
“家の顔”ともいわれる玄関は、急な来客にも問題なく対応したり、家族が心地よく帰宅できたりするように、いつもきれいにしておきたいところです。しかし実際は、家族の靴が散乱したり、ベビーカーやゴルフバッグの置き場所になったりするため、なかなかすっきりしにくい現状もあるでしょう。
そこで今回は、近年人気となっている土間収納についてご紹介。取り入れる際の注意点や広さ別の活用シーン、費用などについて詳しく解説します。
目次
土間収納とは

土間収納とは玄関脇の収納スペースのことで、靴を履いたまま出入りできるのが特徴。「エントランスクローク」「シューズクローク」「シューズインクローゼット」などとも呼ばれます。この土間収納があれば、家族みんなの靴はもちろん、ベビーカーや掃除道具などを片付けられるため、近年住宅に取り入れる人が増えています。
玄関の中に付ける箱形の収納として、玄関収納(シューズボックス)があります。省スペースで設置でき、玄関をコンパクトに片付けることができますが、大きな荷物の収納には向かず、それらは別に置く必要があります。
| 土間収納 | 靴、コート、アウトドア用品、ベビーカーなど | ある程度のスペースが必要 | ・整理整頓しやすい・デザイン性が高い |
| 玄関収納 | 主に靴やブーツ | 比較的小さなスペースで設置可能 | ・コンパクトなのですっきりする・比較的手頃な価格帯の製品が多い |
| 収納するもの | 大きさ | 特徴 |
なお、土間収納には、大きく分けて、オープンタイプとクローゼットタイプ、ウォークインタイプ、ウォークスルータイプがあります。
オープンタイプ

玄関の土間の一角に設置する扉がないタイプ。棚を設けて収納します。画像のように、靴を多数収納したい方にはうってつけといえます。ロールカーテンなどを設置すると目隠しになるでしょう。また、臭いが気になる場合は消臭剤を置きましょう。
ちなみに、イシンホームであればコートクロークに二酸化チタン光触媒を使用したクリーンルームをつくることも可能です。二酸化チタンというのは、光を吸収することによって化学反応を引き起こし、有害物質を無害化してくれる化合物のこと。除菌や抗菌効果、カビや汚れ防止、そして消臭などさまざまな効果があるのがうれしいですね。
クローゼットタイプ
クローゼットのように、収納前面に扉が設置されているタイプ。オープンタイプとは異なり、収納部分を隠すことができます。ただ、臭いがこもりやすくなってしまうため、定期的に扉を開けて換気するほか、後述する換気扇の設置をおすすめします。
ウォークインタイプ

出入り口が玄関側1つで、中を歩き回れるタイプ。シューズインクローゼットなどと呼ばれることもあります。画像のように壁一枚で玄関と収納を隔て、片方を“魅せる”ようにするとおしゃれです。
ウォークスルータイプ
玄関から入り、中で靴を脱いでそのまま室内に入ることができるタイプ。出入り口が玄関と室内の2つあるため利便性が高く、玄関に靴が散らかることもありません。玄関のそばに洗面台やリビングをつくると、より回遊性が高くなるでしょう。詳細については後述します。
土間収納のメリットは?その魅力を解説

玄関に土間収納を設けるメリットについて紹介します。
外で使ったものも拭き取りをすることなく収納できる
ベビーカーやアウトドアグッズ、子どもが外で遊ぶ道具などを室内に収納しようとすると、汚れを落とすのにかなりの労力と時間を使います。その点、床が土間続きになっている土間収納の場合、汚れをしっかり落とさなくてもそのまま片付けられます。また、玄関からすぐに出し入れできるため、次に使うときにスムーズに持ち出すことができて◎。
靴を履いたまま出入りできる
土間収納のスペースは、玄関と同じく土足のまま出入りが可能です。帰宅時にコートや雨具などを脱いでそのまま片付けることができて便利。外出に必要なアイテムをまとめて収納しておけば動線もよくなり、お出かけの身支度もスムーズになるでしょう。
すっきりとした玄関にできる
玄関と収納スペースが分かれるため、靴や掃除用具、子どものおもちゃなどで玄関が散らかることがありません。また、土間収納をシューズクロークとしても活用すれば、玄関に靴箱を置く必要がなくなり、玄関周りがさらにすっきり。突然の来客でも慌てず、美しく整頓された玄関で迎えられます。
室内に置いておきたくないものを収納できる
土間収納は、資源ゴミや灯油缶など、家の中に置いておきたくないものを保管するのにも役立ちます。また、いざというとき、玄関にあると役立つ防災グッズや備蓄品などの保管場所にも適しています。
土間収納で後悔する人が多い4つの理由とは?知っておきたいデメリットの具体例や対策を紹介!

