
注文住宅にかかる費用は、「どれくらいが相場なのか分からない」と感じる人が少なくないようです。その理由と、予算オーバーしないための予算計画の立て方について紹介します。
目次
注文住宅の費用はなぜ分かりづらい?
注文住宅の費用を「分かりづらい」と感じる代表的な理由は、次のとおりです。
注文住宅は自由に設計できるからこそ、費用の振れ幅が大きい
注文住宅とは、好きな土地に自分好みの住宅を建てられる、いわば“オーダーメイド”の住宅です。選ぶハウスメーカーによっては、建築工法や設備などの基本的な仕様が決まっている場合もありますが、基本的には自由度の高い家づくりが行えます。選べる設備や仕様のグレードはピンキリ。したがって、費用の振れ幅が大きくなってしまうのです。
住宅展示場の価格はローコスト仕様であることも
注文住宅の建設にかかる費用は設備や仕様の選択によって大きく変わることから、プランが決まっていない段階で詳細な見積りは出せません。住宅展示場や広告で示されている価格は、グレードの低い設備で構成されたローコスト仕様であることが多い一方、実際に展示されているモデルハウスは最新設備を導入しており、表示価格と大きく異なるケースがあります。
「総費用」の内訳が見えないまま契約してしまうケースも
ハウスメーカーと契約を行う際、内訳が分からないまま契約をしてしまうと、後で予想外の追加費用が発生してしまう可能性があります。あえて総費用をあやふやにしたままで契約を迫る悪徳業者もゼロではないため、内訳をはっきりさせることが大切です。
注文住宅の総費用の内訳とは

注文住宅の総費用には何が含まれているのか、内訳を紹介します。
建物そのものの建築工事にかかる「本体工事費」
注文住宅の建設にかかる費用のうち、建物本体の材料と工事にかかる費用を「本体工事費」といいます。具体的には、基礎工事や木工事、内装・外装工事、設備工事などのほか、設計料も含まれます。
建物以外の建築工事に必要な「付帯工事費」
建物以外の屋外工事に必要な費用を付帯工事費といいます。具体的には、地盤改良工事や外構・造園工事、給排水・電気・ガス工事のほか、古屋がある場合はその解体工事も含まれます。
建築工事以外の「諸費用」
諸費用とは、注文住宅の建設にかかる費用のうち、上記2つの工事費以外の費用のことを指します。その内容は、測量・地盤調査費用から地鎮祭・上棟式費用、住宅ローンの各種手数料、家具購入費用、引っ越し費用まで、多岐に渡ります。
「土地購入費」を含む場合と含まない場合の違い
土地を購入して家を建てる場合には、土地の購入代金に加えて、「諸費用」として仲介手数料や印紙税、不動産取得税などの各種税金も必要になります。また、古い土地で境界標(土地の境界を示す目印)を紛失してしまっている場合は「測量費用」、農地に家を建てる場合は「農地転用費用」なども発生するケースがあります。
注文住宅の費用相場はどれくらい?

予算計画を建てるためには、相場を知っておくことも大切です。ここでは注文住宅の費用相場について紹介します。
延床面積30坪の住宅の相場は?
