もりを多くの会社から取りすぎると、担当者とのやり取りが負担になりますからご自身でコントロールできる範囲にしておきましょう。
補助金の活用も検討する
国や自治体の補助金制度や助成金制度を利用すれば、費用を抑えられ予算オーバーを防げる可能性があります。補助金を受け取るためには、対象や要件、スケジュールなどを確認することが大切。また、建設を依頼する建築会社が登録事業者でなければ受けられない補助もあるので、建築会社選びも重要になります。
なぜ建築会社と相談しながら予算を決めるといいのか
注文住宅の予算を決める時は、やはり建築会社に相談しながら進めるとスムーズに計画できます。不動産会社やファイナンシャルプランナー、金融機関などでは土地の価格や住宅ローンなどは相談できても、実際に建てたい家のプランや具体的な費用までは相談できません。
家の建築費用をはじめ付帯工事などの詳細は建築会社にしか分かりません。自分たちの希望の家がどのくらいの費用で建てられるかを、具体的な数字で詰めていくためにはやはりプロから聞くのが近道。
トータルコストを把握している建築会社と一緒に予算を考えることで、適正な予算を決めて理想の家づくりが進められます。また、土地の相談や住宅ローンの相談など建築会社は家づくりのすべてのノウハウを持っているので、安心して任せられる場合が多いのです。
よくある質問
Q.頭金0でも大丈夫ですか
A. 頭金なしで住宅ローンを組むことも可能です。月々の支払額は増えてしまいますが、無理をして頭金を支払わず、生活費や将来の貯蓄のために資金を残し、資産運用に回す方も増えています。余裕があれば早めに繰り上げ返済していくことも可能です。
ただ頭金を用意することで、毎月の返済額が抑えられること。金融機関によっては、頭金の割合によって金利優遇を受けられたり、住宅ローン審査に通りやすくなったりするケースもありますので、メリットとデメリットをよく考えておくことが大切です。
Q.ペアローンって何ですか
A.「ペアローン」とは、主に夫婦がそれぞれ別々に住宅ローンを組み、1つの住宅を共同で購入する方法のことです。最近のでは20代ではペアローンの利用率は4割にもなるという調査もあります。
ペアローンは、住宅ローン減税が夫婦で適用できるため、借入時の手数料が高いものの、ダブルのローン減税で、単独ローンよりも高い節税効果が見込めるメリットもあります。
まとめ
注文住宅は予算づくりが家づくりのスタート。ここでしっかりとしたビジョンを決め、適正な予算を決めていかないと、後々の後悔につながります。イシンホームでは、予算づくりの段階から施主様としっかりと話し合い、無理のない予算づくりをサポートし理想の注文住宅づくりをお手伝いしています。予算づくりのお悩みや相談がある場合は、お気軽に声をかけてください。

