注文住宅づくりの失敗で多いのが収納に関する後悔。暮らし始めてみてから「収納が足りない」とあわてたり、逆に使わない収納に場所を取りすぎて居室が狭くなった、工事費がかさんだなど、様々なケースがあります。そこで今回は、暮らしやすさに直結する収納プランを様々な角度から見つめ、役立つ収納術を厳選した19のテクニックをご紹介します。
●努力しなくても片付く家をつくる
片付けが大変で、掃除をしてもいつの間にか散らかってしまう家は、もしかしたら収納に問題があるのかもしれません。家の中がいつもきれいに整理整頓された家は、暮らしの効率がアップするだけでなく、快適に過ごせ、集中力もアップします。
理想は「努力しなくても、いつも片付いている家」。家族のライフスタイルや、家事動線を考えた収納を用意することで、「片付く家」は実現できます。注文住宅は、収納も自分たちの暮らしに合わせて計画できます。収納プランをしっかり検討して「努力しなくても片付く家」の理想を実現してください。
●注文住宅の収納はどのくらい必要?基本的な収納計画の立て方
まず収納計画を立てる上で知っておきたい基本的な考え方について整理しておきましょう。
1. 必要な場所に適切な備えを
収納の基本は、必要な場所に適切な収納スペースを設けることです。そのためには、まず家族それぞれの持ち物の量と、どこに収納をつくると便利かを把握することがポイントです。
本が多くリビングでも読書を楽しみたいなら、リビングに大きめの造作本棚を用意してください。キャンプ用品などアウトドアグッズが多いなら、玄関にシューズクロークなどを設けて収納できると便利です。このように家族の持ち物、使用する場所を考慮しながら収納計画を立てることが大切です。
2. 変化に対応できる自由度とゆとりを
収納プランには、将来的な家族構成や暮らしの変化に対応できるような柔軟性や余裕が大切です。先々、子どもが増える可能性がある場合は、家族の人数が増えた場合の対応を見込んで余裕を持たせたいもの。ライフスタイルや趣味などの変化には、収納するアイテムが変わっても対応できる柔軟性を考慮に入れておくことが大切です。
たとえば、棚が可動式の仕切りになっていれば、収納するアイテムが変わってもスムーズに収納することが可能です。
3. 利用頻度を考慮する
収納するアイテムの利用頻度を考えておくことも大切です。日常的に使う物はなるべく手の届きやすい場所に収納するようにします。たとえば、キッチンの食器棚では、よく使う食器や調理器具を目の高さに配置することで、作業効率が上がります。
逆に季節の衣類や日常的に使わないスキーやキャンプ用品などは、高い場所や奥行きのある場所にしまっておくと、収納空間がスッキリと保てます。
4. 収納の割合はどのくらい必要?
一般的に注文住宅などの戸建の収納スペースは全体の15%前後が適当といわれています。
30坪(100㎡)の家を建てる場合だと、4.5坪(14.8㎡)が必要な計算になり、畳に換算すると約8畳分のスペースとなります。
家族の人数で収納スペースを検討する場合は、大人1人につき1.5上畳、子供1人につき0.5畳が最低限の目安です。ただ将来的に物が増えることを考慮すると、4人家族は6畳分以上の収納スペースが必要になります。ただしライフスタイルや家族構成で必要な収納スペースも変わってきますのであくまで目安として考えてください。
(家族の人数別収納空間の広さ)
家族の人数(夫婦+お子さまの合計人数) | 必要な広さ(お子さまの成長度合いで変化) |
---|---|
2人 | 3畳 |
3人 | 3.5~4.5畳 |
4人 | 4~6畳 |
5人 | 5.5~7.5畳 |
5. 多すぎる収納に注意
収納空間を多くするとデメリットもあります。収納が多すぎると建築費用が上がる上に、居住空間が狭くなります。対策としては壁面やデッドスペースを有効活用しながら収納を計画します。使い勝手を考えながら、階段下などのデッドスペースはできるだけ収納として活用することで居住空間の広さを保ちながら収納空間を増やすことができます。