住宅金融支援機構が2024年に公表した「2023年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅を購入した人の所要資金の全国平均は3,863万円でした。購入された注文住宅の住宅面積の全国平均は119.5㎡(36.1坪)なので、30坪あたりの相場に換算すると、約3,210万円となります。
データ引用元:「2023年度 フラット35利用者調査」
各内訳の費用相場を算出
一般的に、注文住宅の建設にかかる費用の目安は「本体工事費」が約7割、「付帯工事費」が約2割、「諸費用」は約1割と言われています。
この目安をもとに、3,210万円の住宅を建てる場合の内訳を算出すると、次のとおりです。
本体工事費:3210万×0.7=2247万 2,247万円
付帯工事費:3210万×0.2=642万 642万円
諸費用:3210万×0.1=321万 321万円
付帯工事や諸費用を含めた総費用シミュレーション
前述した通り、3,210万円の家を建てる場合、内訳の相場は付帯工事費が642万円、諸費用は321万円となります。つい「本体工事費」に注目してしまいがちですが、この2つを見落としていると大幅な予算オーバーに繋がりかねません。しっかりと総費用を把握してシミュレーションすることが大切です。
予算オーバーを防ぐための実践ポイント

予算オーバーを防ぐために、実践するべきポイントを4つ紹介します。
オプションの優先順位をつける
注文住宅の標準価格に含まれている設備のことを「標準装備」といい、それ以外の後付け・変更する設備を「オプション」と呼びます。このオプションは導入する度に追加料金が発生するため、増やせば増やすほど費用が膨れ上がることに…。好きなだけ付けると大幅な予算オーバーになりかねないので、必ず優先順位を付け、予算内に収まる範囲に絞るようにしましょう。
補助金や税制優遇制度を活用する
国や自治体の補助金制度や助成金制度を利用すれば、費用を抑えられる可能性があります。補助金を受け取るためには、対象や要件、スケジュールなどを確認することが大切。また、建設を依頼するハウスメーカーが登録事業者でなければ受けられない補助もあるので、ハウスメーカー選びも重要になります。
ローン選択でトータルコストを抑える
住宅ローンは同じ借入額でも金利が低いと、利息の支払い分だけ返済額を抑えられます。金利タイプや返済期間によって適用金利は異なるため、複数の金融機関を比較・検討するのがおすすめです。
また、保証料や手数料といった諸費用も金融機関ごとに違います。諸費用が安い代わりに金利が高いというケースもあるので、バランスをよく見ながらトータルコストを抑えましょう。
ハウスメーカーに価格交渉する
注文住宅は、値引き交渉がしにくい傾向があるものの、可能性はゼロではありません。まずは複数のハウスメーカーでなるべく詳細な見積りを取り、価格交渉に備えましょう。
値引き交渉するタイミングは、契約プランが出された後か、契約直前がベストです。ただし、強引な値引きを迫ると、工事の人員削減や建材の仕様変更などが行われる可能性もあるので、無理のない範囲で交渉するのがおすすめです。
追加費用が発生しやすい項目を事前にチェック
続いて、追加費用が発生しやすい項目を紹介します。契約時には、特にしっかりチェックしてください。
地盤改良や上下水道の引き込み工事費用
地盤は住まいの安全性を左右する重要な部分なので、調査が欠かせません。一般的な戸建て住宅の簡易調査として使われるSWS試験の相場は5万円ほど。地面に穴を掘って調査するボーリング調査なら25~35万円ほどかかります。調査の結果、地盤が軟弱だった場合は改良工事が行われます。費用は工法や工事規模によって20万円〜130万円と開きがあるので、なるべく早めに調査を行うのがおすすめです。土地を購入する場合は、契約前に地盤調査が行われているか、改良費用が含まれているかも確認しておきましょう。
一方、上下水道の引き込み工事は、道路下に埋設されている本管から、家を建てる敷地に上水道の給水管を引き込む工事のことを指します。一般的な工事費用の相場は30〜50万円ほど。本管から家を建てる場所までの距離が長いほど費用が高くなる傾向があります。
変更契約・仕様変更による追加費用
注文住宅のプランは、契約(工事請負契約)を結ぶ前であればいつでも変更可能です。しかし、契約後に変更したい場合は、新たに「変更契約」を締結する必要があります。また、変更契約を結んだとしても変更できる範囲には限りがあり、建築資材の手配や工事が進んでいたら、希望が通らないケースも。もし希望が通ったとしても、そのせいで工期が延びてしまうと、追加費用の支払いを求められる可能性も考えられます。
仮住まいや引越し、家具・家電費用
完成した住宅に移る際の引越し費用や家具・家電の購入費用、住宅を建て替える場合の仮住まいにかかる費用などは、見逃しがちな諸経費です。これはハウスメーカーの見積りには含まれていないため、自費での準備が必要になります。
注文住宅の資金計画を立てる方法

資金計画を建てる際の目安や、注意するべきポイントについて紹介します。
自己資金(頭金)と住宅ローンの割合
一般的に、自己資金(頭金)の目安は、住宅購入価格の20%程度だといわれています。つまり、頭金と住宅ローンの割合は2:8が目安。ただし、近年は長く続いた低金利の影響により、「頭金なし」で借入額を増やす人が増加傾向にあるようです。
「返済比率」の目安と無理のない返済額の考え方
返済比率とは、年収に対して年間のローン返済額がどのくらいの割合を占めるかを示す指標のこと。一般的に、手取りではなく“税込年収”で計算されるのが住宅ローン審査の基準になります。返済比率25~35%程度が一つの目安とされています。
計算方法は、「ローンの年間返済額÷手取り年収×100」です。例えば、手取り年収400万円の人が年間120万円(毎月10万円)の返済を行っている場合、次のように算出できます。
120÷400×100=30.0(%)
一般的には、返済比率が低い方がローンの審査に通りやすくなります。なお、返済額には住宅だけでなく、自動車ローンをはじめとした他の借入れも全て含みます。
教育費や老後資金とのバランスも考慮
ローン完済までの数十年間には、大きな出費が発生する可能性が多々あります。そのため、家族のライフプランを考慮して、ある程度の手元資金を用意しておくことが大切。例えば、預貯金は頭金として全て使わず、子どもの教育費として備えておいた方が良いでしょう。また、老後の準備のための貯金も考慮し、余裕を持った返済額にしておくことも大切です。
予算に合わせてプランを調整するには?