土間収納にはさまざまなメリットがある一方、広さや用途を考えずに取り入れると、活用しきれずに後悔する可能性も。どのようなケースがあるのか、失敗例およびその解決策を紹介します。
失敗例 01:土間収納が狭くて収納がしづらい…
土間収納をつくる際にまず考えたいのは、何を収納するかという点。収納したいものとそうでないものを書き出してみることで、土間収納に必要な広さや間取りが検討しやすくなります。せっかくのスペースが無駄になってしまわないよう、家族構成やライフスタイルに合わせて、実際に使うシーンや生活動線を考えながら設計することがポイントです。
解決策 01:目的を明確にした上で広さを検討する
土間収納の広さは1~2畳程度が一般的。なぜなら、狭すぎると物があふれてしまうから。将来家族が増えたり、子どもが成長したりして荷物が増えることを想定しておくことも大切です。一方、広すぎて有効活用できないケースも。土間収納が生活スペースを圧迫してしまっては後悔することになりかねません。
また、収納したいものが置けるスペースだけでなく、出し入れする際に必要な空間を考えておくことも重要。スペースに余裕がないと動きづらく、出し入れしにくくなるので、動線を考えてゆとりを持った収納計画を立てましょう。
収納スペースの目安は次のようになります。棚は「収納したい物+約50cm」のサイズで設計すると、出し入れしやすく無駄もなくなるでしょう。
ここでは、それぞれのサイズによる収納物について解説していきましょう。
・0.5畳:靴や衣類を必要最低限収納
幅180cm×奥行き45cm程度のオープンタイプやクローゼットタイプにすると使い勝手が良くなります。
・1畳:衣類や子どもの遊具、ベビーカーを収納
幅270cm×奥行き60cm程度のオープンタイプやクローゼットタイプ、幅180cm×奥行き90cm程度のウォークインタイプなどがおすすめです。
・2畳:ある程度の量が収納できる上、ウォークスルータイプの設計も可能
両側を棚にしたウォークスルータイプにすることもできます。片側を靴用の棚に、片側にはハンガーパイプを設けて衣類を収納することもできます。
・3畳以上:大人用の自転車も収納可能な上、DIYや趣味部屋にすることが可能
DIYや趣味の部屋としても使う場合には、収納棚の配置を工夫して作業スペースを確保しましょう。
失敗例 02:ウォークスルータイプの土間収納を設置した場所が悪くて、行き来がしづらい…
土間収納を作るなら、通り抜けできるウォークスルータイプがおすすめです。ただ、土間収納からどこの空間へ行けると便利なのか、シミュレーションをしておくことが肝心。
解決策 02:ライフスタイルに合わせた場所に設置する
家族の生活スケジュールを考え、家事などを行いやすい場所に設置するのがおすすめです。
・洗面所に出られるスタイルにする
洗面所に続く設計にすれば、帰宅してすぐに手洗いやうがいができて便利。子どもが「帰宅後に手洗い・うがい」をするという習慣付けにも効果的で、汚れを家の中に持ち込まないというメリットもあります。
・リビングに出られるスタイルにする
家にいる時間のほとんどをリビングで過ごすという家庭が増える中、玄関とリビングが直結した間取りが人気です。ただその場合、ソファの上に家族の荷物やコートなどが置いたままになるといった状況が生まれがち。そこで、玄関からリビングの間にウォークインタイプやウォークスルータイプの土間収納があれば、帰宅→荷物やコートを収納→リビングという効率の良い動線が生まれて便利です。
・キッチンに出られるスタイルにする
ウォークスルータイプの土間収納がキッチンへとつながっていると、買い物の荷物を玄関から直接キッチンに運ぶことができ家事動線がよくなります。パントリーのような使い方もでき、キッチン用品の収納にも便利です。また、キッチンからほかの部屋を通らずに玄関までゴミを移動することが可能なうえ、ゴミを土間収納に置いておくこともできます。
失敗例 03:土間収納を設けたことによって、予算オーバーしそう…