●失敗しない!注文住宅の収納プランニングのポイント
ちょっとしたコツが分かっていれば、収納上手になるための空間づくりはスムーズになります。ここではそのポイントをご紹介します。
6. 動線を考慮した収納配置
収納量が多くても使いにくい場所にあれば、収納の満足度は下がります。収納は、頻繁に使うものは手の届く場所にしまうことがポイント。生活動線に合わせた配置も大切です。各部屋の用途や家族の動線に合わせて、収納スペースを配置すると、家事動線がスムーズになり快適な暮らしを実現できます。
7. 収納面積より収納効率
収納空間を広くすることだけが片付けやすい家の条件ではありません。物を上手に収納するには、実は収納面積よりも収納効率が重要なのです。
収納効率とは
・収納の入り口の扉の高さや幅など物の取り出し入れのしやすさ
・棚の数や高さ、奥行き、可動式になどの使い勝手
・クローゼットは、ハンガーパイプをどこにどの高さでつくるか
などが代表的な例。
逆に収納面積だけに注目していると「収納スペースが広すぎてうまく使いこなせない」「物を出す手間が大変で結局収納しない」といったこともあります。物が出し入れしやすい高さや、体の動かしやすさに問題ないかなど、収納効率に重点を置いてプランを検討してください。
8. 造作収納を上手に活用する
造作収納のメリットは、まずスペースを有効活用できることです。たとえば、壁面に造作収納を設けることで、床面積を広く使うことができます。また、階段下や屋根裏などの空間を利用して収納スペースを作ることも可能です。またカスタマイズ性が高いことも、造作収納のメリットの一つです。家族のライフスタイルや収納したい物に合わせて設計できるため、物が決まった場所に収まりやすく、整理整頓がしやすくなります。
ただし既製の収納家具に比べて高額になること、製作に時間がかかる、一度設置してしまうと、位置の変更や取り外しには制約があるなどのデメリットもありますのでしっかりと考慮した上でオーダーしましょう。
9. 収納物のサイズに合わせた設計
収納物を効率的に管理するためには、収納物の種類と数をリストアップして、それぞれのサイズを把握しましょう。せっかく収納を確保しても、大きめなサイズの物を収納できなくては役に立ちません。収納する物のサイズに合わせて、幅や奥行き、高さを調整できる収納家具を検討してください。物が入りきらなかったり、出し入れしにくくなったりするトラブルは、片付かない家の第一歩と心得ましょう。
10. 1階の収納スペースを充実させる
2階にしか大きな収納がないと、物を出し入れする度に階段を上り下りする必要があり、非常に手間です。1階にも収納スペースを設け、1階のものは1階に、2階のものは2階に収納できる収納プランが理想です。1階に収納スペースをつくる際は階段下の空間をうまく利用するのがオススメです。LDKなどの生活スペースを圧迫することなく、効率よく収納スペースをつくることができます。
11. 忙しいご家庭は、扉をつけない収納も
クローゼットを開けるというひと手間を省くことで片付けがラクになります。扉をつけない収納は意外と片付けのハードルを低くしてくれます。例えば、寝室の収納をウォークスルークローゼットにすれば、帰宅したその足で通り抜けながら着替えができます。忙しいご家庭では扉をつけない収納も活用してみてください。
12. 外の物置を活用する
外に物置を設置しておけば、アウトドアで使うものやガーデニング用品の収納や、普段使わない防災グッズを保管しておくことができます。また、屋外で使用した汚れものも、家の中に入れるのは抵抗がありますが、外物置だと気にならずに置くこともできます。
●注文住宅の場所ごとの注意点とオススメ収納スペース
住まいの場所によって求められる収納のポイントは変わります。ここでは場所ごとの注意点とオススメの収納をご紹介します。
13. 玄関の収納
玄関の収納は、家族全員の靴が収納できることを前提に、傘やお子さんの外遊び用アイテム、自転車やアウトドア関連のアイテムなどもしまっておけるように考えましょう。
<オススメ収納>
