
目次
︎パントリーの基本は3タイプ、その特徴とは

まずは代表的な3つのタイプを整理しましょう。
・壁付けタイプ
壁付けタイプは、キッチンの一角や壁面に収納棚を設けるスタイルです。収納量は限られますが、比較的コンパクトな住宅でも採用しやすく、スペース効率に優れています。
【向いている家庭】
・週に何度か買い物に行く
・食品ストックが少なめ
・延床30坪前後の住宅
・コンパクトな家づくりを重視している
例えば、冷蔵庫横に幅1m程度の可動棚を設けるだけでも、調味料や乾物、レトルト食品などをまとめて収納できます。大きなパントリーがなくても、収納する物を限定すれば十分実用的です。
・ウォークインタイプ
ウォークインタイプは、人が中に入れる独立した収納空間です。食品はもちろん、飲料ケースや日用品のストック、小型家電まで収納できるのが特徴です。
【向いている家庭】
・週末にまとめ買いする
・ネットスーパーをよく利用する
・防災備蓄を確保したい
・ストック量が多い
例えば2Lペットボトルの箱買いや、ティッシュ・トイレットペーパーをまとめて購入する家庭では、ウォークインタイプの収納力が役立ちます。
・ウォークスルータイプ
ウォークスルータイプは、出入口を2方向に設けて通り抜けできるパントリーです。収納機能だけでなく、家事動線の改善にも役立ちます。
【向いている家庭】
・回遊動線を重視したい
・買い物後の荷物運びを楽にしたい
・共働きで家事効率を高めたい
代表的なのは、「玄関→パントリー→キッチン」という動線です。買い物や仕事から帰宅後すぐに荷物を収納できるため、重い荷物をキッチンまで持ち運ぶ負担を減らせます。
◇基本3タイプの比較表
| 項目 | 壁付けタイプ | ウォークインタイプ | ウォークスルータイプ |
| 必要面積 | 0.3~1畳 | 1~2畳 | 2~3畳 |
| 収納量 | 小~中食品ストックや調味料向け | 最大食品・飲料・調理家電・防災備蓄まで収納可能 | 中~大十分な収納量だが、通路確保のため収納面積は減る |
| 省スペース性 | 最も高い。限られた面積でも設置しやすい | 独立した収納スペースが必要 | 通路も必要なため最も面積を要する |
| 動線効率 | キッチンから手が届きやすいが回遊性はない | 出入口1か所で収納重視 | 回遊動線を作りやすく買い物後の収納が楽 |
| 建築コスト | 棚設置中心で比較的安価。5~50万円程度 | 中。壁・照明・建具が必要。50~150万円程度 | ウォークイン型に加え通路や開口部の施工が必要 |
| 向いている条件 | 床面積にゆとりがないこまめに買い物へ行く | 床面積に余裕があるまとめ買い、宅配利用が多い | 玄関からキッチンへの動線上に設置可能家事効率を最重視 |
※建築コストは一般的な目安で 地域や仕様によって異なります。
︎パントリーの場所は「2本の動線の交点」で決める

パントリーの使い勝手を決定づけるのは、実は「何畳にするか」という広さではなく、「どこに置くか」という配置場所です。そしてその場所は、暮らしにおける2つの重要な動線が交わる位置から逆算しなければなりません。
・使い勝手を左右する「2本の基本動線」
使いやすいパントリーの基本となるのは2つの家事動線です。
①買い物動線(玄関・勝手口 ➔ パントリー)
「スーパーから帰宅する」「ネットスーパーを受け取る」「生協の宅配を片付ける」といった行動の流れです。例えば、玄関からキッチンまで遠い間取りの場合、大量の買い物袋を運ぶだけで大変です。飲料や調味料をまとめ買いする家庭ほど、この負担は大きくなります。ここが長いと、荷物を運ぶだけで疲れてしまい、結局リビングの床に置きっぱなしにする原因になります。
②調理動線(パントリー ➔ キッチン)
「食材を取り出す」「調味料を使う」「飲料を出す」など、日々の料理で発生する動線です。いくら収納量が多くても、キッチンから遠い場所にあると使い勝手は悪くなります。毎日何度も利用することになるため、意外と重要なポイントです。
・鉄則は「両方が短くなる交点」に置くこと
パントリーのベストポジションは、これら「買い物動線」と「調理動線」が最も短く交わる交点です。住宅の設計時、代表的な3つの配置パターンにおいて、この動線の長さや利便性がどのように変化するかを以下の図解(シミュレーション)でチェックしてみましょう。
【パターンA キッチン横・並列配置】
[ 玄関 ] ──(長い移動)──➔ [ キッチン ] ➔ [ パントリー ]
調理動線は「最短(0歩)」だが、買い物後の荷物搬入動線は長くなる。
【パターンB 勝手口・土間続き配置】
[ 勝手口/駐車場 ] ──➔ [ パントリー ] ──➔ [ キッチン ]
買い物動線は「最短(0歩)」。ただし冬場の温度管理や勝手口の防犯面に配慮が必要。
【パターンC 玄関ウォークスルー配置】
[ 玄関 ] ──➔ [ パントリー ] ──➔ [ キッチン ]
買い物動線・調理動線の双方がバランスよくつながる理想的な配置になりやすい。
このように、車の駐車位置からキッチンまでの経路を平面図に重ね合わせ、お互いの家事負担が最小限になるポイントにパントリーのスペースを固定することが、失敗しない配置計画の核となります。
︎ベストな広さは「入れる物」から逆算する