住宅のプランが予算を超えてしまった場合に、費用を見直すプロセスを「減額調整」といいます。この調整にはさまざまなアプローチが考えられますが、特にコストダウン効果が大きいのは床面積を減らし、間取りを見直すことです。ただし、これらの方法はプランへの影響も大きいので、早い段階で調整しておかなければなりません。もし、プランへの影響を最小限に抑えてコストカットをしたい場合は、外構を見直すのが効果的です。
見積もり比較で失敗を防ぐ!
予算計画を立てるためには、見積もりの比較が欠かせません。見積りの比較で失敗しないための注意点を3つ紹介します。
複数社に見積もりを依頼する意味
見積りは複数社に依頼するのが鉄則です。なぜなら、1社だけでは適正価格が判断できないから。2社でもどちらが適正なのか分かりにくいので、3社に依頼するのがおすすめです。余裕がある人は4社以上に依頼するとより詳細なデータが得られますが、担当者とのやり取りが負担になる可能性を考慮しましょう。
提案力・アフターサービスも比較ポイント
住宅におけるどんな設備も、いずれメンテナンスや交換が必要な時がやってきます。その頻度が多かったり、費用が高額だったりすると、住宅ローンの返済の上にその支払いがのしかかってきます。そうならないためには、無料点検の有無や、メンテナンス代といったアフターサービスの内容も確認したうえで、最適な設備や仕様を選ぶことが大切です。
「安い」=「コスパが良い」ではない!?
見積りが安いからといって、コスパが良いとは限りません。設備のグレードが異なる場合は、単純にグレードが低いから安いだけという可能性もあるのです。そのため、なるべく同じ内容で見積りを取ることが大切です。
注文住宅づくりで後悔しないための注意点
最後に、注文住宅づくりで後悔しないための注意点を紹介します。
デザインや機能性とのバランスが重要
床材や壁紙、照明、最新の設備など、全てをグレードアップしていると、予算がいくらあっても足りません。大切なのは、デザインや機能性と、価格とのバランスです。値段と性能が噛み合っているかどうかは、その都度考えるようにしましょう
ライフスタイルに合った「ちょうどいい」家を選ぶ
せっかく高いお金をかけて最新設備を導入しても、暮らしの中で使わなければ意味がありません。設備や使用を選ぶ際には、製品情報や口コミばかりを見るのではなく、必ず「自分たちにとって必要か」「実際に使用するのか」も考えるようにしてください。
ランニングコスト(光熱費・メンテナンス費)にも注目
先述したメンテナンス費用だけでなく、光熱費も住宅の仕様に関わるランニングコストです。オール電化の住宅にして太陽光発電で賄えば、光熱費のランニングコストはグッと抑えられるでしょう。ただし、これも設置とメンテナンスにかかる費用を考慮して選択することが大切です。
納得できる家づくりの第一歩は「費用の見える化」から
注文住宅にはさまざまな費用がかかるので、全てを覚えておくのは大変です。なるべく見落とさないように、まずは費用の内訳を一覧化しましょう。そして、見積りやプランで分からないことは、担当者に積極的に質問してください。
まとめ
今回紹介した内訳や相場を参考にして、予算計画を立ててみてくださいね。もし不明点や不安な点が出てきたら、ぜひお気軽にイシンホームにご相談ください。