土間収納:玄関から土間続きになった収納は靴のまま出入りできて便利です。また、土間は土汚れや水にも強いので、泥汚れや水汚れを気にせずに収納できるのもポイントです。
シューズクローク:ハンガーパイプを設置すれば、簡易的なクローゼットにもなります。また最近人気なのが、2ヶ所から出入りできるタイプ。買い物帰りにキッチンに直行する動線も作れます。
14. 廊下の収納
狭いスペースの有効利用を考えると、やはり廊下の役割しかないペースはもったいないと言えます。だからこそ、廊下を収納にも活用し使いやすい動線をつくりながら、暮らしに余裕が出てくるような収納プランを心がけたいもの。つねに家族が行き来する廊下の収納は、生活動線の中にうまく組み込むとたいへん便利に使えます。
<オススメ収納>
ニッチ:壁の一部に凹みをつくり、その空間を壁に内蔵された固定棚として使うニッチ。コレクションを飾ったり小物の収納に便利で、単調な壁面のアクセントにもなります。また、低コストで、気軽に取り入れやすいのもメリットです。
ファミリーロッカー:家族一人ひとりの持ち物を収納するための一人分ずつ区切られた収納スペースのこと。玄関の近くに廊下にあると、仕事用のカバンやお子さまのランドセルも収納でき、リビングが散らかるのを防ぎます。
15. リビングの収納
最も多くの時間を過ごすリビングは、意外と収納が少ないスペース。ただし収納スペースを確保しようとすると、その分くつろげるスペースが圧迫されてしまうデメリットもあります。そんなリビングにオススメはデッドスペースを活用した収納。1ヶ所あたりの収納容量は小さくなりやすいですが、居住スペースを圧迫しません。
<オススメ収納>
リビング収納:リビングを整理された状態でキープするコツは、決まった収納場所を作ること。テレビボードの下を収納スペースとして使えば、家族みんなが場所を把握できて便利です。また壁面にディスプレイラックを設けるのもオススメ。本や雑誌以外に装飾品や雑貨を飾ることで、おしゃれな空間にできます。
階段下収納:階段下のデッドスペースも工夫次第で、便利な収納スペースに変身します。最近は、あえて扉の無い階段下収納にする例も増えています。収納されているものが一目で分かり、取り出しやすく・しまいやすい収納として活躍します。
小上がり床下収納:リビングにつづく小上がりのタタミコーナーは、子育て家族に人気ですが床下を収納スペースとして有効活用できるメリットも見逃せません。デッドスペースを活用できる効率の良い収納アイデアです。
16. キッチンの収納
最近のキッチンは食器や鍋に加え調理家電も増え、以前よりも収納場所の確保が難しくなっています。食器やグラス、ストック食材に加えホームベーカリーやフードプロセッサーなど、さまざまなキッチン家電を収納するスペースも必要です。
<オススメ収納>
パントリー:多く採用されているのは壁面にパントリーを設けたタイプ。奥行は30~45㎝で食器棚・食品棚を設置する必要が無くなり、家事動線の効率化も図れます。畳1枚以上の広さのある小部屋タイプは、冷凍ストッカーも設置可能。使用頻度の限られる調理器具も管理・収納出来るため、キッチンが散らかりにくくなるのも魅力です。
背面収納:キッチンに立ったときに、その背面に設置された収納を「背面収納」といいます。最近は、造作タイプの背面収納があらかじめ用意されているケースも増えています。背面収納は、キッチン本体では足りない収納を補え、カウンターを設けておくと作業スペースにもなります。キッチンの前後に収納が集約できて、調理や後片付けがスムーズで、作業性もアップします。
17. 洗面脱衣室の収納
洗面脱衣室の収納の必要最低条件は、タオルやバスアイテムをしまっておけることです。それに加えて家族の下着や部屋着が収納すると入浴後に部屋から持ってくる必要がありません。最近は洗面脱衣室に洗濯機や物干しを設置したランドリールームがトレンドです。「洗う・干す・しまう」が完結できるため、家事効率が格段に向上します。
<オススメ収納>