土間収納を設ける場合、当然土間の施工などが必要になり、費用がかさむと考えられます。広さや素材などにこだわれば予算オーバーになりかねないので、あらかじめ確認しておきましょう。
解決策 03:必要なものを取捨選択する
先述した通り、一般的な住宅の土間収納は1~2畳ほどのサイズが目安。ベビーカーや自転車などの大きなアイテムを多数置く必要がない場合は、費用も考えて1~2畳ほどのスペースで設計するとよいでしょう。ベビーカーを畳んで保管する場合は1畳あれば十分です。
土間の床材は、土間の印象を大きく左右するとても大切な要素で、タイル、コンクリート、モルタル、天然石が一般的。施工費用は、一般的に、モルタル、コンクリート、タイル、天然石の順で高額になっていく傾向があります。最も安価とされるモルタルは、粉末のセメントと砂、水を混ぜ合わせて作られているため、粒子が細かく滑らかな仕上がりになります。
失敗例 04:カビが生えてしまったらどうすればいいんだろう…
土間は、外部と室内の温度の差が出やすい空間。その温度差によって、結露が起こりやすくなります。また、傘やレインコート、靴など、収納するものが雨で濡れていたり湿っていたりすると湿気がこもりやすくなります。放っておくと、玄関に嫌な臭いがこもってしまったり、収納している物にカビが生えてしまったりする可能性も。そのため、湿気対策はしっかりしておかなければいけません。
解決策 04A:換気扇や窓の設置を検討する
土間収納を清潔に保つためには、空気の流れが生まれやすい間取りにするなどの工夫が必要です。特に、クローゼットタイプやウォークインタイプの場合は空気が滞留しがちになるため、定期的に換気することをおすすめします。換気扇の設置も有効。つけておくだけで湿気を除去できるため手間もかかりません。
また、窓に発生した結露がカビの原因になってしまうことがあるため、窓を設置する場合は複層ガラスなどを採用しましょう。ちなみに、家を建てた後に換気扇や窓を設置すると、新たな工事が発生して費用がかさみます。それを防ぐために、間取りを決める段階で設置を決めておくといいでしょう。
解決策 04B:床・壁・窓・玄関ドアの断熱を検討する
床や壁に断熱材を入れると、気温差が少なくなって結露ができにくくなります。窓を作る場合は、ガラスを断熱性の高いものにする、二重窓にするといった対策をしましょう。さらに、玄関ドアも断熱性の高いものを選ぶこと。結露対策の面で考えると、玄関ドアは引き戸より開口部が少ない開き戸がいいでしょう。
広さ別の土間収納とは?0.5畳〜3畳の活用シーンを紹介
ここでは、広さごとに土間収納のアイデアと使い方を解説します。
※数値はおおよその目安です。
【0.5畳】靴や衣類を必要最低限収納
0.5畳のコンパクトな土間収納の場合、家族の靴の収納がメインになりますが、工夫次第で効率的な収納も可能です。例えば、幅180cm×奥行き45cm程度のオープンタイプやクローゼットタイプを取り入れれば、同じ半畳のスペースでも圧迫感が少なく、使い勝手が良くなります。縦型シューズボックスや 壁面収納もおすすめです。
【1畳】衣類や子どもの遊具、ベビーカーを収納
1畳のスペースがあれば、より多様なデザインが可能に。収納するものに合わせて幅180cm×奥行き90cm程度のオープンタイプやクローゼットタイプ、ウォークインタイプなどがおすすめです。広さにゆとりがあるので、靴以外にもベビーカーや子どもの遊具、ゴルフバッグなども問題なく収納可能。可動棚をつけて棚の位置をカスタマイズすると、より使い勝手がよくなります。
【2畳】ある程度の量が収納できる上、ウォークスルータイプの設計も可能
広さが2畳(幅180cm×奥行き180cm)ある場合、両側を棚にしたウォークスルータイプにすることもできます。片側を靴用の棚にし、もう一方の側にハンガーパイプを設ければ、家族全員の靴やコートなどの大きな衣類もすっきり納まります。さらに、アウトドア用品などもゆとりを持って収納可能です。
【3畳以上】大人用の自転車も収納可能な上、DIYや趣味部屋にすることが可能
3畳(270cm×180cm)以上あれば、大人用の自転車を収納できるようになります。DIYや趣味の部屋としても使う場合には、収納棚の配置を工夫して作業スペースを確保しましょう。
土間収納の費用相場
土間収納の費用は、どの程度の広さにするか、どのような床材を使うのかなど、工事内容によって大きく変わってきます。
床材ごとの施工費用目安
安価な「モルタル仕上げ」
シンプルでスタイリッシュな印象のデザイン性に加え、耐久性やコスト面でも優れていて人気です。1㎡あたり約4,000円~9,000円であることが多いです。
耐久性の良い「コンクリート仕上げ」
コンクリートは強度が高く、ラフで力強い印象を与えます。1㎡あたり約8,000円~12,000円が目安です。
デザイン性が高い「タイル仕上げ」
タイルは耐久性が高く、デザインの選択肢が豊富。メンテナンスがしやすい点も魅力です。1㎡あたり約5,000円~15,000円が目安となります。
高級感がある「天然石仕上げ」
タイルよりも強度が高く、高級感のあるゴージャスな印象に仕上がります。1㎡あたり約20,000円~である場合が多いです。
広さ別の費用シミュレーション
続いて、大まかな広さ別の費用の目安をまとめます。
【1畳】
ベビーカーが収まる最小サイズ:10万円~20万円程度。
【2畳】
アウトドア用品や家族分の靴も収納:15万円~30万円程度。
【3畳以上】
自転車やDIYスペースとして活用:25万円~50万円程度。
土間収納を快適にする工夫
近年人気の土間収納ですが、より使い勝手をよくするための工夫を紹介します。
可動棚でライフステージに合わせる
可動棚は高さを自由に調整できるため、スペースを無駄なく活用できます。ベビーカーや季節用品、趣味の道具など、収納するものが変化しても柔軟に対応可能です。
換気扇や窓で湿気・結露対策を
レインコートや濡れた傘などを収納すると湿気がこもりやすいため、換気扇や窓を設けて通気性を確保しましょう。定期的な換気を行うことで結露やカビの発生も防げます。
FAQ

