
●勾配天井とは?
勾配天井は、天井が屋根の勾配に合わせて斜めになっていて、本来だと屋根裏になるスペースが空間になるよう設計されています。一般的な戸建て住宅の床面から天井までの高さは2.2m~2.4mが標準といわれていますが、勾配天井を取り入れることで、それ以上の高さが確保できるのです。平屋住宅や、2階建ての吹き抜け部分などに作られるケースもあります。
●勾配天井を取り入れるメリット
勾配天井には、主に以下のような4つのメリットがあります。
開放感のある空間
勾配天井の一番のメリットといえば、天井高を生かした、縦にも横にも広がりが感じられる開放的な雰囲気を室内に生み出せることです。一般的といえる切妻屋根などの住宅とは、室内外の見た目や印象が大きく変わってきます。
高いデザイン性
勾配天井の場合、梁を出してモダンな雰囲気を演出するなど、デザイン性の高い空間を演出することができます。
優れた採光性
天井が高くなる勾配天井は、高い位置に窓を設けられるため、部屋が明るくなります。周囲の建物の影響で採光性の確保が難しい平屋住宅では、プライバシーに配慮しながら、効果的に家の中に太陽光を取り入れることができます。
通気性の良さ
高い位置に開閉可能な窓を設けることによって、家の風通しが良くなることもメリットです。暖かい空気は上へ、冷たい空気は下に動く性質があることから、家の高い位置に開閉できる窓があると、部屋の中の空気を外に排出する風の流れができやすくなります。
●勾配天井のデメリットと対策は?
一方、デメリットもある勾配天井。対策もあわせて紹介します。
メンテナンスの難しさ
勾配天井の場合、注意したいのが天井の高い部分のメンテナンスです。照明の位置が高い場合は電球や照明設備の交換の際に、ハシゴや脚立、場合によっては住宅会社や工務店に依頼することもあるでしょう。加えて窓、シーリングファン、梁などの掃除に加え、自動開閉式のカーテンを付けている場合には、その手入れやメンテナンスコストが必要になるケースもあります。
対策:クリーニング用の設備設置や長尺掃除道具の使用
掃除やメンテナンスの方法も想定し、住宅メーカーと設計時から相談しておくことが大切です。例えば、普段の手入れを考えると、シーリングファンは電動昇降機付きのタイプがおすすめです。手が届く位置まで自動でファンが降りてくるので、手軽に掃除ができます。また、自動開閉式カーテンも昇降できるタイプであれば下まで降ろせるため、簡単に取り外しができ定期的な洗濯が可能です。
天井の高い部分や窓は、柄が伸縮するロングモップやロングワイパーなど、長尺の掃除道具を使って手入れができます。モップやワイパー部分が曲がるタイプなら、角や細かい部分の掃除も可能です。
施工価格が高くなる
勾配天井は壁や天井の面積が増加するうえに、工事の際に足場が必要です。そのため、工期が長くなり、それに比例して施工価格も高くなってしまいます。さらに、窓の増加や自動開閉のカーテンの設置によって、さらに費用が発生するでしょう。
対策:高価な仕上げ材を避ける
ヒノキやオークなどの無垢材を使うと、高級感のある仕上がりになりますが、費用がかさみます。一方、クロス張りにすればリーズナブルで、張り替えや補修も容易です。
また、どうしても見た目にこだわりがある場合は、天井全体ではなく、アクセントとして部分的に高価な仕上げ材を使用するという方法もあります。例えば、リビングやダイニングの一部にだけ木材を使い、他の部分は塗装やクロスで仕上げることで、コストを抑えつつ空間にデザイン性を持たせることができます。
空調の効率が悪く、断熱性も低い
天井が高くなることで部屋の容量が増えて、冷暖房の効きにくさを感じることがあります。また、天井裏スペースが少なくなってしまうため、天井の裏に断熱材を多く入れられず、断熱性が下がってしまいます。
対策:空気循環装置を設置する
勾配天井の住宅には、空気を循環させるためのシーリングファンの導入がおすすめです。冬場は天井近くにたまりやすい暖かい空気を下に循環させ、部屋全体を均一に暖め、暖房効率を向上させることができます。また、夏場には逆に冷房効率を上げるため、冷たい空気を下に分散させる効果があります。これにより、部屋全体の温度を一定に保つことが可能です。
音が反響しやすくなる
勾配天井の住宅は、屋根と居住スペースが近く空間が縦に伸びているので、音が反響しやすいという特徴があります。テレビの音やリモートワーク時の音声が響きやすかったり、雨音が耳障りになったりすることも。声のボリューム調整が難しい乳幼児がいる家庭においても、気になるポイントでしょう。
対策:吸音材を使用する
フローリングなどが堅い素材だと反響しやすいため、壁や床に吸音パネルや、グラスウール・ウレタンスポンジといった吸音材を使用するとよいでしょう。また、布製のソファを置いたり、吸音素材のカーペットや防音カーテンを使用したりすることでも、音の反響を防げます。
●シーリングファンや照明など、勾配天井に合うインテリアを紹介
勾配天井を導入する際、具体的にどのようなインテリアを取り入れればよいか、おすすめの設備を3つ紹介します。
シーリングファンで空気循環とデザイン性を両立
シーリングファンは、空気を循環させて冷暖房を効かせるのはもちろん、くるくると回る羽根が空間に立体感と動きを与え、インテリアのアクセントになります。デザインも多彩に揃うので、部屋の雰囲気に合わせて選びましょう。
吊り下げタイプの照明で立体感を演出
天井までの空間が幅広くなる勾配天井。照明によってこのスペースを素敵に演出するのがおすすめです。特に、ペンダントライトなど吊り下げるタイプの照明を取り入れると、立体感のある空間に見せてくれるだけでなく、高さを調整できるので光の当たり方によってムードを変えることも可能です。
高さを生かした収納スペースを設置
天井までの高さがあり開放的ではあるものの、天井付近の斜めになった空間がデッドスペースになりがちです。この部分にロフトを設置すれば、普段使わないものの収納スペースとしての活用はもちろん、ある程度の広さがあれば、ちょっとした子どもの遊び場にもなります。
●勾配天井を設置する際の費用相場は?