配置の場所が決まったら、次は「広さ(畳数)」の検討です。SNSなどでは「4人家族なら2畳がおすすめ」といったコメントもありますが、同じ4人家族でも「毎日スーパーに行く家庭」と「週末にまとめ買いする家庭」では、必要となるストックの量がまったく違います。
パントリーの広さを決めるポイントは、先に収納する物をリストアップして収納する物の量から逆算して決めることです。
・ストックから導き出す必要な「畳数」の目安
・1畳(約0.5坪)の目安
収納力は幅約160cm~180cmの棚に相当します。食品ストックや調味料、数箱の飲料ケースを並べるには十分な広さです。ウォークインタイプにすると通路が必要なため収納力がやや落ちますが、「1畳の壁付け(扉付き全面棚)」にすれば、人が入るデッドスペースがゼロになるため、一般的な4人家族であれば十分対応できると考えられます。
・1.5畳(約0.75坪)の目安
L字型や並行棚のレイアウトが組めるようになり、食品だけでなく、ホットプレートなどの大型家電、お米の玄米袋、ゴミ箱の分別スペースまで1箇所にスッキリ集約できるようになります。
・2畳以上(約1坪)の目安
まとめ買いの頻度が非常に高く、かつパントリーの中に「セカンド冷凍庫」を設置したり、防災用の備蓄を大量に保管したりしたい家庭向けの特大サイズです。これ以上広くすると、管理が大変になりデッドストックが増えるリスクや、LDKそのものが狭くなってしまうトレードオフが生じます。
◇収納物チェックリスト◇
パントリーの広さを検討する際に計算しておきたい主な収納物をリストにまとめました。
STEP1 食品
☑︎レトルト食品
☑︎缶詰
☑︎乾麺
☑︎米
☑︎小麦粉・粉類
☑︎お菓子
☑︎調味料
☑︎根菜類(イモ、タマネギ)
STEP2 飲料
☑︎ミネラルウォーター
☑︎お茶
☑︎ジュース
☑︎アルコール類
STEP3 日用品
☑︎キッチンペーパー
☑︎ラップ類
☑︎洗剤
☑︎スポンジ・タワシ
☑︎ゴミ袋
☑︎トイレットペーパー・ティッシュ
STEP4 キッチン家電
☑︎ホットプレート
☑︎ホームベーカリー
☑︎電気圧力鍋
☑︎卓上コンロ
☑︎コーヒーメーカー
☑︎かき氷機
STEP5 災害用備蓄
☑︎詰替ガスボンベ
☑︎非常食
☑︎備蓄水
☑︎使い捨てトイレ
︎30坪前後の家でスッキリ収める設計ポイント

一般的な注文住宅で最も多いのが30坪前後の間取りです。この限られた面積のなかで、LDKの広さを確保しながらパントリーを上手に組み込むには、ちょっとした工夫が必要です。
・隣接する部屋との位置関係
パントリーを孤立させ使いにくくしないように、キッチン背面のカップボード(食器棚)の延長線上に配置するか、洗面室や脱衣室(ランドリールーム)などの水回りと隣り合わせにするのがセオリーです。これにより、キッチンで料理をしながらパントリーを経由して洗濯機を回しに行く、といった「ながら家事」の回遊動線が生まれ、家事全体の時短につながります。
・快適に動ける「通路幅」の計算
ウォークインやウォークスルー型を採用する場合、人が物を抱えてスムーズに通ったり、棚の前でしゃがんで下の物を取ったりするための通路幅(有効寸法)を確保しておく必要があります。
最低限確保したい通路幅は60~80cmですが、もし家族2人がパントリー内ですれ違うシーンが想定されるウォークスルー型であれば、通路幅は80cm~90cm近く必要です。十分な幅が確保されていないと「通りにくく、ストレスの溜まる通路」になってしまいます。通路を広げる分、棚の奥行きが削られるため、図面上で壁の厚みを差し引いた「有効寸法」を必ず確認しましょう。
実例① キッチン横の壁付けパントリー
30坪前後の住宅で採用しやすいパターンです。冷蔵庫横に可動棚を設置し、食品や調味料をストックします。収納量は限られますが、使いやすく実用的なプランです。
実例② ウォークイン型パントリー
キッチンの隣に1.5~2畳程度の収納室を設けるケースです。食品・飲料・日用品・家電までまとめて収納できます。ストック管理もしやすく、整理整頓が得意な家庭に向いています。
実例③ ウォークスルー型パントリー
玄関とキッチンの中間に配置するケースです。買い物後、玄関→パントリー→キッチンという流れで荷物を片付けられます。共働き家庭では、特に利便性を実感しやすいプランとして人気があります。
︎つくる前に必ず確認したい5つのポイント