ランドリー収納:洗濯は衣類を洗うだけでなく⇒干す・乾かす⇒たたむ・アイロンがけをする⇒しまうといった多くの作業が必要になります。これを単純化して、洗濯動線を最短化するランドリールームは最近人気の間取りです。ですから収納スペースといっても作業カウンターや部屋干し用のハンガーパイプなどが含まれた空間になります。
ファミリークローゼット:ファミリークローゼットとは、家族の衣類や荷物などを一か所にまとめて収納できる大型のクローゼットのことです。最近は、一連の洗濯作業に合わせて水回動線に組み込むケースが増えています。必要な広さは、4人以上のご家族の場合、畳4枚分以上のスペースがあると利用しやすく、衣類に限らず、バスタオルやシーツといった大物の布製品も、まとめて管理・収納することができます。
18. 寝室・子供部屋など居室の収納
1日の疲れを癒す主寝室は極力すっきりさせておきたい場所。以前は衣類の収納場所を兼ねることも多かったですが、最近はクローゼットから独立した就寝空間としてまとめることが増えています。また子供部屋などの居室も、学習に集中できる環境を考え、収納をまとめる工夫が大切です。
<オススメ収納>
ウォークインクローゼット( WIC ):収納力が高く、人が出入りできるウォークインクローゼットは、寝室に付属して設置することで、朝の身支度など着替えがスムーズに行えます。広さは畳3枚分あると、夫婦2人分のオールシーズンのワードローブが収納できます。冠婚葬祭用の礼服からスポーツウェアまで、ハンガー収納することで、面倒な服の出し入れ・季節ごとの衣替えから解放されます。
19. ロフトと小屋裏収納
片流れ屋根、切妻屋根などの角度がついた屋根を採用すると、屋根裏スペースができるため、上手に活用すれば大容量の収納スペースを確保できます。
ロフト:「床から天井までの高さが1.4m未満」かつ「広さが直下フロアの1/2以下」のロフトは建築基準法で容積率算出から除外されます。このため、居住スペースを圧迫することなく別に大容量のスペースを設けられます。
小屋裏収納:小屋裏収納は天井裏を活用した収納スペースのことです。便利ですが、天井に隠れて下の階から見えず閉鎖的な空間になるため、除湿や換気をしっかりしないとカビができやすく注意が必要です。
●注文住宅の収納実例紹介
キッチン背面収納
使いやすい可動棚付きの背面収納。清潔感のある乳白のシースルー扉は中のモノも確認しやすい親切設計です。
ランドリー収納
浴室からストレート動線で配置されたランドリー収納。動きやすく部屋干しから収納までスムーズに完結する設計です。
●FAQ
Q. 注文住宅に収納スペースを設置する場合の費用の目安は?
A. 概算で10~100万円が目安になります。どのくらいの広さか。素材や棚の数などによって費用は変わります。あくまでも目安ですが、主な収納にかかる費用をご紹介します。
キッチンの床下収納:10万円
クローゼット収納:15万円
壁面収納:40万円~90万円
階段下収納:50万円~100万円
Q.キッチン収納で注意するポイントを教えてください。
A.比較的小さい収納物が多いため、奥行きより間口を広く取るのがコツ。特に出し入れのしやすさは重要です。家事の効率をアップするように工夫してください。パントリーは、奥行きは50センチほどにして棚の高さが自由に変えられるようにすれば、食器類から常備食、調理家電までキッチンアイテムが管理しやすくなります。
●まとめ
住まいの収納は暮らしやすさや快適性を高める大切なポイントです。注文住宅を数多く手がけ、収納計画や造作収納づくりの経験が豊富なイシンホームは、スキップフロアや半地下など収納スペースを増やす多彩なノウハウがあります。また太陽光の節電・売電利益により収納空間を増やしたり、造作家具をプラスした場合でも月々の支払いを抑える提案の用意もございます。注文住宅の収納プランでお悩みや疑問がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね。
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