土間収納って暗くなりそう…。対策はないの?
土間収納をより使いやすくするために、照明は必要不可欠です。なぜなら、スペース奥の収納物も見やすくなり、夜でも出し入れや整理がしやすくなるから。土間近くの部屋から明かりを確保することもできますが、掃除をする、中で作業をするというときに便利なはず。明るくするために窓を付けるという方法もありますが、日光に当たって収納している物が色あせてしまうケースもあるため注意が必要です。
ちなみに、土間収納のメインの照明はダウンライトが採用されることが増えています。足元や棚にランプを設置すると、収納物が見やすくなるだけでなく、おしゃれ度もアップするのでおすすめです。
土間収納にコンセントを設置すると快適になるって本当?
収納するものによって異なりますが、土間収納内にコンセントを設置しておけば、コードレス掃除機や電動アシスト自転車などの充電が可能。靴の乾燥機や工具などにも使えて重宝します。その際に気をつけたいのがコンセントの位置。床がぬれていても危険がないよう、ある程度高い位置に取りつけるといいでしょう。プラグを抜き差しする際も、腰への負担が少なくおすすめです。
土間収納は寒い?結露しやすい?
土間の床材には、熱伝導率が高いコンクリートやモルタル、タイルなどを使用する場合が多いです。そのため、冬は底冷えして寒さを感じることがあります。しかし、断熱材や床暖房などで対策をすれば快適に過ごすことが可能です。
また、土間収納は構造上湿気がたまりやすく、冬場は結露の原因になることもあります。そのため、換気扇や窓を配置するなど、通気性をよくする工夫が必要です。
土間収納が不要な人とは?
持ち物が少ない人や自転車・ベビーカーなどを収納しない人、収納にスペースを割くよりも玄関やリビングを広くしたいという人は、土間収納が不要である場合が多いです。
土間収納で費用を抑える工夫はある?
費用を抑えるためには、収納するものを厳選してスペースを1~2畳程度にする、扉を設けないオープン収納にする、シンプルなデザインにする、モルタルなどの安価な床材を選ぶといった方法があります。これらの方法を組み合わせて、予算やライフスタイルに合った土間収納の計画を立てるのがおすすめです。
まとめ
土間収納は収納力の高さと使い勝手のよさが魅力。家族構成やライフスタイルに合わせて、広さやタイプを決めるようにしましょう。また、照明や換気扇、コンセントなどを設置することで、より快適に使えるようになります。今回ご紹介した注意点も参考にして、理想の土間収納を実現してください。それぞれのケースに応じたアドバイスもさせていただきます。ぜひ気軽にご相談ください。