①動線の交点から外れていないか?
収納量ばかり重視すると、遠くて使いにくい収納になりがちです。毎日使う場所だからこそ、位置が重要です。
②扉付きにして開閉が面倒にならないか?
扉を付けると生活感を隠せます。一方で、何度も開閉する場合はストレスになることもあります。見た目と使いやすさのバランスを考えましょう。
③湿気や温度管理の対策はできているか?
火を使うキッチン付近は熱がこもり湿気も発生しやすい場所。通風や温熱環境への対策が不十分だと、カビや変質などストックにダメージを与える場合もあります。食品を保管する場所である以上、しっかりとした対策が必要です。
④家族のライフスタイルの変化を想定しているか?
ライフステージでストックの必要量は変わります。子どもが成長すると一時的にストック量が増えることがあります。一方で、独立後は大きな収納が不要になるケースもあります。
⑤本当に「パントリーなし」ではダメなのか?
すべての家庭にパントリーが必要なわけではありません。例えば、「買い物頻度が高い」「ストックしない主義」「キッチン収納が充実している」という家庭では、別の空間に面積を使った方が合理的な場合もあります。
︎FAQ
Q1. パントリーに扉は必要ですか?
A.「リビングからの視線」と「家事の手間」のどちらを優先するかによって判断が変わります。来客が多く、キッチンの生活感を隠したい場合は扉(特に引き戸)をつけるのがおすすめです。ただ、扉をつけると開閉のワンアクションが増え、調理中にストレスを感じることもあります。そんな場合は、普段はオープンにしておき、来客時だけサッと下ろして隠せる「ロールスクリーン」の活用を考えてみてください。コストも引き戸より安く抑えられ、家事のしやすさと美観を両立できます。
Q2. 勝手口とパントリーはどちらを優先すべきですか?
A.車から荷物を運び入れる経路(外構・駐車場の位置)を基準に判断してください。「駐車場のすぐ目の前に勝手口があり、そこから直接キッチンへ入れる」という配置ができるなら、勝手口を優先する価値は非常に高いです。しかし、「勝手口を出ても狭い通路しかなく、車から遠い」という場合は、勝手口を作っても荷物を運び入れる経路としては使わなくなる可能性が大。その場合は勝手口を無くし、その分の床面積とコストをパントリーの収納力アップに回した方が合理的です。
Q3. ウォークスルー型パントリーのデメリットは?
A.「通り抜けるための通路スペースが必要なせいで、思ったより物が置けなかった」という面積効率のデメリットが最大の不満要因です。ウォークスルー型は入り口と出口の2箇所に加えて、中の通路を常に空けておく必要があるため、純粋な収納面積は同じ畳数のウォークイン型に比べて2割~3割減ってしまいます。さらに、通路に物を置くと、通り抜けができなくなり回遊動線が機能しなくなります。1.5畳以下のコンパクトな間取りでウォークスルーを採用するのは避け、2畳以上の十分なスペースが確保できる場合にのみ計画するのが安全です。
Q4. 冷蔵庫やセカンド冷凍庫はパントリーの中に置けますか?
A.置くことは可能ですが、必ず「専用コンセントの設置」と「放熱スペース・換気計画」を用意しておく必要があります。最近は冷凍食品のまとめ買い用に独立型の冷凍庫をパントリー内に設置するのが人気です。ただし、冷凍庫は周囲に5cm~10cm以上の放熱空間が必要な製品が多く、条件を守らない場合は故障の原因となります。
︎まとめ
パントリーづくりで後悔しがちなのはSNSの「スマートな実例写真」を見て飛びつき、そのまま真似してしまうこと。実は、家族の暮らしに合わないパントリーは使用頻度が下がりデッドスペース化してしまうリスクがあるのです。
せっかくつくるパントリーを使いやすく設計し、ムダな空間にしないためには、
まず動線から配置場所を検討し、タイプを決め、収納量を具体的に想定して広さを決めていくのが王道です。
イシンホームでは、長年の住まいづくりで蓄積したノウハウを活かし、ライフスタイルに合ったパントリーづくりの提案を多彩にご用意しています。もしパントリーづくりで迷ったら、お気軽にイシンホームにご連絡ください。あなたとご家族にフィットするパントリーづくりを納得いくまでお手伝いします。