実際に勾配天井を取り入れる場合、どれくらいの費用がかかるのかは気になるところ。新築時とリフォーム時の2つのケースに分けて、大まかな相場を紹介します。
新築時に勾配天井を導入する場合の費用
新築の住宅で勾配天井を導入する場合、通常の平天井の住宅よりも高くなる可能性があります。工事費用は広さや材料などで異なりますが、例えば18畳程度のリビングであれば、勾配天井の工事費用は30~50万円程度が追加で必要となるでしょう。
リフォームで勾配天井を設置する場合の費用
リフォームで勾配天井を設置する場合、35~60万円程度かかります。ただし、こちらも条件によって変わってくるため注意が必要です。住宅メーカーや工務店の担当者としっかり相談し、場合によっては相見積もりを取って比較検討しましょう。
●勾配天井にする際に気をつけたいポイント
上記のデメリットを踏まえて、勾配天井を取り入れる際にどのような対策をするといいのでしょうか。具体的に紹介していきます。
メンテナンス費用を抑える
高い位置の照明や窓の自動開閉装置、シーリングファンなどのメンテナンス費用を抑えたい場合には、脚立などで作業できる範囲に設置し、自分で対処できるようにするなどの対策も有効です。
高気密・高断熱の家にする
高気密、高断熱の施工にすると、室内の快適な空気を逃さず、また、外の熱や寒さが流入しづらく、一年中快適に過ごせます。快適に過ごすために高性能な断熱材を取り入れる、窓の性能を高くするなど、ハウスメーカーや建築会社としっかり相談しましょう。
窓の位置に注意を
窓を設置する場合、方角によって光の入り方や日差しの強さが変わるため注意が必要です。周辺の環境も鑑みながら、じっくりと検討することが必要です。
太陽光発電・蓄電池を利用する

勾配天井の場合片流れ屋根になることが多いので、太陽光パネルの設置がしやすいといえます。空調などで発生する電気料金のコストを抑えるために、太陽光発電や蓄電池の導入も検討しておきましょう。
屋根の形状と設計のバランス
勾配天井は屋根の形に沿って斜めにするため、屋根の形状、つまり勾配がどれくらいついているかがポイントになります。屋根の面積が広ければ広いほど高低差が生まれ、勾配がつきます。屋根の勾配が緩いと高さが出ず、勾配天井ならではの開放感も出にくくなります。
また、勾配天井は天井までの空間があることから、照明を付けた際の見た目だけでなく、高い位置に窓を付けるなど採光についても気を配ることが必須。つまり、デザイン性と機能性のバランスを考慮して設計する必要があるのです。
【実例】イシンホームへの注文で安心!おしゃれな勾配天井の平屋
最後に、当社が手がけた勾配天井の家を紹介します

光熱費0円の家「勾配天井を取り入れた平屋」
人気の平屋に勾配天井とスキップフロアを取り入れたプランです。屋根部分には大型14.8kwソーラーを設置し、蓄電池も取り入れた光熱費0円の住まいをご提案します。
●FAQ
Q. 勾配天井を設置すると光熱費が上がる?
勾配天井は冷暖房が効きにくく断熱性も低くなりやすいという理由から、光熱費が高くなる可能性があります。しかし、上記でご紹介した平屋住宅のように、太陽光や蓄電池を取り入れることで光熱費が0円になることもあります。また、その他にもシーリングファンやエネルギー効率の高い空調設備を設置したり、日当たりや風通しを考慮した間取りにしたりすることで、光熱費の上昇を抑えることができます。
Q. 勾配天井と吹き抜けの違いは?
勾配天井と吹き抜けは、どちらも天井までが高く開放的な空間が演出できる点は同じです。違いは勾配があるかどうか。勾配天井は屋根の勾配に合わせて天井を斜めに設計した天井のことで、2階建てだけでなく平屋でも可能です。吹き抜けは、下階の天井、つまり2階の床を設けず上階まで一つの空間になるよう、複数階ある建物で取り入れられる設計です。
Q. 平屋に勾配天井を設けるのはあり?
平屋は勾配天井と相性が良いといえます。採光性や通気性などが問題になりがちな平屋も、勾配天井を設けることで天井の位置が高くなり、窓を高い位置に配置できるため、明るい光が入る開放的な住宅になります。
もちろん、天井が斜めに上がることで、部屋が高く広がり、非常に開放感のある空間となるため、天視覚的に圧迫感が減り、広々とした印象を与えるというメリットもあります。
●まとめ
開放的な空間になる一方で、コストや空調のデメリットもある勾配天井。とはいえ、こうしたデメリットも、設計時に対策をすることで解消できる可能性があります。イシンホームでは、お悩みをしっかりと聞いたうえで、勾配天井を取り入れたおしゃれで快適な家づくりをいたします。気になった方は、ぜひお気軽にご相談ください。